24話 中身が分からずとも、使えるのは
アールインパクト・ヴィラ・コンテ。
この言葉を説明する前に。
言語と言うのは、不思議なもので。
自分の意思を、極めて近い意味で表現するために、発語する。
それにより、相手に自分の意思・気持ちを伝えることが出来るコミュニケーションだ。
言語的コミュニケーションとも言うが。
しかしながら、言葉ニアイコール意思であるため、100%の意思を伝えられない。
また、相手には相手の主観認識が存在するため、どうしても自分の意思というのを伝えきれることは出来ない。
そして、近年ではあるが、言語表現が先に出て、自分の意思表現がうまく交わせなくなる。
語彙の不足というよりは、言葉の拡大化・肥大化に人は追いついていけなかったのだ。
このようないきさつがあり、コミュニケーションの阻害が生じ、コミュニケーション障害、『コミュ障』といわれる人間が後を立たなくなる。
また、表現については文字化することで理解しやすくなるため、発語ではなく、文章化することでコミュニケーションする……、というよりは文字化でしかコミュニケーションをとれない。
SNSなら、という人が多いのもこの障害にあてはまるのではないか。
--話が長い。
難しい話はさておき。
つまりこの言葉は。
「なぜ、お主が」
そりゃ、神さえも驚くさ。
あんたが阻害していた『ユナイト』の空間能力を全て取り戻し。
さらに、ここ一帯の空間支配をオレに変更した。
そう。ヴィラ・コンテとは、こういう意味だ。
オレのもの--つまりは空間能力のことだが、それを返せ、利子付けて。
笑ってはいけない。そもそも誰のものでもないが。
言ってるオレは大真面目だ。
その意思を100%の漏れなく、神だけでなくこの一帯の空間に伝えた。
少なくとも、日本語やヤマト語ではなく、ましてや英語などの異文化の言語ではない。
意思を100%、阻害なく完璧に全てに伝達する言語。
……だと思うが、何せ感覚で言っているから正しいかどうか。
少なくとも、これがオレのスキルだと思う。
よし。
『ヒロユキ語』として……、駄目だ。中二病過ぎて、オレの心が否定する。
「いや、それよりもこれはっ!」
「正解だ。あんたの空間さえも、掌握させてもらった」
支配? 失礼な。
ちょいとお借りしますよ、って感じだ。
この神様の場合は、「神様だから偉いのでここ一帯、自分のだからね」、といういわゆる空間支配。
オレの場合は、「すんませーん! マジでお借りします。助かります! すぐにお返ししますんで」。
オレらしく言うならば、その空間を間借りする、平事務職。
そう。礼儀が違うのだよ、礼儀が!
そして、不躾には不躾にやっちゃいましょう。
立ったまま動けない神に、ゆっくり近づく。歩くスピードは一律に。
「え、ちょ」
おしゃべりは可能にした。
会話が生み出すのは、すれ違う理解。
とは思いたくないのだが。現状、こんな風ですよ。
「わ、わしをどうする……はっ! まさか手篭めに」
「うわあ。ありえない選択肢の提示だな……。忘れたか、神様? 勝負の方法」
拳の届くところまで近づいて、そのセリフか。
生憎ながら、生死がかかってるときに、性欲はないな。
何度も言うが、オレは美人には3秒で飽きる。
さらに、この駄目神はぶん殴る対象としてしか見れない。
「きっつい一発いくぞ。今の言葉の反省もしろよ!」
ぶん殴る体制、アールインパクト。
全力でセット完了。
ダスクプラウザー、念のために持ってたけど、格納空間へ。
「アールインパクト……」
「待て待て待てっ! 今の状態でそれ喰らったらわし」
間違いなく、再起不能になりますね。
何せ今まで、空間を柔軟化とかで防御してただろ。
空間能力で全部調べ上げたんだよ、AIから文字情報来たし!
今度からの戦闘方法に大いに役立つらしいのでいいけどさ。
それよりも、AI。
休んでていいのに。
まあ、助かるのだが。
「いくぜ、シュッティっ・ノーヴァっ!」
収束し、暴発しろ!
「……っ!!!!」
拳を当てた途端、桜色の服だけでなく、神の体そのものがブレる。
そして、色や輪郭が希薄になっていく。
って、あれ?
本来なら、宇宙の発生に似た技になるので、空間が爆発拡大して、その後すぐに戻る。
いわゆるブラックホール化する。ほっとくと大惨事。
オレがやばい。
今回は、なるちょっと前でストップ! のはずだが。
そんな感じにはならない。
まさか、なんか色々間違えた、か?
『恐ろしい技ですね』
実にヒーローらしからぬ技と思うが。
いや、ヒーローらしいのか?
よく分からないが、普段使いは出来ない大技だな。
「……わ、わしが、消えて、ゆく……。いやじゃ……」
「おっと。神様、勝負はオレの勝ち?」
「勝ちじゃ……。勝ちでよいから……。わしを助けて」
動けないまま、威力の逃がしもせずに喰らったら、人間なら軽く死ぬっていう威力でやったんだが。
何だか言葉だけ聞いてると、神も消えるみたいだな……。
って、消える!?
「いや待てって! あんた神だろ? 神って死ぬのか!?」
「あんな出鱈目……、喰らったら、誰でも死ぬわ……」
出鱈目、か。確かに、オレも喰らったら生きられる自信は、ない。
自分の技だが、あれは制御しづらい。
戦艦は自身の主砲では撃沈されないと言うが、……シュッティ・ノ-ヴァは特殊砲になるのか?
「何でもする……、助けて……」
今にも消えそうな神。事態は深刻だな。嘘は言ってないと思うが。
さてここで問題です。
ここで、助けたらどうなるでしょう?
・嘘ぴょーん、と逃げられる。
・よくもやりおって、とカウンター。
・やっぱ引き分け、としかも捨て台詞まで吐かれる。
今日のオレはひねくれているな。
言葉通りにこの神が聞いてくれるとは、思えない。
なぜって? ヒロシとアヤを傷つけようとした奴に、慈悲は不要だろう。
では、逆。
ここで、助けなかったらどうなるでしょう?
・呪い殺してやるわー、と悪神化。
・消滅する、が、オレ帰宅困難。
・わしが消えても第二第三の神がお前を、でエンドレスバトルの始まり。
うわ、最悪のシナリオ勢ぞろい。バッドエンドじゃないか。
……後のことを思えば、仕方ない。
「もう……。嘘ついたらオレが一生どころか全生祟ってやる」
確か神様って、神気により構成されてるって聞いたことがあるようなないような。
なら、空間能力で出来るはずだ。試してみる、か。
まず、神近辺の空間を固定。
さらに、神に対して空間からの構成因子を分析。
分析行動をAIに委託。
固定された空間に対し、時間固定は難しいが、部分部分に施行。
AIから出てきた分析結果確認。
近辺空間から、同一因子を全回収。
時間固定解除。
神近辺の空間に、因子放出。
高高度の空間固定を多重構造化。
神近辺空間とそれ以外の空間の完全断絶。
因子定着度確認。どうだ?
あ、確かどこぞの漫画かアニメに、神の空気は基本無害だが、濃すぎると有害ってあったな……。
やばい、か?
そもそも人の体じゃないから、どう処置すればいいか分からない。
適当だが、どうだ--!?
『定着は問題なし。後は観測要因ですね』
ま、まさか! 知っているのか、らい--!
『外部データベースへの接続が復活しました。マスターが、「この神が無事にここにいる」という認識が種観測となり、この場所に顕現できます』
返事が早い。
せっかく、言おうと思ったネタが。
まあいいか。神がここに無事にいますよーってことで。
「アッタ・グ・リー」
片手を握り、天に挙げてから、胸の中央に押さえるようにする。
頭を少しだけ下げる。
なんとなくやってみたが、ヤマトの神ってことは日本風にすればよかったのではないだろうか。
二礼二拍一礼みたいに。
いや、それだと参拝か。
「おお……、おおっ! むおおおおおおっ! わし、復活して参上!」
輪郭も色も復活した神、吼える。
しかし、変なポーズ決めてきたな。荒ぶる鷲の……って何で?
「さあ、願い事を言え! どんな願い事も」
「やめい!」
とりあえず、脳天への弱チョップ!
ご意見ご感想などお待ちしています。
大体2,000字を少し超えるくらいで作成していますが、今日のも長かった。
読みやすさ重視で、話を文字だらけにしないことを考えたらこれくらいがいいのかなと思ってます。
あと、読者の皆様の暇つぶしに、長時間もいただけないと思ってます。
対女神戦、事後がもう2話続きます。
それが終わったら、閑話。ようやく閑話。(ぇ




