15話 対話が深める、行き違い
戦闘員服。昔のやつじゃなくて近代的な、今時のやつ。
もとい、色々な機能の備わったパワードスーツならば、通信機能だってあるだろう。
実は『ユナイト』にもあるにはあるが、使ったことは一度もないのだが。
今回の話し合いはそれを使って、と見せかけて。
自分の声を空間圧縮し、その圧縮された空間を経由して相手に聞こえるようにする。
まさに偽テレフォン大作戦! って名前にすると昭和の香りがする。
普通に偽装電話としておこう。
『相手の領域内空間に接続完了。と同時に相手の領域に空間偽装のためジャミング構築完了』
AIさんの仕事は速い! そして何をやっているかよく分からないが、偽装したことは分かるぞ。
では、早速。と、声を機械音声に変更。
「って、よし。ノルマは達成したかな」
若い男の声。高校生くらいと想定できるが、前の奴らもそれくらいじゃなかったか?
転移者は全員高校生くらいなのか?
……オレはもう36だから間違えられても困る。
間違える要素は、ないと思うが。選んだやつに抗議したくなる。
オレはそこまで若作りじゃないぞ、と。
「あー。もしもし、こんにちわ。聞こえます?」
まずは無難にごあいさつ。
「うおっ! なんだ? 任務中の通信ってことはまた仕事かよ」
なんだかいらいらさせてしまったようだ。
「いやいや、オレは、えーと。……何と言えばいいのか」
「は? ……って通常の回線じゃない?」
ええ。そうですよ。回線でもなくただの機械音声です。
そして、自己紹介を何と言えばいいのか? さすがに『ユナイト』っても分からないだろうし。
仕方ない。相手に分かる説明と言えば、あれしかない。
「オレ、佐々山ヒロシのパワードスーツ着てるやつだけど」
「んん? あー、あ! あったあった! 確か、氷スキルの異世界人ってうわさの!」
スキル? 確か、ヒロシが異世界人は持ってるんじゃないか、って推測してた能力のことか?
「そう、それ!」
とりあえず、話の腰を折らずに進めてみる。
まず、異世界人はスキルという何かしらの能力がある、ということだな。
「で、あんたが何の用? 前のしょぼい任務みたいにおれを邪魔するって?」
声色が挑戦的というか、挑発になった。
乗るつもりはないぞ。邪魔は……、これから次第だが。
そもそも前の件はしょぼくはないぞ。あれをやられたら被害は大きい。
「いや、邪魔とかはまず置いといて。オレが聞きたいのは、何でこんなことするのかなってことさ」
「そりゃあ、仕事ってか、やらないとなー。後から楽できるし」
敵対の意思はないことを伝えると、それなりには警戒はあるが返しはしてくれる。
「ほうほう。ってことはやっとくといいことがあるわけだ」
仕事って言うことは、お金とかそれなりに流通する何かがあるように思える。
「一応ノルマは達成したから、いっか。で、そのノルマを達成すると、休日が多めに取れたり、自分の希望や要望が通りやすくなるから、やっといて越したことはないし」
ほうほう。
つまり、そちらの組織はノルマ制で。
なんだか、こちら側とは大きく違う。
「で、ノルマ以上をしてもいいんだけど、ノルマ以下だと」
「以下だと、どうなるんだ?」
「いや、特に何も? ただ、休日は普通だし、変に風当たりが強く、とはならないな。おれも結構ミスってるし」
ん? ってことは、今回は戦う必要なんてなくて。
そもそも前回も戦う必要はないってことか?
しかもミスってもお咎めなし、ってなんていい会社もとい組織なんだ。
アメとムチでいえば、アメは休日とかで。
ムチはミスした己で与える、って感じになるな。
どんだけできた組織だよ。
うらやましいな、いいな。
じゃないか。道路は公共物だから、壊したら犯罪です。
「話を戻すけど、じゃあ、もう壊す必要もない、と」
「ま、そうなんだけど。あんたは一応注意対象だからな。今のうちにやらせてもらう」
な ん で だ よ。
「いや、ちょっとそれは困る」
「ま、おれと通信してるってことは近くにいるんだろうから」
地面に手をつく戦闘員。揺れる地面。範囲が広くなっていくのが、このスタイルだとよく分かる。
『広範囲への地面への影響が確認できました。こちらへの被害はありませんが、周辺の被害は道路だけでなく施設にも及ぶ状態です』
冗談じゃない! なんでこんなことに!
……本当になんでだろうな。
「おれのスキルは『大地』! 人は地に足をつける必要がある! オレはその地面を思い通りに動かせる! つまり、おれに敵はない! それが分かったら--」
理屈は正しい。だが。
「狙いう……、いや、撃つ」
そもそも、そんな説明は必要なく。
能力はおおよその行動で推測済みだ。
下らん御託の間に、デュエルバスターを構え、ロックオン再確認。
AIサポートの上、トリガーを引いた。
撃った直後から、弾は空間跳躍、転移、圧縮による加速などを瞬時に繰り返し。
「さっさと、おおおおおおっ!」
戦闘員の叫び声の後。花火かそれとも昔のテレビの砂嵐か。
ザーッという音がオレの耳に聞こえた。
着弾して、爆発してないのがヒロシのいい仕事だな。
本当は爆発するかも、と不安だったが。
戦闘員がその場で生まれたての小鹿のようになっているのが見える。
『対話を終了します』
ありがとう。
さすがに、撃った後ああなるとは思ってなかったけど、すごかった。
あいつは捕まるのか、それとも仲間に助けられるのかは知らない。
ただ、不必要に暴力や威厳を振るってはいけない。
対象がオレなら、オレだけ狙えばいいのだ。
オレは逃げも隠れもするが、不必要な暴力などはしない。
小鹿状態の戦闘員を見下ろしながら、そう思う。そうあり続けたいとも思う。
おっと。とりあえず、ヒーローらしく決めておくか。
デュエルバスターを右手で持ち上げてから、前をなぎ払うように振り下ろす。
「仕事、完了ってところかな」
この一連の行動がヒロシに筒抜けだったことは、また次の話で。
対話が深める正しい理解、というのをどこかで聞いて、この題に。
現実なんて、行き違いばっかりですよ




