13話 唐突な、一手
今日もそれなりに繁盛する喫茶店。
開店当初の、あの忙しさはないが、閑古鳥になったことはなく。
ヒロシたちの、過剰なインターネットを介した宣伝がなくとも、客足が遠のくことはない。
何度か足を運ぶ人もいれば、一見さんもいる。
アヤの知り合いは定期的に来てくれる常連さんになってくれた。
売りはやはりコーヒー。
だが、料理も実はそれなりに好評なのはうれしい。
変わった味付けとか、くせになるおいしさとか言われるそうだが、依存性のある何かは使ってない。
日本にある調味料がない、というか似たのはあるが同じのがない、ということで、
AIの力で作れるものは作り、出来ないものは出来るだけ近づけて使用する。
また、ヤマトの調味料のほうが優れているものだって多いので、そちらがいい場合はそちらを使う。
塩に似た味の『ビスティ』とかが該当する。
塩分の取りすぎは厳禁なので、と採用している。
ちなみに実はこのビスティ、野菜なので健康志向。
とまあ、細かい部分ではあるがこういう試行錯誤はやれるだけやっておく。
大きく変化することも大事だと思うが、物事の本質をその変化で曲げてしまえば意味がない。
前々から続くもの、というのは伝統の中にある本質を大事にしていることが多いのだ。
「っと、ワサベーコンチャーハンあがり!」
わさび+厚切りベーコン+チャーハンという異色だが、昼時の成人男性に人気メニューの1つ。
もともとはまかないだったのだが、ヒロシがメニューに出したい、ということで採用された。
ただ、ベーコンのせいで塩分がある、男のメニューだな。
女性にはあまり注文されないのが難点か。
今日の昼はこの人でおしまいだな。
数十人来たが、実際の売り上げはどうかというと。
1日十人来ただけで、およその元手は取れてしまう。
空間理論の技術により、食材は痛まない。
空調設備なども、ヒロシやアヤの開発した熱量還元システムで、熱エネルギーを厨房の火力に転換し、発散された熱エネルギーは冷却されるため、その熱冷却への移動のエネルギーが空調設備に回され、と云々。
とにかくお金はほとんどかからない。
それにヒロシとアヤは、……発明品での特許でお金は潤沢にあるらしい。
あと、ヒロシは本も出しているらしい。印税もそれなりにあるとかなんとか。
凄いとは思うが、それを打ち砕くのはやはりヒロシ自身。
ある夜。ダスクプラウザーの完成前の研究所からの声。
「やばーい! 私はやはり天才過ぎた! 白衣のための白衣による白衣専用漂・白・剤っ!」
と、白衣に関しての異常すぎる熱。
そしてさらに。
「しかも白衣がうまくなびく扇風機と、白衣のためのマント! これで颯爽と白衣を着ても汚れない!」
白衣に何を求めているか分からない各種装備。
「さらにさらにまさか武器の作成途中でこんなものまで出来るとはな……、防弾白衣だ!」
……何を求めているんだ?
「これで我が白衣はあと何年でも戦えるぞ! ハハハハハハハ!」
その前に防音のはずの研究室からの大声って、どんだけだよ。
白衣に過剰なまでの何かを傾ける変態天才科学者。
いつかコーヒー用白衣とか作るんじゃないかと思っているが、いつかやるだろうな。
ちなみに、白衣についてはヒロシには絶対聞いてはいけないワードだ。
思い出したくもない。
そんなことを考えられるのも、少しはこの世界とこの仕事に慣れてきたからか。
悪いことじゃないな。よし、まかないでも作るとするか。
『異世界人のスキルによる事件が発生しました』
な、なんだって……! なんでこんな時間帯に!
食事抜きはちょっといやだ!
ヒロシとアヤはテレビで確認しているようだ。
「遠くはないな……、具体的なことが分からないが」
「あたしんちの近くじゃないのはまだありがたいですけど」
「しかし許せんな……あそこにはまだ行ったことがない店があるのに」
あれ? 怒るポイントが違う。
いつもなら、「ヒロユキ! 殲滅してこい!」とか言いそうなんだがな。
うーん。何かが違うのか?
AI、詳細情報をくれ。
『収集中……』
今、オレは自分が恥ずかしい。
ヒロシやアヤとあんまり変わらない思考だった。
『確認完了。本件におけるデータを文面化して、仮想ディスプレイに表示します』
被害内容:地面隆起による道路利用不可、および近隣の建物の小規模崩壊。
現在被害は進行中。
被害規模:現時点5キロ程度の距離にて直線的に被害。時速10キロ程度で北側に進行中。
原因:異世界人によるスキル行使。他に該当する原因は該当なし。
ただし、ガス水道電気などの停止による二次災害における被害も確認。
速報:異世界人のスキル行使と確定。
能力は土操作もしくは空気およびガス操作と推測。
……前の自転車の放火未遂が、めちゃくちゃかわいいものに思えてきたが。
「ひ、ヒロシ……。ちょっとこれは」
やりすぎだろ? 同じ日本人ならやらないだろ? 普通。
「ええい! 異世界人の仕業か! 紛らわしい! てっきり私の発明品『モグラさんですの』の暴走かと。……出動だ、ヒロユキ! いや、『ユナイト』!」
あほか! あんな大暴れどうやって止めろと! ってその発明品は破棄しろ!
天才レベルで危ないぞ! 速度が台風より遅いからそこだけが救いみたいなもんだろ!
「どう考えても危ないだろ! 危険だろ? どうにかできるわけが」
「できる! ヒロユキと『ユナイト』ならな!」
「……ちなみにどうやって?」
「そりゃあ一撃必滅で」
「戦いたくないって言ってるのに、何で殺さなきゃいけないんだよ!」
作戦とかにはその天才っぷりが発揮されないのが恐ろしいな。
だが、確かに無力化しないと交通とか大変だろうし。
うーん。具体的な戦略があれば。
理想は、こちらの姿を出さずに即座に相手を無力化すること。
その次は、姿を出すのはいいが、道路などへの被害を最小限に止めて相手を無力化すること。
ポイントは、
・相手を殺さないこと
・道路などの施設被害を最小限に抑えること
だから、難しいんだよな……。完成したダスクプラウザーの出番じゃないな。
そんな困ったときにはAIに頼む……、しかないか?
そんな悩みを打ち砕いたのは、アヤの一言。フッフッフー、と前置きをされたが。
「じゃあ、あれ使えばいいじゃない」
どやぁ! って感じで言われたけど。
あれ、って何? そんな手あったっけか?
次回は、戦闘回ですね。
と言っても戦闘にならないように気をつけているのが、この主人公ですから(ぇ




