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異世界で、変身ヒーローやりました。  作者: ヤガミタケト
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12話 夢をあきらめた、その残滓に

「そんな失敗作で大丈夫か?」

ヒロシの不安……の全くない言葉に、オレは。

「大丈夫だ問題ない」

お決まりのセリフで返すには返すが。

いや、もう、なんだか日本のゲームの元ネタ知って、あえて振っているとしか思えない言葉。


ヒロシ、お前は日本をどれだけ現在進行形で理解しているんだ?


「そもそも、科学者の失敗っていうのは、案外利用者にとっては結構成功しているときもあるしな」

付箋の発明とか。

あれは本来、付け剥がしできるような接着剤を作るつもりはなかった。

簡単に言うと、超強力な接着剤を作る過程で、失敗したものなのだ。


失敗は予測しているものが出来ないと、結構思い込んでしまうが、実際はそうじゃない。

視点を変えれば、大発明、大成功になるのだ。

という余談を頭の隅に考えながら、マジで以下略ソードの名前を考える。


「剣だけじゃなくて、銃もあるぞ」

「カノン砲とか準備してあるけど、どう?」

当然、といった雰囲気を持つヒロシに、新商品の発表にわくわくしているような感じのアヤ。

剣であれだ。銃は、推して知るべし。


「……なんか暴発しそうだな」

「それもロマンだな。ロマン砲だな」

「却下! 使う方の身にもなれ!」


そもそも自爆してやられるヒーローがいてたまるか、という話になる。


というわけで、銃は却下。もう少し使う方の身にもなれ、天才で変態たちよ。

ただ、こんな話をしている間にも、創作意欲が湧き出るぞ! とかいう二人を見ると、素直に賞賛する。

冗談みたいな武器を作っていても、実際は全てに真剣だ。

しかも、それを鬼気迫りながらも楽しむ余裕もある、そんな感じもするんだよな。

だから、こんな剣も作るわけで。


それに比べると、オレはどうなんだろうな。

この場所は、なんだかんだ言ってヒロシが作ってくれた場所で。

アヤにしても、本当なら嫌われる対象である異世界人のオレとも仲良くしてくれる。

お客さんたちとは、変身スーツのままで仕事してるから、あんまり面識はないけど、感謝とか、うまいとか言ってくれる。

常連さんとか、アヤの知り合いとかだと、頑張れよーとか、こういうの食べたいけどいけるか? なんてフレンドリーに厨房の壁ごしに声をかけてくれる。


その、なんだろうな。暖かいんだよな。


日本にいたときは、そんなのなかったな。

事務職とはいえ、楽なんてなかった。

いろんなところから仕事を押し付けられて。

オレのことなんて知ったことか、と言わんばかりにあれやこれやと仕事を置く。

できないと遅いと言われ。

残業すると、仕事の出来ないやつと言われ。


とにもかくにもミスすると、オレのせいだ。

オレのミスじゃなくても、なんで気づかないんだ、と言われるのはオレ。


家に帰っても一人だ。一人暮らし。

家族っていうのもいないし。いや、いるにはいるけど。正月しか帰ってないんだよな。

そもそもあんまり帰りたくない。

その両親も結構口うるさい。世間体が何だとか。結婚が何だとか。昇進とか。

そもそもうるさかったから、社会人になったとき、家を飛び出したんだ。


で、勤めだしたらブラックだけど。

仕事を転々としているのもよくないし、最初はこんなもんかな、ってやってきたんだけど。

どうやらそうじゃないみたいで、いつの間にやら36歳。


振り返れば、こんな感じだ。

そんな現代社会だから、働く、って事に関してはいやに思われるんだろうな、日本は。


そう思うと、ここに来てよかったと思える。

戦うことを強いられるのは余計だが。


前みたいに、自転車を元通りにして、何事もない平和を支える。誰かを助けられる。

そういうのは、やりがいがあると思っている。

誰かを助けることができるのは、うれしい。

夢、だったからな。日本では、あきらめたけど。


でも、戦うのは本当にいやなんだよな。

オレのせいで誰かが死ぬとか、想像なんてしたくもない。

やらないでいいなら、やらないままのほうがいい。


「……おい、聞いてるか?」

「ん? ああ、聞いてはいるが、理論系はよく分からないから飛ばしてた」


表面活性化理論とか、マグネの法則とか飛び交ったが、正直分からない。


ともかくそんな理論を元に色々作り出すのは、ヒロシとアヤに任せればいい。

困ってたら、手伝えばいい。そもそもそんな機会はあるのかどうか分からないが。


オレがやることは、ヒーローとして平和を支えていくことだ。

敵と戦うのがヒーローじゃない。


平和を支え、守るのがヒーローの役目だろ?


と、武器の名前を決めた。


日本でのオレが、ヤマトを守るために、同じ日本から来た人間と戦う。

力を持つ、いや、持つことで無遠慮になってしまった人間と戦う。


語呂は悪いが、ごまかすために横文字使っておこう。

多少は格好はつくだろう。


『屑の意地』っていう名前だから。


「じゃ、この剣、採用するけどちょっと注文つける」

「……別に注文はかまわないが、いや、面白い注文にしろよ」


じゃないと細工するほうも面白くないからな、とヒロシは不敵の笑み……、どう考えても悪役の科学者だな。

無理難題をあえて言ってやろうか。


「で、武器の名前は?」

アヤが聞くことは聞くが、あんまり興味はなさそうだ。

片手でざんてつけんとは違う日本刀を振り回している。危ない。


ん? 振った残像にうっすらと……『きくいちもんじ』。


何がしたいんだこの武器は? その技術はアイドルの応援とかに使え。


「日本語じゃなくて英語も使って造語にした。意味はオレの意地、だな。『ダスクプラウザー』」

『マスターの行動および言動に、日本のデータにおいて類義語を確認。臥薪嘗胆』


いや、そこまでは考えてなかったが。そうなるのか?

何かに復讐というよりは、やればできるんだ、っていう意地のつもりなんだが。

エリート王子を倒す下級戦士みたいに。



『ダスクプラウザー』。

オレの注文のために完成まではもう少し時間はかかりそうだが、この注文どおりになるのなら。

使いやすい、いい剣になりそうだ。むしろオレが使いこなせるのかが問題になる。



「で、次の武器はこれだな」

どこからともなくヒロシが出してきたのは……、サッカーボールと靴。

「このブットバシューズで超強力サッカーボールを」


「やめろ! それはだめだ!」


……さすがに、それは、だめだろう。

攻撃方法もそうだが、オレ、サッカー苦手なんだよ。

次は閑話入れます。

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