11話 知らないことが、多すぎるんだよ!
戦闘、ないです。すみません。
しばらく武器や変身後の性能について話が続きます。
「ひっじょーに不服ではあるが、変身ヒーロー『ユナイト』の武器を作ったぞ!」
「……いや、まあ、どうでもいいね」
『ユナイト』というヒーローネームをつけて、2日後の夜。
喫茶店の定休日の前の日、ということもあってのんびりしようと思った矢先。
武器が出来たので、会議召集と。オレ、ヒロシ、アヤは食卓、ではなく。
ヒロシの部屋(仮)の生活臭のないあのダミー部屋に集まっているのだが。
何が不服だ? ああ、そういえば『ユナイト』というネームがどうやら不服だったか。
日本というか英語で「統括する」「まとめる」って意味じゃなかったか?
ヤマトだと……あんまりいい意味じゃないが、まあいい。
「そこはゆずってくれ! 頼む! とかじゃないのか?」
待て。
なぜお前が、そのネタを知っているんだ?
それが知りたい。武器などどうでもいい気がする。
だって、『ユナイト』には空間を変幻自在に変容できる力があるんだぞ?
もっと言うと、空間にあるものを自由自在にコントロールできる。
空気のとんでもなく硬い壁も作れるし、前の戦闘で使った二酸化炭素の圧縮。
さらにはアールインパクトのように筋力増強に併用して重力操作もできる。
重力操作についてはAIから教えてもらった。あくまで局所的なものらしいが。
ほんのちょっとだけ浮く、みたいな感じだ。
そこまであって、武器など求める必要は、……どうみてもないだろう。
それよりも日本に転送する空間跳躍とかを研究して欲しい。
なお、『ユナイト』でもそこまでの空間操作は、無理でした。
AIにも聞いたんだけど、あくまで別次元の空間にものを格納するレベルで、どこか行くために使えるレベルではない、とのこと。
まあ、四次元的な袋ではあるが、どこへでも行けるドアのようなものではない、と。
だが、研究すれば出来そうなものだが、と聞いてみたら。
AIとしてはYES。可能性は高いらしい。想定される研究時間は不明だが。
時間はともあれ。こっちの研究のほうが、いいと思うんだが。どうしたものか。
「まあ、やはりヒーローたるもの、一番目は剣だな」
「あたしはヌンチャクでもよかったんですが」
おい。ちょっと待て。ヌンチャクはどこから出た。
ヒーローがヌンチャク使って、って中国映画か。
いや、好きだけどさ。ハンガーヌンチャクとかさ。
嫌いじゃないけど、オレは使えないぞ。
「というわけで、この『猛毒! ウラミニウムソード』を」
「なんか見た目が毒々しいぞ」
「ハッ! 実物はまだできてはないが、予定では刀身をウランで」
「人にも世界にも有毒だ!」
見本とはいえ、世に出してはいけない武器だな。折ろう。てい。
よっし。綺麗に真っ二つ。『ユナイト』の力は伊達じゃないぞ。
「うぉぉおい! 一応見本とはいえ、作製に時間と金がかかってるからな!」
「ひのきのぼうのほうが、値段もそうだが人にも世界に安全だな」
「あたしも、ちょっと……。ヒーローが毒使うっていうのは」
いや、アヤ。そっちでもない。
毒でも、神経毒とかならいいと思う。
あるいは睡眠とか。
いわゆる無力化攻撃というやつだ。ただ、攻撃力は控えめにして欲しい。
それなら、安全に攻撃できる。
そもそもこの二人、人の影響もそうだが、世界への影響も考えてないのか?
……天才なんだが白衣好きの変態科学者だからな。仕方ないかもしれない。納得したくないけど。
アヤは科学者以外の才能があんまりない。残念天才科学者といったところか。
どっちにしろ、まとめて天才変態科学者でいいか。ヒロシとペアならアヤは喜ぶだろう。
「せっかく、ウランと『恨む』をかけて作ったのだが……まあ、いいか」
「私怨なのか? ……それこそヒーローっぽくないぞ」
私怨で戦うヒーロー、っていうのもいるにはいると思うが、武器名からして呪いがありそうだ。
やっぱり真っ二つにして正解だったか。
「気を取り直して次は、アヤくん!」
「あたしが作ったのはこちら! ひらがなで『ざんてつけん』と名づけました」
鞘なしで抜き身の日本刀が備え付けのちゃぶ台、いやテーブルといえばいいのか? に置かれる。
いや、テーブルに刺された。ドン! って感じで。
「おおおおおをい! 危ないだろうが!」
引いた! マジで引いた! なんで日本刀? 発明でもないけどいきなり出てくると困る!
『いきなり出てくると困るもの:ゴキブリなどの虫。新規登録:日本刀』
AI、そういう処理はオレに通知しなくていいから!
「性能だけど、基本的にテーブルだけじゃなく、こんにゃくとかが切れます」
「鉄はどこ!? ってか日本の元ネタ知ってるだろお前ら!」
有名な怪盗一味の石川さんが聞いたら、……もしかしたら欲しがるかもしれないが。
「うーん。……鉄なんて斬る必要、あります?」
「……ネーミング上、斬ったほうがいいと思う。絶対」
「いや、アヤくん。あえて鉄を斬らずに『ざんてつけん』という名前。名前勝ちと思うぞ私は!」
違うぞヒロシ。そういう場合は、名前だけが先行するみたいになって、いわゆる詐欺だ。
日本人に「ざんてつけん」って言って、この刀出したら、引くかもしれないか。
いい脅しにはなるが、オレに刀を使いこなす技量はないぞ。
変身スーツでの訓練は今のところ、筋トレと効率のよい動き方だけだし。
手際よく料理作らないと、マジで間に合わないから。
結構そういうところは考えてるんだぞ。
「せめて、まともなヒーローの武器、とはもう言わない。一瞬だけよく斬れるロングソードとかでいいからないのか?」
剣である以上、せめて斬る方向は欲しい。
ロングソードといった西洋の剣は、どちらかというと鈍器だ。
ショーテル系は湾曲があるため、斬るための剣ではあるが、そこまでの湾曲はいらない。
だが、日本刀だと、ちょっとその、うーん。ヒーローとしてどうだろうか。
オレは好きなんだが、使うとなると話は別っていうか。
形としてはロングソードで機能は少しぐらいは斬れるくらいで。
うん。それくらいがいいな。ヒーローっぽいだろう。
「うん? あるよ?」
だろ? やっぱりないだろうそんなの。
……? あれ?
「……ないじゃなくて、ある?」
聞き間違えたか? あるって聞こえたが。
オレの疑問を無視して、ヒロシが、えーっと、確かだな、あれはーと言いながら、クローゼットを覗き込んで、取り出すは一振りの剣。何の変哲もないロングソード。
西洋武器店とかにあってもおかしくない拵えだ。
「ヒロユキの言うやつ。一瞬だけ何でも斬れる剣。その名も」
立ちながらヒロシが鞘から抜くと、綺麗な白刃。だが、変なところが何もなく、逆に怖い。
まともすぎて怖い、っていう変な話だが。
「あ、『マジで斬れる五秒前ソード』ですね、ハカセ。失敗作じゃないですか」
「……アヤくん、私のセリフをとらないでくれないか。ちょっと泣くぞ」
「そのネームセンス、やっぱりお前ら日本からパクッてるだろうが!」
……そういえばヤマトに来てから、ずっとツッコミしてるけど。
オレ、ツッコミとか言う前に日本ではあんまり人と絡んでなかったな、ってふと思った。
でもな。そんなオレでも。
そのネームセンスには言わないといけないんだ。
なにせオレが使うんだから。
ほら、想像してみればさ。
ヒーローが「いくぜ!『マジで斬れる五秒前ソード』!」とか言ってぶん回してみろ。
もしくはおもちゃの武器のコマーシャルで、「これで君もヒーローだ!『マジで斬れる五秒前ソード』!」って言われてみろ。
少なくとも、オレはそんなヒーローはいやだ。見た目かっこよくても、かっこ悪い気がする。
それにどんなに強くても、そんな武器は振り回したくないし、敵に言いたくもない。
敵にそんな名前の剣を……、って思うと恥ずかしい、というか悲しい。
だから、天才変態科学者たちにこう言おう。
「剣の前にネームセンスだ」
名前の付け方なら、オレのほうがまだましだろ?
武器や性能の話が終わったら閑話に移ります。
その後に戦闘回入れますが、戦う……かなあ?




