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異世界で勇者になるはずが…  作者: 朔海恋花
第1章 勇者候補と変化
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第6話 魔王

今回もまた少し長めです!


 目が覚めると見慣れない天井が見えた。

 私がベッドの上で横になっていることを理解するのにかなり時間を要した。

 毛布の感触があるので天国ではなさそうだ。


 ベッドから降りると足がもつれて転んでしまった。

 いつもと少し感覚が違うような気がするけれど、いま気にしても仕方ない。

 立てそうにないので匍匐前進(ほふくぜんしん)であたりを探っていると何かにあたった。


 「痛てて、なにこれ靴?なんで靴にあたったんだ?」

 「起きたか、優海」

 「父さん⋯?これは走馬灯か何かなの?」

 「いや、違うよ」

 「じゃあ、本当に父さんなの?私は生きているの?」

 「あぁ、そうだよ。優海は死んでいない。生きているんだ」

 

 よかった、私生きているんだ。


 「でもなんで父さんがいるの?」

 「俺1人だけじゃ説明できないから後でちゃんと話すよ」

 「わかった」

 「いや⋯でもこれなら俺だけでも説明できるか」

 「何?」

 「いいか、優海はブライアン王国に裏切られたんだ」

 「え⋯」

 「転移魔法に仕掛けがされてあったろ?あれのもとを探ったらブライアン王国の幹部と宮廷魔術師によって仕掛けられていた。お前を殺害するためにな」

 「私を、殺すため⋯?」

 「あぁ」

 「そんな⋯」


 いつからなんだろう⋯。

 いつからブライアン王国は私のことを殺そうと思っていたんだろう。

 

 「今、仕事が終わったらしい。会いに行こうか」

 「うん」


 どうにかして立ち上がる。

 普通に歩けるんだけれど、なんか違和感。

 ま、気にしても仕方ないか。

 父さんに案内されてきた場所は王座の間(ぎょくざのま)だった。

 そしてその玉座には何故か母さんが座っていた。

 その隣にフードを目深に被った人も立っていた。


 「久しぶりね、優海!会いたかったわよ〜!」

 

 母さんが勢いよく抱きついてきた。

 

 「母さん、苦しい⋯」

 「ごめんなさい。馬鹿力だからもう少し加減しなきゃだったのに」


 母さんはそう言って反省していた。


 「母さんもなんでここにいるの?というかこの椅子なに?」

 「私はこの世界の魔王をやっているの」

 

 マジかよ。

 勇者候補として召喚されたのに、母親が魔王ってどういう因果なんだ。


 「本当に?」

 「えぇ、そうよ。優海が無事で良かった。本当に感謝しているわ、ありがとうディアボロ」


 そう言って母さんは隣に立っているフードの人に感謝を述べた。

 ディアボロさんっていうんだ、ん?ディアボロ?


 「もしかして、ディアボロ伯爵!?どうしてここに?」

 「あぁ言ってなかったわね。ディアボロは私の配下よ。今回の事はディアボロが報告してくれたのよ」

 「こんにちは、ウミ様。やはりオウガさんと魔王様の姫様でしたか。今回は助けてくださりありがとうございます」 

 「いやいや、ディアボロ伯爵がいなければ私は死んでいたかもしれなかったので。こちらこそ本当にありがとうございます」

 「私は、自分の仕事を全うしたまでですから」


 ディアボロ伯爵は優しい笑顔で言ってくれた。

 その顔は知っている笑顔に似ていた。

 見たことあるはずなんだけど、思い出せない⋯。


 すごく情報過多で頭がパンクしそう。

 でもこんな状況にワクワクしている自分がいるんだよな。

 

 「それで、父さんはここで何をしているの?」

 「俺はこっちの世界でレイラの側近として働いている。それよりも優海、自分の身体の異変に気づいていないのか?」

 「え?」


 言われて見ると、下半身が6体の犬の姿になっていた。

 感じていた違和感はこれか⋯。


 「なに、これ?」

 「ごめんね。私と桜牙さんとの子どもには時限式で呪いがかかるようになっていたみたいなの。早くそのことに気づけていたらどうにかできたかもなんだけど⋯」

 「母さんは悪くないよ⋯。でもどうやったら呪いが解けるの?」

 「解呪方法はまだ見つかっていない。だから、元には戻ることができないんだ」

 「戻れない⋯ってことはもう大和たちと過ごすことができなくなっちゃうってこと!?」


 自分で破滅を選んだはずなのに、こんなにも胸が苦しい。


 「まぁ落ち着いてくれ。優海はスキュラという魔族となってしまったんだ。この世では今のところ1人しかいない希少種だからなるべく身を隠してほしい。そのために領地を渡すから」

 「領地を貰えるのはありがたいけど、身を隠すのは領主として難しいと思うんだ。そこはどうするの?」

 「人間に見えるようにする方法はあるのよ。でも代償が大きいの」

 「何なの?教えて!」

 「高位特殊魔法である変化魔法を使うのよ。これを使えば誰にもバレないし、身の安全が確保することができる。高位特殊魔法のわりに取得するのは簡単よ。でもその代わり体全体に耐えられないような痛み発生するの。だから、慎重に考えて欲しいの」

 「なるほど。というか身の安全ってどういうこと?」

 「それは私から説明いたしましょう。ウミ様はブライアン王国の策謀によって亡くなったことになっていますし、魔王様方の姫様でもあります。生きていることがバレれば、投獄されるか、極秘に処刑されてしまうかもしれないのです」

 

 処刑されて二度とみんなに会えなくなるより、この姿を隠して別の姿で再会するほうがいい。


 「⋯わかった。変化魔法を使うよ」

 「優海、大丈夫なの?この魔法は魔王である私でさえ3日で倒れたのよ?」

 「危険なのはわかってる。でもこの姿を他の人に見られるのは嫌だ」

 「⋯分かったわ。優海の好きにして」

 「ありがとう、母さん」


 半ば呆れ気味に母さんは言ってくれた。

 でも母さんたちにはもっと聞きたいことがいっぱいあるのに⋯。

 これについてはいろいろと落ち着いてからにしよう。

 それより聞かなきゃいけないのはディアボロ伯爵が話していたブライアン王国のことだ。

 

 「さっきの話の続きなんだけど、ジーク王はなにをするつもりなの?」

 「ブライアン王国だけでなく他の3つの国も関係しています」


 ディアボロ伯爵は私が理解できるよう、丁寧にゆっくり教えてくれた。


 「4つの国の国王たちは長年どの国が利益を生み出せるかで競争してきました。そして勇者と呼ばれる人を召喚し、自分たちの利益のために使っています。魔王は魔物を生み出しますがそれによって生態系が保たれており、人族は利益を得ています。そして貪欲な4人の王は魔王の立場を手に入れてその利益までも手に入れようとしているのです」


 それに私達は巻き込まれたのか。

 

 「私達はそれを阻止するために4つの国と敵対し始めたわ。相手側は大人しく屈伏しろって思っているのだけど。まずは敵情視察として魔王軍の諜報部隊長であるディアボロ潜入をお願いしていたの」


 なるほどディアボロ伯爵はスパイってことか。

 めっちゃかっこいいな。

 でも命をかけている人に、軽率にかっこいいとか言わないほうがいいよな。


 「そういえば、国では今回の試験について調査をしているはず。ディアボロ伯爵は副責任者でしたし、ここにいても大丈夫なんですか?」 

 「ご心配なく。あっちで現在活動しているのは私の複製(クローン)ですから。とても精密な魔法なので露見する可能性は限りなく低いですので」

 「良かった⋯」

 「では私はウミ様の出発の準備をしてまいります」


 ディアボロ伯爵が出発の準備に向かうと母さんが話しかけてきた。


 「じゃあ話も落ち着いたことだし変化魔法と領地とあなたの使い魔について説明するわ。少し長くなるけれど大丈夫?」

 「うん、大丈夫」


 やっと頭が追いついたのでなんとかなりそうだ。

 

 「まずは変化魔法からね。変化魔法はさっきも言った通り、耐えられないような痛みが発生するの。だからちゃんと身体と相談しながら使うのよ?」

 「わかった」

 「入手方法は簡単。スキルポイントで変化魔法を取得するだけよ。領地へ向かう馬車の中で練習しておいてね」


 あれ、そんなに簡単で大丈夫なの?

 使うのちょっと怖いかも⋯

 でも一度決めたことは、貫き通そう。


 「次にあなたの領地について話すわね。領地の名前はイ(・)ン(・)コ(・)ル(・)ト(・)。比較的人族領に近い魔族領なのだけど、魔族領だと知っている人間はごく一部。到着した次の日に領主就任式があるけれど、その日だけ私の部下に人族の立ち入りをしっかり取り締まってもらうから安心してちょうだいね」


 領主就任式なんてやっちゃったらまずくない!?⋯と思ったけれど、人族の立ち入りを取り締まってくれるのなら安心だ。


 「上に立つものとしての自覚も持つのよ?」

 「お前が言うな」

 「桜牙さんったらひどーい。ねぇ優海、パパ酷いよね?」

 「五分五分だね」

 「くそぉー!か弱い魔王のレイラちゃんをもっと甘やかしてよぉー!」


 うん、すんごい矛盾。

 でも母さんらしいや。


 「レイラ、いじけていないで説明の続き」

 「分かったわよ。最後は使い魔についてね。優海の下半身にいる6体の犬とは変化魔法によって分かれることができるの。その犬は1匹だけになるけどね。その一匹に名付けをすると優海のことを手伝ったり、守ったりしてくれるわ。これで伝えることは全部よ。何度も言うけれど体調に異変があったらすぐに魔法の使用をやめて、休むこと。いい?」

 「うん!ありがとう、母さん」


 母さんからの説明も終わり、自分の置かれている状況を少しだけ理解することができ始めた。

 私はこれからインコルトというところの領主となるらしい。

 大丈夫、私ならなんとかなるはず!

 

 「優海、もう1つだけ伝えることがある」

 「何?父さん」

 「魔王領の領主になるということは、魔王軍の幹部になることと同じことだ。人族と戦争が勃発したら、優海は魔王軍の幹部として戦わないといけないんだ。それでも、大丈夫か?」

 「⋯私は父さんと母さんの娘だから。もし、大和たちと戦うことになったとしても私は父さん達と一緒に戦うよ」

 「ありがとう。ごめんな⋯」


 その後私はディアボロ伯爵の案内で領地へと向かった。 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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