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異世界で勇者になるはずが…  作者: 朔海恋花
第2章 領主生活
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第26話 作戦会議


 急いで商人ギルドへ向かうとメルカンテさん、ブリランテさん夫妻、サッジオさんが先に到着していた。

 ルズナを今の状況で呼んでしまうといつも異常に暴走しかねないため、陸華ちゃんと響くんに事情を話して抑えてもらっている。

 二人には一番面倒くさい仕事を押し付けてしまったので今度なにかお礼しよう。


 メルカンテさんは腹立たしそうに足を何度も床に打ちつけている。

 ブリランテさんは険しい表情で俯き、クレデーレさんは状況が飲み込めないという顔をしていた。

 サッジオさんは優しく迎え入れていたが、その顔には怒りが滲んでいた。


 「みんな来てくれてありがとな。先程俺の部下から伝達があって、カズナが盗賊ギルドの中に囚われていることがわかった」

 「ねえ、どうしてカズナさんが囚われているんですか?」


 あまり情報を知らなかったクレデーレさんが質問した。


 「そこまで詳しくはわかっていないんだ。だが首謀者を突き止めることはできた」

 「誰なの?」

 「インコルト前領主、ストロンツォだ」


 その場の空気が凍る。

 クレデーレさんはその言葉を聞いて、少し震えている。

 顔は逆光でよく見えないが、怒りに満ちていることだけはわかった。

 サッジオさんがメルカンテさんの方へと身体を向けた。


 「あいつにカズナちゃんが捕まったんちゅうのは本当のことなんやな、メルカンテ」

 「あぁ」

 「なぁ、今からぶちのめしに行ってもええか?」

 「行きたいところだが、そうなると相手の思うつぼだ」

 「じゃあ、どうするんだ?」

 「それが悩みどころなんだ」


 皆一斉に悩み始めた。

 情報が足りない、足りなさすぎる。

 盗賊ギルドだからか?

 いや、恐らく裏に何かがいる。

 もみ消しているのか、それとも情報を改竄しているのか。

 潜り込む必要があるな。

 なら、変化魔法を使うのが一番良いのでは?


 今日はいつもより頭の回転が早かった。

 私が思っている以上に私は腹が立っているようだった。


 「⋯1つだけ提案があります」

 「なんだ?」

 「私が、盗賊ギルドに潜入します」


 バンッ、と勢いよく机を叩く音がした。


 「そんな危険なことをさせられるか。ア(・)イ(・)ツ(・)と同じ徹を踏みたくはないんだ⋯!」

 「アイツ⋯?」

 「いやこちらの話だ。とにかく許可しない」

 「じゃあ、メルカンテさんが一緒に来てくれればいいのでは?」

 「はぁ?どういうことだ」

 「誰かと同じ徹を踏ませたくはないのでしょう?であればメルカンテさんがそうならないように僕のことを守ればいいんですよ」


 メルカンテさんは頭を抱えるように俯いた。

 そして仕方なさそうに、こちらを見る。


 「はぁ⋯、わかった。だが、危ないことは絶対にするなよ?」

 「善処します」

 「それなら、いつ決行する?冒険者ギルドも全力で協力するよ」

 「ありがとな。今日の22時あたりに決行しよう。冒険者ギルドから上級ポーションをいくつか譲ってほしい」

 「あの子のためだからね。任せて。クレデーレもそれでいいかい?」

 「もちろんよ!」


 そんなとき、サッジオさんが口を開いた。


 「それ、俺も行ってもええか?」

 「⋯構わない」


 サッジオさんは人魚だ。

 どうやって行動するのだろうか。

 私が思っていることに気がついたのか、サッジオさんはもう1つアーティファクトを着けた。


 「ムタメン卜」


 その言葉に連動したのか、アーティファクトから光が溢れ出した。

 サッジオさんの髪の毛から足へと順番に身体が変化していく。

 変化が終わる頃には、人魚とは思えないほどに人間の姿になっていた。


 「俺はこれでいくから安心しいや」

 「な、なるほど⋯?」

 「サッジオ、それ俺にもくれないか?」

 「だめや。これはア(・)イ(・)ツ(・)が俺のために作ってくれた、世界に1つしかないのものやから」

 「⋯そうか、仕方ないな。変化魔法を使おう」

 「一緒に耐えましょうね、メルカンテさん」


 メルカンテさんは嫌そうに自室へと向かった。


 「じゃあ、僕たちも準備を整えて向かいましょうか」

 「そうやな」


 そう言ったサッジオさんが少し落ち込んでいるように見えた。

 気のせいかもしれないが、どうしても声をかけずにはいられない性分なもので。


 「どうかしましたか?」

 「⋯カイルくん、俺は頼りないんかな?」

 「いいえ。むしろ頼りになりまくりですよ?」

 「そうか⋯。ありがとうな」


 準備に向かうサッジオさんは先程とは違い、覚悟が決まったように見えた。

 さて私も準備をしなければ。

 

 こうして長い潜入捜査が始まろうとしていたのである。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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