第27話 盗賊ギルドに潜入
様々な準備を終えて、約束の時間に商人ギルドへと向かった。
一刻も早くカズナを救うには情報が必要だ。けれど、そのための潜入捜査をするにあたって、必要な準備があるのだ。領主である私は許可証を、ブリランテさんは回復薬などの必需品を用意し、メルカンテさんとサッジオさんは計画を練ることになった。
商人ギルドに到着すると、皆いつもと雰囲気が違った。
カズナが誘拐されてしまったのだから当たり前だけれど、少し驚いてしまった。
「早いなカイル。今回は初めてみるな」
「今までのは誰かに目撃されてしまっている可能性があるので。念の為です」
「そうか。みんな揃ったことだし計画を説明しよう」
「お願いします」
「今回、盗賊ギルドに潜り込むのはカイルとサッジオだ。俺は司令塔として2人に指示を出したり、情報っを与える。基本はそれに従ってくれ。だが、もしカズナの命が危険だと感じたときは個人の判断に委ねる」
「わかった。そのときが来てしもうたら、犯人の生死は問わないっちゅうことでええか?」
「ああ。そうだ」
生死は問わない、その一言でここが日本ではなく異世界だということを私に再び認識させた。
殺し合いも処刑も戦争も簡単に起こってしまう世界なのだ。
「もちろん、無理にとは言わない。逃げたくなったら逃げてもいい。誰も死なないことが最優先だ。そろそろ決行するぞ」
私が戸惑っているのを感じ取ったのか、メルカンテさんはそう言って頭を優しく撫でてくれた。
子ども扱いをされたことに不満を少し覚えたけれど、安心することができた。
その後私とサッジオさんはメルカンテさんの指示によって街外れのスラム街に来ていた。
スラム街は暗い雰囲気で、床にはホームレスや乞食が座っている。
『その先に盗賊ギルドがある。商人ギルドの諜報部隊のやつが向かっているから到着するまで待っていてくれ。幸運を祈る』
メルカンテさんはそう言って通話を切った。
今はサッジオさんと2人きりだ。
「サッジオさん。カズナは大丈夫ですかね?」
「こればかりはわからんな。カズナちゃんのことだから多分大丈夫だと思うんやけどな。あと、ここではファルソと呼んでな。呼び捨てでいい」
「じゃあ私のことはハヅキと呼んで下さいね」
サッジオさんことファルソは私の名前をしっかりと頭に刻むように呟いた。
今回は女性の格好をしているのでカイルでは合わないと思ったのだ。
少し雑談しながら待っていると、短髪で碧眼の小柄の少年がこちらに向かって歩いてきた。
「はじめまして。あなたがたが商人ギルドの紹介がある方ですか?」
「ああ、そうだ」
「では、僕についてきてください」
「あなた、名前は何ていうの?」
「トラ、とお呼びください」
「よろしくね、トラ」
トラに案内された場所は少し荒廃した建物だった。
どうやらここが盗賊ギルドのようらしい。
中は意外と広く、小綺麗であった。
目の前で偉そうに座っている男はちらっとこちらを見て、作業に戻った。
「兄貴、連れてきました。こいつらが今回の協力者です」
「お初にお目にかかる。俺はファルソ。よろしく」
「私はハヅキ。よろしく」
私たちがそう言うと偉そうに座っている男はこちらをようやく振り向いた。
「俺はここのギルドの支部長をしているドッビオだ。明日から俺の元で働いてもらう。逃げたりするなよ?」
「承知した」
「分かりました」
「今日はもう解散だ。また明日、今日と同じ時間にここに来い」
ドッビオの言葉と私たちは同時に取り巻きたちにより外に追い出されてしまった。
「⋯追い出されましたね」
「そうやな。まぁ、明日も来いって言っとったし、また明日来ようや」
「そうですね⋯」
「カズナちゃんのことが心配か?」
「はい⋯」
「カズナちゃんは伊達に領主様の護衛兼メイドをやってるわけじゃないんや。だから今は大丈夫や」
「―わかりました」
ファルソはそう言うけれど、この目で見ないと安心できない。
けれど、それで勝手な行動をして、もっとカズナの命が危なくなるほうが怖い。
今日は我慢だ。
家に戻った後、ルズナは何かを察したのか何も言ってこなかった。
申し訳ないが明日も響くんと陸華ちゃんにルズナを見張っていてもらおう。
カズナがいない屋敷はどこか寂しく見えた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
誤字脱字がございましたら、報告していただけるとありがたいです。
これからはこのくらいの頻度で投稿していくと思われます。




