第24話 本音
私たちはクレデーレさんの案内で脱衣所にそれぞれ入った。
シゴデキタックに囲まれた響くんが少しだけ心配だけれど、まぁ大丈夫でしょう。
服を脱いで、大浴場に向おうとした所で声をかけられた。
「ウミ様、先程は大変申し訳ございませんでした!」
「ルズナも何か理由があったんでしょう?話したくなったらいつでも話していいからね」
「はい⋯」
いつも冷静沈着で完璧なロボットみたいなあのルズナがぺしょぺしょなワンちゃんみたいになっている⋯!?
そういえばこんな少女漫画好きだったな。
異世界に転生したらクールな王子様が自分だけに懐いてくる、的な作品。
中学生のころ、来世では少年漫画の男主人公になってハーレムを作るんだ!とか妄想していたのがもう懐かしい。
そのためだけにいろんな知識を覚えたのだけど、まさかそれが役に立つなんて思ってもいなかった。
そんなこんなで頑張ったんだから、ちょっとくらい大声で喜んでもいいかな?
ダンジョンの近くとはいえ、目の前は山だし大丈夫でしょう。
「すぅうううう、久しぶりの温泉だぁぁあああ!感謝感激最高だぁぁあああああ!!」
ふう⋯。
やりきったぜ。
何度も思うけど最高すぎる。
お肌もツルツルになるし、シャンプーもボディソープもいい匂いだ。
今までの疲れがどんどん取れていく。
そういえばスキルポイントで鑑定を手に入れたから、どんな効能があるのか調べてみよう。
なになに、【自律神経不安定症、不眠症、うつ状態、疲労回復、本音】。
結構良い効能だ。
でも本音ってなんだろう⋯?
そんなことを考えながらボーッとしているとカズナ、ルズナ、リッカちゃんの順番に温泉に入ってきた。
「失礼します。うわぁ~これお肌ツルツルになるし日々の疲れも取れますねぇ」
「そうだね~⋯」
うん。それよりもカズナ、ナイスボディ何だけどその胸の古い傷はどうした!?
めちゃくちゃ気になる。
「あの、カズナ⋯?その気に障るようなら話さなくて良いんだけどさ、その傷どうしたの?」
「これですか?少し長くなるんですけどこれは私の継母につけられた傷なんです。実はですね、お姉ちゃんとは歳が同じで双子ということになっているんですけど、私は使用人の子でして。幸いメルカンテ兄様に顔が似たのでまだお姉ちゃんにはバレていないんです」
「⋯」
「それで継母というのはお姉ちゃんとメルカンテ兄様の母様なんですが、私と私の母のことが憎くて仕方なくて権力行使して私が小さいときに私の母を殺害したんですよ。もちろん私のことも殺害しようとしました。でもメルカンテ兄様が助けてくれて、なんとか死なずに済んだのです」
「メルカンテさんって優しいんだね」
「ええ、とても。私の母とメルカンテ兄様の関係はメルカンテ兄様から聞いてくださいね。私が話してもいい関係じゃないと思うので」
「わかった。話してくれてありがとう」
「いえいえ。いつもは話さない内容なんですけど、なんか今日は話したい気分になったもので。じゃあ私は先に上がりますね」
「うん、どうぞ」
カズナにもルズナにもいろんな事情があるんだな。
ちょっと重い話だったけれど。
私に話してくれるってことは信頼してくれているってことだもんね。
今度はルズナが温泉に入ってきた。
「失礼します、ウミ様」
「うん、いいよ」
少しの間、沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのはルズナだった。
「改めて先程は申し訳ありませんでした⋯」
「いいって。何か事情があったんでしょう?」
「はい。少しだけ話してもよろしいでしょうか」
「いいよ」
「私とカズナは双子なんです。年齢も30歳と同い年ですし。でもメルカンテは違うと言うんです」
ん?19歳じゃないんだ。
それは置いといて、さっきカズナから聞いた話と繋がるな。
「それで?」
「私が兄を嫌っているのは両親を殺したことにありますが、カズナと双子じゃないってずっと言い続けていることが何よりも嫌いなんです。それなのにカズナはメルカンテと仲良くしていてそれも許せなくて。もう、どうしたらいいんですか!?」
どうしたらいいんですか、って聞かれてもな。
よその事情はよその事情だし。
少し探りを入れてみるか。
「どうしたらいいんですかって言われても⋯。というかカズナと双子だって証拠はあるの?」
「え⋯?」
あ、これ証拠ないんだろうな。
もうちょっとつつくか。
「カズナとの一番古い記憶はいつかわかる?」
「えっとカズナと私は離されて育てられて、初めて会ったのは母が亡くなった後だったので⋯10歳でした」
「じゃあちゃんとした証拠はないんだ」
「はい⋯」
「双子だっていう気持ちもわかるし、メルカンテさんのことを嫌いだって言うのもわかる。でも、みんなこの世界に一人しかいない兄妹なんだよ。だからさ、事情があるんだと思って割り切ってみるのも手だとは思うよ」
「⋯確かに。そうかも、しれないです。ありがとうございます。ではお先に失礼します」
そう言ってルズナは温泉から出ていった。
あー、やば。ちょっとルズナ涙目だったような。
嫌われていないといいけど。
いつも自分の中で眠っている悪魔が出てきちゃった。
少しいじめすぎちゃったな。
これからは反省して、もう少し抑えなきゃだな。
この一連の出来事を陸華が息を潜めて見守っていたことに優海は全く気づかなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




