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異世界で勇者になるはずが…  作者: 朔海恋花
第二章 領主生活
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第20話 錬金術師との契約


 起きて早々、目の前の惨状に私は言葉を失った。

 羽毛布団は爪で引っかかれ、壁には穴が開けられていた。

 当の本人(リア)はやってやったぜ!というように自分のベッドで気持ちよく寝ていたので叩き起こし、修復魔法を使わせた。

 私が約束を破ったことにとても腹がたったそうだ。

 カズナの仲介の元、私達は仲直りをすることができた。


 リアも私も喧嘩に疲れて昼過ぎに寝てしまい、起きたら朝になっていた。

 朝といってもまだ真夜中の3時だけど。

 今日は錬金術師の方と会うことになっている。

 こんなときにコーヒーがあれば良かったのにな。

 二度寝なんてしたら遅刻しかねない。

 今日話したいことの書類でも作っておくか。


 時が経つのは早く、気がつけば昼の11時になっていた。

 今日は珍しくカズナが来なかった。

 昨日あんなことがあったからそっとしておいてくれたのだろうか。

 ご飯を持ってきてくれたのはルズナだった。


 そんなこんなで準備して商人ギルドに向かう。

 商人ギルドに着くとシンチェリータさんがいつものように明るく迎え入れてくれた。

 執務室に着くと、メルカンテさんが誰かと談笑していた。

 恐らく錬金術師の方だろう。


 「おお、カイル。早かったな」

 「いえいえ、こちらからお願いしたのですから早めに、と。それでも遅かったですけど」

 「まぁそう落ち込むなって。そこに座ってくれ」


 促されメルカンテさんの横に座る。

 目の前に座っているのは青いフードを目深に被った人物だった。

 服は少しボロボロに見え、背格好は二十代半ばだ。

 切れ長の瞳はオッドアイで、少し長めの銀色の髪はその妖艶さを増していた。


 「こいつが俺の知り合いの錬金術師だよ」

 「やぁ、はじめまして。俺はアルキミスタ。アルキって呼んでね」

 「はじめまして、アルキさん。僕はカイルです。本日はよろしくおねがいします」

 「へぇ、君がカイルくんかぁ。女の子みたいに華奢だねぇ」


 ⋯バレているのか?いや、女の子みたいだって言ってるだけだから大丈夫でしょう。

 平常心、平常心。


 「ありがとうございます。よく言われるんです」

 「⋯事実をふっかけられても平常心とはやるね」


 小さい声でよく聞こえない。


 「申し訳ないのですが、なんとおっしゃったのか聞き取れず、もう一度おっしゃってもらってもいいでしょうか?」

 「いや、君は面白い人だなって思っただけだよ」


 何を?

 まぁ、いいか。


 すると彼が髪の毛を耳にかけようとして、やめた。

 不自然だった、でも一瞬見えた。

 この商談を乗り切れるかもしれない。


 「で、今日は俺にどんな用なんだい?」

 「はい、今日はアルキさんに事業の提案をしたくて来たんです」

 「へぇどんな?」

 「水洗式トイレの大量生産、そしてこのインコルトの街に防御結界を張るのに協力してほしいのです」

 「なるほど。それ俺にメリットはあるのかい?」 

 「ええ、貴方はお金に困っている。なので利益の8割を貴方に差し上げます」

 「⋯見当違いだな。残念だよ、君には期待していたのに」

 「おい待てよ、アルキ!俺の苦労が⋯」


 メルカンテさんがものすごく頭を抱えている。

 頑張ってくれたんですね。

 でも、大丈夫ですよ。


 「話を最後まで聞いてください、アルキさん」

 「なんだよ、それが君の答えじゃないのかい?」

 「普(・)通(・)な(・)ら(・)そういう考えに至るでしょう。でも違いますよね。貴方は隠している」

 「何を?」

 「貴方は『失われた種族(エルフ)』ですよね?」


 その場の時が止まった。

 それを裂いたのはメルカンテさんだった。


 「エルフ⋯ってどういうことだよ。アルキ、カイル」

 「⋯勘が鋭いね。そうさ、俺はエルフだ。でも、どこで気づいたんだい?」


 アルキさんがフードを外した。

 そこにはやはり長い耳があった。


 「服装ですよ。商人ギルドに縁がある錬金術師の方がそんなボロボロな服で来るはずがないと怪しく思ったのが最初でした」

 「へぇ、服装か。盲点だったな」

 「そして決定打だったのは貴方が髪を耳にかけようしたとき、フードで隠れていた耳がわずかに見えたことでした」

 「そこで気付いたのか。君はメルカンテから聞いていたとおり興味深い人のようだ。さて、俺の正体を明かしたのだから、君も正体を明かしてくれないかなカイル君?」


 やっぱ気づかれてましたか。

 最初から女の子みたいと言われていたものね。


 『変化魔法解除』


 優海の姿に戻る。

 二人とも驚いた顔をしていた。


 「いやぁ、予想以上だったね。君がこの街の領主様で魔王様方の娘のウミ様だっただなんて」

 「それがカイルの本来の姿か。意外と可愛いんだな」

 「それセクハラですよ、メルカンテさん」

「せくはら⋯?なにかわからねえけど、わりぃ」


 セクハラメルカンテさんは置いておき、アルキさんとの商談を進める。


 「アルキさん、改めてもう一度言います。私と協力してくれませんか?もちろん衣食住は保証します」

 「俺を保護してくれるってことであっているのなら、協力しますよ」

 「ありがとうございます!」


 それからアルキさんと契約を結び、保護した。

 響くんと陸華ちゃんの先生にもなってくれるそうだ。

 これからの未来が楽しみになってきた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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