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異世界で勇者になるはずが…  作者: 朔海恋花
第2章 領主生活
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第19話 下水工事にとりかかりたいが⋯


 最近新しく作られた領主邸へと繋がる坂道を駆け下りていく。

 今日は私がずっと待ち望んでいた下水工事にとりかかる日だから張り切っているのだ。


 あぁ、やっとこの臭いにおいから解放される⋯。

 いい街なのだけれど、下水の匂いが酷いの。 


 昨日作った設計図は完璧なはずだ。

 ミステーロ湖から水を引いて川を作ったあと、水道橋を作って川から水を街に通せるようにする。

 土地の交配を調整して排水管を各地に設置。

 そして一軒ごとに公共枡っていうお風呂とかトイレを排水管と繋ぐ装置を置く。

 掘りおこした場所を埋め直して、道路整備をすることで完成だ。

 これ全て地球で見てきたオタク知識のおかげなのだから、昔の自分には感謝しかない。


 というか、いま思ったのだけれど領主邸以外の建物にトイレってあったっけ?

 ないよね⋯。あったとしてもぼっとん便所な気がする。


 今日の目的地であるミステーロ湖から行き先を商人ギルドへと変えた。

 商人ギルドに着くと、商人の皆さんが忙しなく働いていた。

 それもそのはず、領主が初めて公に動いたのだからお金の流れも動くと言う事で。

 ルズナもカズナも朝から雇った職員たちを動かすために忙しく動いていた。


 いつもの受付嬢さんに案内してもらった部屋はいつも通り、執務室であった。

 今日はいつもと少し違うことをしてみようと思う。


 「いつもありがとうございます。あのよろしければ名前を教えてくれませんか?」

 「私の、ですか?」

 「はい。いつも案内してもらっているのに、名前を知らないなと思いしまして」

 「そういうことでしたか!てっきり新手のナンパかと」


 まぁそう思いますよね。

 というか、ナンパなんて言葉この世界にあったんだ。


 「すみません。勘違いさせてしまって」

 「いえ、私が悪いのです。ごめんなさいね、カイルくん。私はシンチェリータよ。よろしくね」

 「シンチェリータさん⋯。綺麗な名前ですね。これからもよろしくおねがいします。」

 「ありがとうございます。では、私はこれで」

 「ありがとうございました!」 


 深々とお辞儀をすると、シンチェリータさんは笑顔で手を振り返してくれた。

 さてと、メルカンテさんと多分一緒にいるであろうブリランテさんに確認しなければ。


 コンコンコン、と3回ノックをする。

 出てきたのはブリランテさんだった。

 やっぱり二人で仕事をしていたようだ。


 「こんにちは、カイルくん。どうかしましたか?」

 「よっ!カイル。もしかして計画に変更が出たのか?」

 「こんにちは。まぁ、そんな感じです。それを確認するためにここに来ました」

 「ぐっ、仕事が増えそうな予感がしますね⋯。せっかく子どもの手が離れ始めてクレデーレと久しぶりに愛を交わすことができそうだったのにっ⋯!」 


 なんか、うん⋯。ごめんなさい、ブリランテさん。


「で、要件はなんだ?」

「トイレって、各家にありますか?あと水洗式ですか?ぼっとん便所ですか?」

「あー、それならぼっとん便所ですから家には置いておけないので外に公衆トイレがありますね」


 なるほど。だから下水の匂いがすごいのね。

 よく考えてみればわかったことだけど。


 「ありがとうございます。そうですね、それなら水洗式のトイレをもっと量産したいのですが錬金術師の方にお越しいただくことはできますか?」

 「錬金術師か。俺の知り合いにいるから連絡してみるぜ」

 「じゃあ、僕たちは先に現場に行くとしましょう」

 「はい!」


 メルカンテさんは知り合いの錬金術師さんに連絡を取るべく執務室を出ていった。

 そして私とブリランテさんは改めてミステーロ湖に向かった。

 メルカンテさんが馬車を手配してくれていたので山脈の麓まで楽に進むことができた。

 

 その後は歩きだ。

 山道を登るのはきついが、綺麗に整備されているのでそれほど苦ではない。

 ミステーロ湖は山脈の中にあるためカルデラ湖に似ている。

 その山脈は活火山と死火山が両方あり、ミステーロ湖があるのは死火山の方だ。

 よって、カルデラ湖とは性質が違うため、ミステーロ湖から水を引いて浄水場を作るのが最適だと思ったのだ。


 「ここがミステーロ湖⋯」


 ミステーロ湖は透き通っていてとても幻想的だった。

 ここに浄水場を作るのは少し胸が痛くなる。

 水車とかあれば⋯ん?水車?そうか!水車小屋だ!


 「あの、ブリランテさん。ここに水車小屋を建てて、湖から水を引いて新たな川を作り、浄水場を作ることはできますか?」

 「なるほど。川を作ることには僕も賛成します。ですが水車小屋を作る意味はあるのでしょうか」

 「確かに大きな意味はないです。でも僕のやりたいことのためには必要なんです。これがあればかなりことが進むと思うんです。自分で作りますから!」

 「はぁ⋯。カイルくんには勝てませんね。いいですよ。その代わりそのやりたいことが完成したら僕にも見せてくださいね」

 「もちろんです!」


 ブリランテさんの許可を得ることができたぜ!

 これで私の異世界での野望に一歩近づく⋯!

 うふふふふふふ。

 良からぬ妄想をしているとアーティファクトに着信が来た。


 『もしもし?俺だ。メルカンテだ。知り合いの錬金術師に連絡が取れて、会ってくれるってよ!』

 「本当ですか!?ありがとうございます!」

 『日時は明後日の昼時、商人ギルドだそうだ』

 「わかりました」

 『じゃ、また後でな!』


 メルカンテさんとの通話が終了した。

 いや~やっぱりシゴデキだな、メルカンテさん。


 「メルカンテはなんと?」

 「錬金術師の方と連絡が取れたそうで、お会いすることができるそうです!」

 「良かったですね。じゃあこのあとの仕事も頑張りましょうか!」

 「はい」


 その後、メルカンテさんと合流しミステーロ湖の水深や性質などを改めて調べ直した。

 そして水魔法を使い、ミステーロ湖の水が底をつかないように安定させた。

 あとは、力仕事用に雇った人々の配置を考えた。

 これまでの工程すべてにものすごく骨が折れた。

 まじで地球での職員さんたちってすごいのね。


 帰るのがとても遅い時間になってしまった。

 ルズナもカズナもお疲れのようだ。

 明日一日はゆっくり過ごそう。

 そういえばなにか忘れているような。

 まぁ、いいか。もう寝よう。


 鋭い視線で見つめてくるリアの怒りなど気づきもしなかった。


最後まで読んでいただきありがとうございます!誤字脱字がございましたら、報告いただけるとありがたいです。もしよろしければブックマークと★マークを5まで押していただけると励みになります。

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