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異世界で勇者になるはずが…  作者: 朔海恋花
第二章 領主生活
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第11話 条例改正

          

 昨日は大収穫だった。

 レタス(トイトイ)や人参(ミズミズ)、小松菜(クサド)の種が手に入ったからだ。

 メルカンテさんによると常温でも1ヶ月以内なら問題なく保存できるらしい。

 これで、食糧問題が解決しそうだ。

 そして優しいハドロンさんがチョーカー型のアーティファクトを無料で譲ってくれた。


 今日は農作業を次回にして条例を改正しようと思っている。

 メルカンテさんとブリランテさんの話によると前の領主によって簡単には領民が作物を育てたり売ったりすることができなくなってしまったらしいので、屋敷に戻ったあと禁書庫の鍵をルズナに貸してもらい調べたのだ。


 案の定、前領主考案の条例はひどいものだった。

 要約するとこうだ。


 【条例】

 一、領民は領主の許可無しに利益を得てはならない

 二、領民は日々の利益を毎月四割税として納めねばならない

 三、一年のうち3ヶ月、男性は魔物狩りに行ーかなければならない

   だが命の保証はしない

 四、日々の利益のうち三割を領主に献上すること 

 五、他国の者が罪を犯しても裁判にかけず、罰金だけで済ませること


 あまりにも酷すぎたので、条例改正を行うことにしたわけであった。

 

 「カズナ、今から条例改正するんだけどいい?」

 「ああ、全然良いですよ!あのクズ...う、ゔん。前領主様の条例には私も納得していませんので」

 「じゃあ遠慮なく変えちゃうね」


 【条例】

 一、領民は自由に作物を育てたり、物を流通させても良い

 二、領民は税として半年に一回、1ヶ月分の収穫量の2割を納めること

 三、領民は冒険者以外、魔物狩りを無理にしなくても良い

 四、必要以上に税を納め過ぎないこと

 五、他国の者も罪を犯した場合、必ず裁判にかけ罰金以上の刑に処すこと

 六、戦争が起きた場合、できる限り死傷者を出さないように尽くす 

   万が一、死傷者が出た場合、遺族の心身のケアを行うことを誓う


 よし、こんなものだろう。

 まずカズナに確認してもらおう。


 「ねえ、カズナ。条例ってこんな感じでいいよね」

 「どれどれ〜...。ウミ様。ありがとうございます。これなら私たち領民も納得できます!」

 「これに決定!よし、カイルとして条例改正の内容を伝えてくるね!」

 「いってらっしゃいませ!」


 カズナに見送られ、カイルとして屋敷を出る。

 まず最初に向かうのは冒険者ギルドだ。

 冒険者ギルドのドアを開けると、クレデーレさんが受付に立っていた。


 「あら、カイルくん。いらっしゃい。今日はどんな用かしら?」

 「こんにちはクレデーレさん。今日は領主様からブリランテさんへの伝言を届けに来ました」

 「まあ、領主様から!カイルくんは領主様に会ったことがあるの?」

 「あ、はい...。ありますね」


 あるというか、なんというか。

 本人なんだけどね。


 「羨ましいわ。就任式の時、仕事で見れなかったのよ」

 「そうなんですね」

 「そうなのよ〜。あ、そうそう。ブリランテに会いたいのよね、ついてきてちょうだい」

 「ありがとうございます!」


 クレデーレさんに案内された場所はギルドマスター室だった。


 「いらっしゃいカイルさん。今日はどうしました?」

 「お忙しい中すみません。領主様より条例改正状が出されたので、それの確認と拡散を求めに来ました」

 「あぁ、昨日言っていたやつですか!仕事が早いですね。カイルさんにお話したいこともありますので会議室へ行きましょうか。メルカンテも呼びますね」

 「は、はい...」  


 話ってなんだろう?

 とにかくメルカンテさんの雰囲気が穏やかじゃない。

 私、なにかまずいことしちゃった?

 少し嫌な予感がする... 。


 「ここに座って待っていてください。メルカンテが到着したようですので」

 「わかりました⋯」


 ブリランテさんの雰囲気にものすごく不安を感じる。

 椅子に座って待っていると、メルカンテさんを連れたブリランテさんがやってきた。


 「よう、カイル。昨日ぶりだな。」

 「こんにちは。今日はどうして僕を?」

 「単刀直入に聞きます。カイルさん、貴方は領主様ですか?」

 「え?」


 領主様ですか?ってバレてるって。

 どうにかしてごまかさなければ。


 「い、いやぁ〜そんなわけないですよ〜」

 「裏はちゃんと取っているので誤魔化すことはできませんよ?」

 「そうだぞ、カイル。お前が領主様である証拠はいっぱいっ⋯。おい、ブリランテやめろぉー!」

 「貴方は黙っていて下さい」

 「ちくしょー!」

 「で、どうなんですか?」


 あちゃー、これ完全にバレちゃってるわ。

 仕方ない、腹をくくるか。


 「はい...そうです。絶対に、誰にも言わないでくださいね」

 「わかってますよ。やはりそうでしたか。今だから言えますけどカイルさんめっちゃ怪しかったですよ」


 え、そうなの?

 やだっ、恥ずかしい!


 「そうだったんですね。ものすごく恥ずかしいです」

 「そうだぜ。怪しさ満載だったな」

 「話は変わりますが、カイルさん。君のことはなんと呼べば良いですか?」

 「今まで通りカイルでも良いですし、好きなように呼んでください!」

 「わかりました。では今後はカイルくんと呼ばせていただきますね」

 「俺もカイルでいいか?領主様に対して、無礼かもしれないけど」

 「いやいや!全然そっちの方が嬉しいですし、自分がしたくてやっているだけですから」

 「そうか!これからもよろしくな。カイル」  


 めっちゃ嬉しそうだな、メルカンテさん。

 とはいえ、領主であるかどうかを確認するってだけだったのか。  


 「でも安心しました。最初、ブリランテさんが怖い顔してたので僕がなにかやらかしたのかと」

 「ある意味やらかしてはいますけど、特に致命的なやらかしはしていないので大丈夫ですよ。それにカイルくんとはこれからも仲良くしていきたいですからね」

 「今後ともよろしくお願いします」

 「おう!」

 「よろしくお願いします」


 ひとまず何事もなくてよかった。

 ほんっとうにビビったし、焦った。


 「そういえば、今日は条例改正状を持ってきてくれたんですよね。確認します。メルカンテもいるしちょうどいいですから」

 「そうだな!俺たちが確認して、街中に広めるぜ」

 「じゃあ、お願いします!」


 その後、二人に新たな条例を見せるとカズナ同様、感激してくれた。

 メルカンテさんは、魔法を使って条例改正状を二十枚ほどコピーしていた。

 商人ギルドのギルドマスターでないと扱えない特別な魔法だ。

 これでこの条例は正式なものとして認められた。

 だから他人が勝手に変えることはできなくなった。


 「完璧だな。じゃあ俺は街に広めてくるぜ!」

 「お願いします!」


 メルカンテさんが会議室を嬉々として出ていった。


 「じゃあ、僕も帰り...あれ、なんで...」


 足が鉛のように重くて動かない。

 息が、苦しい。

 もしかして最近ほとんど休まずに活動していたせい?


 「大丈夫ですか!カイルくん!」

 「だいっ、じょうぶ⋯です」

 「少し座って休みましょうか」

 「はい...」


 さっきまでこんなにキツくなかったのに。

 でも少し休憩したら落ち着いてきた。


 「落ち着きましたか?」

 「はい、少しだけ。今日は早めに家に帰りますね」

 「気をつけてお帰りください」

 「ありがとうございます」


最後まで読んでいただきありがとうございます!


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