第10.5話 カイルという青年 ハドロン視点/ブリランテ視点
◯.5話シリーズです!
わしはブライアン王国の王のことが嫌いじゃ。
普段、商人をしながらブライアン王国の幹部を務めておるのじゃが、この世に命を授かって約70年、こんなにも欲にまみれた王を見たことがない。
これでは召喚された勇者候補が可哀想ではないか。
この間も幹部を呼び出したかと思ったら、あやつは聖女候補となりそうな勇者候補の少女を暗殺するから良い作戦はないか、と言ってきたのだ。
未来ある若者を殺すだと?
断じて許されぬことだ。
なんとかして食い止めねば、そう思ったのじゃが、結局その少女を助けることができなかった。
勇者たちはまだ希望を失っておらぬのか、勇者パーティーとして少女を探し出すそうじゃ。
若いというのは実にいいことじゃの。
じゃが、生きている確率は非常に低い...
あの時、止めておけばよかった。
なぜわしはあんな脳無しに従っているのかわからなくなる。
はぁ、前国王であるエロイカ様の御子息とは思えんな。
今はメルカンテからインコルトの街へ来てほしいと言われ、インコルトの商人ギルドにいる。
わしが到着したときにはパフュートとジェンティーレがすでに待っておった。
「こんにちは、ハドロンさん。貴方もメルカンテに呼ばれていたんですね」
「そうじゃよ。メルカンテは何を考えているのだか。もう少し老人を気遣ってほしいものじゃ」
「確かに。いつも奇想天外なことを思いつきますからね」
ジェンティーレもメルカンテに対して同じことを思っておったとは、意外じゃの。
そんなことを考えておったらメルカンテからアーティファクトに連絡が来た。
『三人とも集まってくれてありがとな。今回は新しい取引先を紹介するよ。今から向かうから待っていてくれ』
新しい取引先か。
メルカンテにしてはやりおるな。
じゃが、その相手がどんなものかによるがな。
数分後、メルカンテが冒険者ギルドのギルドマスターと若造を連れてやってきた。
「よぉ、待たせたな。こいつがカイルだ」
「こんにちはカイルくん。私はアヴァリゼィア王国の商人、ジェンティーレよ。よろしくね」
「わしはブライアン国のハドロンじゃ。老いぼれじゃがよろしくのぉ」
「おいらはヴィンズ王国のパフュートでやんす。よろしくでやんす」
ほお、カイルというのか。
どんなやつなんだろうか。
『鑑定』
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【ステータス】
【名前】 カイル
【職業】 商人
【年齢】 19歳
【種族】 人族
【スキル】 闇魔法Lv2、千里眼Lv5、器用Lv7、体術Lv5、弁術Lv2
【HP】 100/1100
【MP】 350/2000
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これはすごいのぉ。
HPとMPが極端に少なくなっておるのは、変化魔法や幻影魔法を使っているからであろう。
上手く隠しているようじゃが、わしの眼は誤魔化せん。
恐らく名前も年齢も違うのじゃろうな。
王国でも使用者がいる。
ブライアン王国幹部のディアボロや元王姉であり、わしの妻であるユナ、あと勇者候補の誰かも使っておったな。
わしはブライアン王国に反感を持っているからこのことを告発する気は一切ないのじゃ。
しかしこのぼうやは実に面白いのぉ。
これからが楽しみじゃ。
その後、チョーカー型のアーティファクトをぼうやに提供した。
飛び跳ねそうなほど、嬉しそうじゃった。
孫ができたみたいでわしも嬉しかったのじゃがな。
今日は実に有意義な時間じゃったな。
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ブリランテは冒険者ギルドのギルドマスターだ。
かつて、SSランクまで登り詰めた冒険者でもある。
昨日は領主就任式だった。
領主様は女性の方でとても美しかった。
この方ならこの街を変えてくれるかもしれない、そう感じた。
就任式が終わり、ギルドに戻ると最愛の妻であるクレデーレから連絡があった。
カイルという青年がこの街について知りたいらしい。
優しいクレデーレはインフォメーションルームを貸してあげたいのだそうだ。
そういうことが日常茶飯事なので了承した。
冒険者ギルドのギルドマスターであることから、誰かがインフォメーションルームに行くときは同伴しなくてはいけない。
ロビーに向かい待っていると、カイルさんがやってきた。
カイルさんは茶髪で誠実そうな人族の青年だった。
そして彼をインフォメーションルームに案内した。
彼は情報を得たあと、農作物を作ったり売ったりしたいと言い出した。
あまりそういうことに詳しくないので親友であるメルカンテに協力を仰ぎ、野菜の種を得ることができたのだった。
そして今に至る。
カイルさんが商人ギルドを後にし、メルカンテと二人きりだ。
結論、カイルさんは何かを隠している。
まず、アーティファクトを持っていないところが怪しかった。
領主様の命で来ていると最初から言えばよかったのにそれも言わなかった。
「なあ、ブリランテ。カイルのこと、どう思う?」
「カイルさんは何かを隠している」
「やっぱお前もそう思うよな?」
「うん。そもそも、アーティファクト持ってないのはこの世界の住人としてありえない」
「だよな。いくら田舎出身だからっていっても、この世界で生きている限り必ず所持しているはずだからな」
「それに領主様の命で来ているって最初から言えばいいのに」
「それは俺も思った。どうやったら領主様の了承を得ることができるんだよ。領主様自身でない限り無理だよ...な?」
そこまでメルカンテが言った瞬間、パズルのピースが全てつながった。
もしかして、”カイルさんは領主様なのではないか”と。
そうすれば今までの不可解な行動に合点がいく。
「なあ、ブリランテ。もしかしてカイルって⋯」
「ええ、僕も同じことを考えています」
「じゃあ、今すぐにでも呼び出して話を聞こう」
「いや、早まるのは良くないよ。カイルさんが条例を変更したことを報告しに来たら、話を聞こう。その方が無難だ」
「わかった、それでいこう」
メルカンテが帰った後、冒険者ギルドのインフォメーションルームでカイルという人物について調べたところ、そんな人族は存在しないということがわかった。
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