第10話 商人ギルド
ブリランテさんと約束した時間よりも早く広場についてしまった。
広場の近くのベンチに座ってから少し経ったところでブリランテさんがやってきた。
「すみません、お待たせしました」
「僕もさっき来たとこなんで大丈夫ですよ」
「本当ですか!ありがとうございます。じゃあ早速商人ギルドへ向かいましょうか」
「はい!」
中央広場から路地を左に曲がると商人ギルドがあった。
冒険者ギルドからは結構距離がある。
近いものだと思っていたので少し遠くて意外だ。
商人ギルドは木造建築の豪邸のようだった。
「こんにちは。メルカンテはいますか?」
「いらっしゃいませ。ブリランテさんとカイルさんですね。ギルドマスターからお二人を奥へ通すように言われておりますので付いてきてください」
ギルドの受付嬢さんらしき人に案内された。
ここのギルドマスターはどんな人なんだろう?
部屋の中に入るとチャらめで切れ長の目の男性が待っていた。
うわああ、ここにもイケメンがっ!
異世界恐るべし。
「いらっしゃい。ブリランテ、この人が昨日話していたカイルか?」
「そうだよ、メルカンテ。急だったのに対応してくれてありがとね」
「親友の頼みだからな!俺はメルカンテ、インキュバスだ」
「こんにちはメルカンテさん。僕はカイルです。よろしくお願いします」
「で、今日はどうしたんだ?」
「実は、食べ物とか物を作ったり、流通させたりしたいんですけど、どうすればいいのかわからなくて」
「なるほど。食べ物や物を流通させるのはこのギルドに登録すれば簡単にできる。でも作ったりするのは領主様の許可がいるから難しいな」
「あの、それって条例か何かで決まっているんですか?」
「ああ。前の領主様が決めた条例だ。前はヴィンズ王国のやつだったから自分の利益を優先して、一般市民が利益を得られないようにしていたんだ」
なるほど。
だから表立った産業がなかったり、隣国の盗賊が根城を構えていたりするのね。
「前の領主が決めた条例ってことは今の領主様なら変えることができるってことですよね」
「できる。でも今回の領主様は滅多に外出しないらしいから、お願いできないんだよな」
そっか、そういうふうに見られているのか。
今後気をつけよう。
「それなら心配ないです!僕、実は領主様の命令で情報を集めているので」
「あ、そうだったんですね!なら大丈夫じゃないですか?メルカンテ」
「そうだな。それなら大丈夫だ。じゃあギルド登録に移るか」
「よろしくお願いします!」
そして商人ギルドのカードもゲットすることができた。
こんなに簡単に作ってもいいのかと思ってしまうけれど、ギルドマスター直々に発行してもらったから多分大丈夫なんだろう。
「商人ギルドの一員となったからには、他の国の奴らとも交流する。その伝手をいくつか紹介してやるよ」
「良いんですか!助かります!!」
「じゃあそいつらと顔合わせするから少し待っていてくれ」
メルカンテさん、仕事早いな。
異世界は仕事ができてイケメンが多いのかもしれない。
そんなことを考えているとメルカンテさんが戻ってきた。
「よし、準備完了だ。ブリランテ、カイル。会議室に案内するぜ」
会議室は商人ギルドの2階にあった。
「よぉ、待たせたな。こいつがカイルだ」
「こんにちはカイルくん。私はアヴァリゼィア王国のジェンティーレよ。よろしくね」
「わしはブライアン国のハドロンじゃ。老いぼれじゃがよろしくのぉ」
「おいらはヴィンズ王国のパフュートでやんす。よろしくでやんす」
ジェンティーレさんはボブで凛とした佇まいの女性だ。
ハドロンさんは70代ぐらいのおじいちゃんだった。
パフュートさんはふくよかな体型の優しそうなお兄さんだった。
「ここにいる奴らは、全員信頼できる。安心して取引してくれ。必要があれば契約書を用意するからその時は言ってくれ」
「わかりました。本当に申し訳ないんですけど契約書を用意してもらってもいいですか?」
「了解!不安だもんな。商人として正しいからそんなに気にしないで大丈夫だぜ」
「ありがとうございます!」
メルカンテさんめっちゃいい人じゃん。
誰かからステータスを覗き見されているみたいだし、契約書があった方が安心だからありがたい。
「このアーティファクトにサインしてほしいんだが、カイル、アーティファクトは持ってるよな?」
メルカンテさんがアーティファクトを取り出し、画面を差し出してきた。
でもアーティファクトは持っていない。
召喚されたときに配られていないし。
そんなに使えるやつなら配ってほしかった。
いや、今考えても仕方ないか⋯ 。
「実は持っていないんです。つい先日、アーティファクトというものを知ったばかりで」
「そうだったんですか?なら先に言ってくださいよ。冒険者ギルドで用意できたのに」
「すみません。クレデーレさんに説明だけしてもらったんですけど、どこで貰えるかは聞いていなかったんです」
「それなら仕方ないですけど、今度からはちゃんと言ってくださいね。用意するのにもかなり時間がかかるんですから」
「はい...」
あぁ、このインコルトに来てから2回目だよ、怒られるの。
少し落ち込んでいるとメルカンテさんが歩み寄ってきた。
「カイル、落ち込んでも仕方ないぜ。というかここはどこなんだ?商人ギルドだろ?そしてここには各国の商人がいるじゃんか」
「確かに。誰かアーティファクトをお持ちの方はいませんか?」
「ごめんなさいね、持ってきていないわ」
「あいにく、おいらも持ってきていないでやんす」
ジェンティーレさんとパフュートさんは持っていなかった。
すると、ハドロンさんが手を挙げた。
「わしはいくつか持ってきているよ」
「さすがハドロン爺さん!カイルに見繕ってやってくれよ」
「そうじゃな、ぼうやに一番合っているのはこのチョーカー型のアーティファクトだね」
「確かにカイルさんならチョーカーが似合いますね。体にも合っていると思います」
「どうだ、カイル。これにするか?」
チョーカー型のアーティファクトか。
喉仏を変化魔法で作るのは難しかったからちょうどいいんだよな。
「それでお願いしてもいいですか?」
「毎度あり!ぼうやには興味が湧いたからね。また来るさ。フォッフォッフォ」
ハドロンさんからアーティファクトを貰い、身につける。
手鏡で確認すると、案外似合っていた。
少しセクシーな感じがするけど、それもまた味がある。
「よし、身につけたな。契約開始だ。まず、俺と、ハドロン爺さん、ジェンティーレ、パフュートが契約専用アーティファクトに自分のアーティファクトをかざす」
メルカンテさんの言葉どおりに、みんなかざしていく。
「次にカイルがこれにサインをするのと同時にアーティファクトのボタンを押してくれ」
メルカンテさんの言う通りに動く。
私のアーティファクトはチョーカー型なのでボタンを押すことで契約することができるようだ。
また、首につけたことで自分とアーティファクトがつながっているということが感覚として伝わってきた。
「これにて契約完了!これでカイルは俺達4人といつでも売買することができるぜ!」
「ありがとうございます!助かりました!すみません、このアーティファクトっていくらなんですか?」
「それはわしからのお祝いじゃよ。お金は取らんから、これからの活躍を期待しているよ」
「はい...っ!がんばります!」
ハドロンさんって神様なの⋯?
私、めっちゃ人に恵まれているかも。
異世界ってすごいな。
とはいえ、召喚された国には暗殺されかけ、人間ではなくなっちゃっているからなんでもかんでも最高!っていうわけじゃないんだよね...
今も全身が痛いし、体調もすこぶる悪いからね。
3時間に1回は治癒魔法をかけているんだけど、辛いものは辛い。
それでも身の安全や周りに迷惑をかけないために我慢するしかないな。
計画していることが一段落したら、効きそうな薬でも買ってみよう。
「カイル、他に欲しいものはないか?商人ギルドだからなんでもあると思うぜ」
「んー、そうですね。食糧がほしいので、食べ物の種が欲しいです!」
「おー!いいぞ!今は冬だから、春に育つようなのがいいと思うがどうする?」
「それでお願いしたいです!」
「じゃあ、トイトイやミズミズがいいな」
トイトイ?ミズミズ?なんじゃそりゃ?
「実物ってありますか?」
「ちょっと待っててな、今から持ってくるから」
そう言ってメルカンテさんが持ってきてくれた野菜はさっき名前だけ聞いたトイトイとミズミズに加え、クサドというものだった。
トイトイは玉ねぎで、ミズミズはほうれん草、クサドはまさかの春キャベツだった。
美味しいご飯にありつけそうな予感がする!
「じゃあ、この3つの種を10袋ずつ下さい!」
「1袋100粒あるからな。結構な値段になるが大丈夫か?」
「大丈夫です!」
「普通は金貨45枚になるが今日は特別だ。金貨25枚にしておくぜ。今後もよろしくな」
「ありがとうございます!皆さんも今日はありがとうございました!」
みんなに感謝を伝えたあと、私は商人ギルドから出た。
今日はいい買い物ができたな。
もう日が暮れ始めてきたことだし、明日から農作業に取りかかろう。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




