第8話 領主就任式
窓から差し込む光で目が覚めた。
見慣れない天井にまたもや困惑する。
「あれ、なんでここにいるんだっけ?」
ベッドから降りると同時に頭も覚めてきた。
「えっと、ここは異世界で私の領地のインコルトで、母さんが魔王で、国に裏切られて、魔族になってて⋯。夢、じゃないのか」
仕方ない。
これはこれ、割り切ろう。
「おはよ~リア〜。本当に異世界なんだね〜」
返事はない。
リアは夜行性のようで今は寝ている。
水でも飲みに行こうか、とドアノブに触れようとした途端、扉が勢いよく開いた。
「おはようございます!ウミ様!今日は領主就任式ですね!」
「おはようカズナ。うん、頑張ってみるよ」
「ご安心ください!とびっきり可愛くしてみせます!」
「て、手加減してね⋯?」
「むふふ、それはわかりませんよ。楽しみにしてくださいね」
まずは身体から磨こうということで湯浴みをしてもらった。
そのおかげで身体は温々している。
水飲み休憩をしていると毛繕いをしてもらったリアがカズナに膝枕で撫でてもらっている。
少し羨ましく思うのはスキュラになった影響なのかな?
2人をじぃ~っと見つめているとカズナと目があった。
「なんですか〜?はっ!もしやウミ様も撫でてほしいのですか?」
「いや、そんなわけな⋯」
「へぇ~そうなんですね〜」
リアは撫でられてとても気持ちよさそうにしている。
ふふん!羨ましいだろう!と言いたげな目をして。
「な、撫でてほしい、です⋯」
言ってしまった。
やばい顔が熱い。
「では私の膝に横になってください」
おずおずとカズナの膝に横になる。
高校生にもなってこれはどうなんだと思うけれど、素直に受け入れてしまう。
撫でられると眠くなって来るらしいが本当のようだ。
あ、もう眠れそう⋯
眠りにつこうとしたところで扉がまた勢いよく開いた。
「おはようございますウミ様。あと一時間程で領主就任式ですが⋯。これはどういう状況なの?カズナ」
「あ、お姉ちゃん⋯。えっと、いやその⋯」
「何故このようなことをしているのかしら?」
「ごめんなさい。ウミ様の髪の毛が気持ちよさそうで、つい」
「はぁ。わかりました。急いで準備をしておいてください。では30分後に迎えに参ります」
ルズナが呆れながら部屋を出ていった。
「申し訳ありません、ウミ様。身支度を整えさせていただきます」
「うん、ごめんね。お願い」
カズナに髪の毛をハーフアップ編み込みにしてもらい、化粧もしてもらった。
これで準備完了だ。
我ながら可愛いのでは?と自画自賛してしまう。
「めっちゃ可愛いです、ウミ様!みんなも見惚れること間違いなしですよ!」
「本当?そうだと嬉しいな」
他愛のない話をしているとルズナが迎えに来た。
「ウミ様、リア様、カズナ。迎えに参りました。広場へご案内いたします。カズナ、ウミ様の付き人としてしっかりお仕えしなさいね」
「もちろん!」
「では行きましょうか」
ルズナに案内され、ついたのは街の広場だった。
人がたくさんいる。
新しい領主はどんな人物か一目見ようと来たのだろう。
ちなみに屋敷から広間までの短い距離だから歩いていこう!と言ったら、何を仰っているのですか?と引かれてしまった。
領主としての第一印象なのだから威厳を見せなければならないらしい。
よって馬車で来たのだった。
ルズナとカズナに促され、ステージに立つ。
私の姿を見た人々の反応は多種多様だった。
リアを見て怯える人。
謎のキラキラした目線を送ってくる人。
興奮してはしゃいでこける人。
本当にいろいろな人がいた。
「本日はお越し下さり誠にありがとうございます。ただいまより領主就任式を行います」
ルズナの司会により領主就任式が始まった。
「次に領主様による、自己紹介兼挨拶です。ウミ様、お願いします」
軽く会釈して挨拶を始める。
「皆さん、はじめまして。この度、インコルトの新しい領主となりましたウミ ハヅキです。私は魔王の娘ですが別の世界で生まれ育ち、この世界へ勇者候補として召喚されてきました。王国に裏切られたあと、スキュラという魔族になってしまいました。皆さんに嫌われたくなくて皆さんにこの姿を見せたくはありませんでした」
私が言い終わる頃には静寂に満ちていた。
深呼吸1つが響くぐらいに。
「なぜなら自分の姿に自信がなかったからです。恐ろしく、自分ではない姿に。そんなときとある人から自信を持ってと背中を押してもらったんです。それがとても嬉しくて。本当の姿を見せれば信じてくれる人が出てくる、そう気づいたんです。だから今日はこの姿で来ました。こんな私ですがこれからよろしくお願いします!」
深く頭を下げる。
なんとか言い切ることができた。
最初から最後までガッチガチだったような気がするけれど。
顔をあげた瞬間、歓声があがった。
「私はこんな可愛い方に領主になっていただけてとても嬉しいです!」
「俺もそう思います!」
「私も!」
そんな言葉が飛び交う。
正直めっちゃ嬉しい。
でもものすごく力が抜けてしまった。
「これにて領主就任式を終了いたします。領主様のお名前は他言無用でお願いいたします。本日はお越し下さりありがとうございました」
領主就任式は無事成功した。
帰りも馬車だ。
せっかくだから歩きたかったのに。
そんなことを考えながら馬車に乗っているとカズナが満足げに話しかけてきた。
「ウミ様かっこよかったですよ!というかあれ私が言った言葉ですよね!あの言葉を聞いた時すごく嬉しかったです!」
「うん。カズナの言葉を聞いて自分に自信が持つことができたの。だからありがとう」
「えへへ、そうですか〜?」
カズナは嬉しそうに笑っている。
今なら聞いても大丈夫そうだ。
「ところでカズナ。私、このあとの用事はある?」
「ございません。どうかなさいましたか?」
「怒らない?」
「怒りませんよ」
「実はこの街を変化魔法を使って1人で探索してみたいの。行ってきてもいい?」
「いいですよ。ついていきたい気持ちは山々ですけど、ウミ様のやりたいことが最優先ですから!」
「いいの?本当に」
「ですが変化魔法を使用中に体調が悪くなったら、すぐ使用するのを中止してくださいね?」
「うん!」
馬車の荷台に乗っていたルズナが後ろを振り向いた。
「ウミ様、カズナ着きましたよ」
「ありがとうルズナ!」
馬車から降りると私は心踊る思いで屋敷へと向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




