↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/96

Case.95 推し活をしよう!

……………………


 ──Case.95 推し活をしよう!



「それでですね。推してる子がいるんですよ~!」


 俺たちの事務所でそう話すのは、男夢魔(インキュバス)だ。

 名前はヴァレスというらしい。


 男夢魔(インキュバス)にしてはやや幼く中性的だが、多くの男夢魔(インキュバス)がそうであるように一応魅力的な外見をしている。


「ほらほらほら! この夜ノ街アソビちゃん! 可愛いでしょう!」


「あー……」


 俺とカリギュラに見せられたスマートフォンの画面にはキラキラした二次元の女の子が映っている。

 にこにこ笑うその女の子はハスキーな声で『おいしいハムカツのハムの厚さはどれくらいか』について熱弁している。


「……なあなあ。そろそろ本題に入ってくれないか~?」


 カリギュラが呆れたようにそう言い、俺もその横で頷いた。

 さっきから俺たちは夜ノ街アソビなる知らないVtuberについて延々と話を聞かされているのだ。

 時計を見たがすでに15分は過ぎている。


「そ、そうだね。本題に入ろう」


 ごほんと咳払いして男夢魔(インキュバス)のヴァレスは真剣な表情を浮かべる。


「今度ですね。アソビちゃんのサイン色紙とグッズ販売があるんですよ。俺、それに行きたいんです!」


「行けばいいだろ。……まさか転売用にグッズを多く買いたいから手を貸せとかじゃないだろうな?」


「そんなことしませんよ! けど、その、グッズ販売が行われる会場に入れるのが、どうも登録悪魔だけみたいなんです」


「お前、非登録悪魔なのか? 何か前科が?」


「違います、違います! 申請中なんです! だけど、登録されるまで最低でも4カ月かかるらしくて……。グッズの販売は1週間後なんです……」


 ぐすっと泣いてそう言うヴァレス。


「じゃあ、俺様たちにグッズを買ってこいと?」


「いや。条件がまだあって現地でアソビちゃんクイズに答えないとグッズは買えないんですよ。それ、便利屋さんでも無理ですよね?」


「そんな訳の分からんものは無理だな。わはは!」


 グッズの購入代行でもないとすれば、何の用事でこいつここに来たんだ?


「で、ですね。実は非登録悪魔でも人間か登録悪魔が同行していれば、会場に入れるらしいんです。なので、一緒に会場まで来てほしいんです!」


「そういうのは友達に頼んだ方がいいんじゃないか……?」


「そ、その、付き合ってくれる友達がまだ地球にはいなくて……」


 俺が助言するとヴァレスは肩を落としてそう返す。


「しかし、俺たちもいろいろ依頼を受けてきたけれど、グッズの販売会に同行してくれってのは初めてだな……」


「こういう依頼って、いくらが相場が分からんな。いくらで受ければいいんだ?」


 俺とカリギュラも今回の依頼には困惑顔であった。


「とりあえず特に俺たちがやらなければいけないことはなさそうだし、拘束時間で計算していいか? 1時間2000円で」


「ええ! 受けていただけるなら喜んで払いますよ!」


 俺の提案にヴァレスは笑顔で同意した。


「で、グッズの販売会はどこでやるんだ?」


「熊本市内のデパートですよ。当日に現地で待ち合わせましょう」


「了解だ。では、1週間後に」


 というわけで、俺たちはヴァレスからグッズの販売会に同伴するという依頼を受けたのであった。



 * * * *



 そして1週間後。


 俺たちは熊本市内にあるデパートに向かった。


「便利屋さん! こっち、こっち!」


 普段はさほど賑わわないはずの市内のデパートは、今日は大勢の人がいた。

 それも客層のほとんどはデパートで買い物なんてしそうにない悪魔である。


「早速列に並ぼう、便利屋さん!」


「はいはい」


 俺たちはヴァレスと一緒に夜ノ街アソビのグッズの販売会に並ぶ列に加わった。


「なあなあ。聞いてなかったけど、アソビってVtuberは熊本と何か縁があるのか?」


「え? そこから?」


「俺様たちは興味なかったからな」


 ヴァレスがぎょっとするのにカリギュラがけらけらと笑ってそう言う。


「アソビちゃんは悪魔のVtuberなんですよ。熊本に縁があるも何も熊本在住で」


「へえ!」


 悪魔がVtuberをやっているという事実に俺たちはびっくりする。


「種族は?」


「それは分からないです。けど、彼女の歌声は凄いんですよ~! もう彼女の声が俺は大好きで!」


「歌声が、ね」


 アバターもキラキラして可愛い女の子だったが、配信者としても割と凄いのか。

 まあ、アイドルとかVtuberとかに興味はないけれど。


「死ぬ前に聞くとしたら彼女の曲って決めてるぐらい入れ込んでます。今回のグッズ販売ではサイン色紙の他にアクスタやぬいぐるみがあるんですが、俺が狙っているのはこの会場限定のCDです!」


「何か凄いのか、それ?」


「当然! アソビちゃんの生収録音声と限定ソングが収録されていて、お値段は5万円! もうアソ友なら買うしかないって感じのグッズです!」


「そっか、そっか」


 ヴァレスの言葉にカリギュラは心底興味がなさそうだった。


「いや。もう本当にこれのためにここまで来たって感じですよ。CDを再生するための環境も整えて、バイトして高いオーディオ機器揃えて……ああ、楽しみ!」


「推し活ってのは金がかかりそうだな……」


 その情熱は精神衛生にいいのだろうが、あいにく金がかかる趣味は金欠の俺たちではやることはできない。


「なあなあ、阿賀野。俺様もVtuberで食って行こうかな。ぼろい商売みたいだし!」


「冗談言うなよ。才能がいるんだぜ、こういうのはさ」


 デリカシー皆無のカリギュラでは毎日炎上騒ぎだろう。


「夜ノ街アソビさんのグッズ販売始まりまーす!」


 そして、デパートのスタッフがそう言い、ついにグッズ販売が始まった。


……………………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
確実になにか起きる
絶対何か起こる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。