Case.93 盗人猛々しい
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──Case.93 盗人猛々しい
マモンから盗みを働いたとされる悪魔トルグラムを追って地下に入った俺たち。
俺はM27 IARアサルトライフルに装着したタクティカルライトの明かりをつけ、周囲を照らしながら慎重に地下を進んでいく。
「カリギュラ。ブービートラップには気を付けろよ」
「はいはい」
軍政局がこういう場所を手入れしないのは、住民が武装しているからと言うことも理由のひとつにある。
俺たちはハチの巣にされてもどうにかなるが、普通の人間は死ぬ。
「さあて……トルグラムはいるやら……」
地下はスライムみたいな魔獣もいれば、風雨をしのぐために潜り込んだ悪魔もいる。
悪魔の方はサタデーナイトスペシャルみたいなちゃちな銃火器だが、一応は銃火器で武装している。
刺激すると藪蛇になるので、俺たちは刺激しないように通過していく。
素早く死角をクリアリングしながら進み、ブービートラップに警戒。
「クソ。クレイモア対人地雷まで仕掛けてある」
「うへえ」
手榴弾とワイヤーだけの簡易なトラップでも厄介なのだが、そこに軍用の対人地雷まで混じってやがる。
俺たちは鉄球でハチの巣になっても、そりゃ死なないけど痛い。
回復するまで下水のドブだまりに寝ているわけにもいかないし。
「クリア。進むぞ」
「合点」
俺たちは進み続け、そして地下空間でトルグラムを探した。
「阿賀野。汚臭の中から悪魔の臭いがする。オーガの臭いだが……」
「オーケー。そっちに行ってみよう」
今のところ、トルグラムの手がかりは地下にいるということだけだ。
このまま闇雲に探し続けても、時間の無駄だろう。
「阿賀野。臭いはオーガだけではないようだ。複数の悪魔がそばにいる」
「まさかとは思うが……」
「ああ」
俺たちはそれからやや開けた空間へと踏み込んだ。
そこで一斉に俺たちに向けて銃口が向けられる。
アサルトライフル、機関銃、果てはグレネードランチャーの銃口まで一斉に。
「よう。俺のことを探っているみたいだな、ええ?」
そう言って声をかけてきたのは、他でもなくトルグラムだった。
やつはアサルトライフルを手に、俺たちの方を睨むように見ている。
「畜生。上のオークが知らせたな? あの野郎、金貰っておいて……」
「どうする、阿賀野? 俺様とお前なら殺すのは簡単だが話を聞くんだろう?」
「そうだな。それが困りものだ」
カリギュラが言うように殺すだけならば苦労しない。
だが、トルグラムには実際に盗みを働いたのかを確かめる必要があったし、マモンの方も生け捕りをご指定だ。
「落ち着け。お前を殺しに来たわけじゃない」
とりあえず俺はアサルトライフルから手を放し、両手を広げて見せる。
「俺たちはマモンの使いだ。マモンはお前が自分の宝物庫から盗みを働いたと主張しているが?」
「ああ? だとしたらどうだってんだ? ここは地球だ。地獄の国王がどうこう言おうと関係ねえ」
「つまり盗みを認めるのか?」
「はははっ。そうだよ。あいつの宝物庫からがっつり盗み出してやった。だが、俺は捕まらねえ。お前らはここでハチの巣だ」
これで盗みを認めたわけだが、生け捕りにするにはどうしたものか。
「カリギュラ。周囲の連中を殺さないぐらいに焼けるか?」
「任せろ。だが、トルグラムはどうする?」
「俺が制圧する。雑魚は任せた。やれ」
「合点!」
俺のその合図とともにカリギュラが俺たちを取り囲む悪魔たちに向けて一斉に炎を放った。
悪魔たちは尻尾や股間が炎に包まれ、悲鳴を上げる。
「てめえ! 何を──」
「そらっ!」
俺はトルグラムに向けて突撃し、やつが引き金を引く前にタックルをかます。
トルグラムは吹き飛ばされ、壁にぶつかったのちに地面に倒れた。
「クソ!」
やつは手から離れたアサルトライフルに手を伸ばすが、俺はそれを遠くに蹴りやる。
「抵抗するなら手足の一本くらいはなくなってもいいとみなすからな」
俺はそう言いトルグラムの頭部に銃口を向ける。
「マモンに引き渡されるぐらいなら死んだほうがマシだ! あいつが盗人に何をするのかお前は知らないだろう!」
「知らないし、興味もない。地獄のトラブルは地獄で解決してくれ。地球に持ち込んでくれるな」
「畜生!」
俺はトルグラムを後ろ手に結束バンドで拘束し、無理やり立たせた。
「カリギュラ。撤退だ。行くぞ」
「こいつらどうする?」
「ほっとけ。時間の無駄だ」
「了解」
俺たちはトルグラムの取り巻きは放置し、トルグラムだけを連行していった。
地上までやつを引きずり上げてから、俺とカリギュラはやつを囲む。
「さて、トルグラム。お前が盗んだのは黄金の招き猫だな?」
「それ以外にも盗んでやったよ! お宝を山ほどな!」
「開き直りやがって。だが、正確に答えろ。盗んだ招き猫は1体か? 2体か?」
「ああ? あんなトンチキなものが2体もあるわけねえだろ?」
「そうか」
やはり黄金の招き猫の片方は本来マモンのものではない。
返してもらう必要があるな。
「お前はマモンに引き渡す。俺たちも取り戻したいものがあるのでな」
「わはは。地獄の国王、それも強欲のマモンが自分から盗みを働いた悪魔に何をするのか楽しみだな!」
俺とカリギュラがそう言うとトルグラムは顔を青ざめさせていた。
若干気の毒に思わなくもないが、そもそも盗み自体がよくないことだ。
「さあ、来てもらおうか?」
さて、あとはこのトルグラムをマモンに引き渡して黄金の招き猫を取り戻すだけだ。
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