Case.88 消えたゴールデンキャット
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──Case.88 消えたゴールデンキャット
俺たちの元に舞い込んだ黄金の招き猫捜索という依頼。
「えーっと。金元さん、まずはお話を整理させてもらってもいいですか?」
依頼主は金元美香さん。
今日の朝に事務所を訪れ、開口一番に黄金の招き猫を探していると言った。
「まず、この招き猫がなくなったのはいつでしょうか?」
「4日ほど前に空き巣が入って盗まれたんです。防犯はしっかりしていたつもりなんですが、それを潜り抜けて盗まれて……」
「その際に他に盗まれたものはありませんか?」
「ないんです。犯人は最初からあの招き猫が目的だったんですよ」
「キャッシュカードや現金には手付かずで?」
「ええ。そうです」
ううむ。金元が言うことが正しいなら、犯人は本当に黄金の招き猫を狙ったようだ。
「では、次に憲兵には通報しましたか?」
「しましたよ。けど、彼らは事件が多くあるから今は無理だって言って、全然捜査してくれないんです」
まあ、軍政局もサンドマンやラプラスみたいな大物も野放しな状態で招き猫を探してくれてって依頼には応じられないか。
「分かりました。では、黄金の招き猫の存在を知っていたのは何人ほどでしょう?」
「それは……結構な人数になりますね。何せ我が家の福の神でしたから」
「福の神、ですか?」
「そうです、そうです。あの子が家に来てからと言うもの、我が家の景気は上向きで」
「失礼ですが、ご職業は?」
「小さな骨董品店を営んでおります。と聞くと、全然儲かっていなさそうでしょう?」
「いえ。そうとは……」
「事実、あの子が来るまでは廃業寸前でして。物好きなお客さんがひとりだけ熱心に通ってくださるだけで、いつも店は閑古鳥が鳴いていましたから」
金元はそう言って話し始める。
「それがある日、あの子がうちに来てですね。それからというもの、本当に商売繁盛なんですよ。たまたま安く買い取った品が実は名工の品だって分かったり、それを買い求めて大枚をはたく好事家がやってきたりと」
「ほお~! それは景気がいいな!」
「そうなんです、そうなんです。だから、あの子は大事にしていたんですが……」
カリギュラが興味を示し、金元が視線を落とす。
「あの子が盗まれてショックなんですよ。もしかしたら、あの子にはもうすっかり愛着がありまし、あの子が盗まれたせいで景気がまた落ち込むんじゃないかと……」
そう言って落ち込む金元。
「そもそもその招き猫はどこから?」
「あるお客さんが持ち込んだんです。値のある品だと言って。私も一目見て気に入ってですね。確か200万くらいで買い取りました。お客さんもご満足されて、私もいい品が手に入ったなって喜んで」
「お客は悪魔? それとも人間?」
「ええっと。悪魔の方でしたね。確か……種族は……ヤギの角が生えた方でしたが、顔は人間のそれでした」
「ふむ。悪魔が持ち込んだ幸運の招き猫が盗まれた、と……」
「そういうことになります。どうか見つけていただけないでしょうか?」
困り果てた様子で金元は俺たちにそう頼み込んだのだった。
「分かりました。まずは金元さんのお店に向かいましょう。現場を見ないと分からないこともありますので」
「ええ。ここから遠くはありません」
というわけで、俺たちは黄金の招き猫探しのために金元の営む骨董品店を目指した。
* * * *
金元の骨董店は確かにそう遠くない場所にあった。
車で20分程度で到着した。
「ここです」
そこには『骨董品の金元』という看板が下げられていた。
なかなか古い店舗のように思えるが。
「お店は地獄戦争以前から?」
「そうです。私の祖父の代からやっているんですよ」
「それは歴史がありますね」
俺はそう言って感心しながら店の入り口を潜る。
「お帰り、美香ちゃん。その人が便利屋さん?」
「そう、探してくださるって」
店内には金元さんと同じくらいの年齢の男性がいた。
「私の旦那の裕司です」
「となると……」
「ええ。夫は婿養子なんです」
先祖代々続く店なら婿養子も取るかと納得。
それだけこの店が立派であることも意味し、他に盗られたものがないという情報が気がかりになる。
「本当に他のものは盗まれなかったんですか?」
「はい。他にも値打ちのある品物はあったんですけどね」
犯人はこの歴史と価値のある品が眠る店で、どういうわけか黄金の招き猫だけを盗み出した。
売りに来たのが悪魔というのも気になる。
地獄に何かしらの縁がある品なのだろうか……?
「カリギュラ。臭いの方はどうだ?」
「古びた品の臭いだらけだな。今にもカビの臭いがしそう」
「真面目にやってくれ。悪魔や金元さんたち以外の悪魔の臭いは?」
俺がそう尋ねるとカリギュラはすんすんと鼻を鳴らす。
「するな。これは……狐の臭いだ」
「狐……?」
「ああ。妖狐の類だな。そいつの臭いが濃く残っている」
カリギュラは臭いからそう言う。
「金元さん。あの監視カメラの映像には何か残っていませんか?」
「それがあの監視カメラ、実は今ちょっと壊れてて……すぐに直すつもりだったんですけど……。ああ、でも他の防犯装置はしっかししているんですよ?」
「そうでしたか……」
となると、犯人は防犯システムについても知っていた可能性があるな。
「阿賀野。臭いはまだ濃い。俺様の鼻ならば追えると思うぞ」
「待て。まだここで調べることがある」
俺はそう言って金元たちの方を向く。
「その招き猫を売ってほしいと言う悪魔はいませんでしたか? あるいは人間は?」
「以前、ひとりだけいましたね。けど、値段を聞いたらすぐ帰ってしまいました」
「その人物は妖狐だったり?」
「いえ。普通の人間の女性客でしたよ」
「ふむ。従業員はご夫婦だけですか?」
「はい。忙しい仕事でもないので、バイトとかもいません」
「分かりました」
俺は金元夫婦への聞き取りを終えてカリギュラの方を見る。
「ここに他に手がかりはなさそうだ。臭いを追おう」
「合点」
そして、俺たちは骨董品店を出た。
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