Case.87 猫ネットワーク
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──Case.87 猫ネットワーク
俺は猫又に猫のネットワークがサンドマンやラプラスという存在を捉えていないかを尋ねた。
もちろん、答えがポンと出てくることは期待していない。
ただヒントになるような情報があればと、そう思っただけだ。
「にゃにゃ。ラプラスというのは知らないけれど、サンドマンなら聞いたことがあるよ。人に頼まれて人や悪魔を攫う誘拐請負人だろう?」
「おお! そいつについて何か情報はないか? 俺様たちはそいつを探しているんだ」
カリギュラが猫又の言葉にそう尋ねる。
「猫たちの間ではサンドマンというのは悪魔と人間が手を組んでいる組織だと言われているよ。悪魔の方はなかなか高位の悪魔で、人間の方は地獄戦争のときに地獄側についた連中だって話さ」
「地獄側に付いた? まさかヘルファイア・カルトか?」
「さあ、そこまでは。やつらはあたしら猫まで攫うわけじゃないみたいだからね。猫たちは興味がないといえば興味がないのさ」
「ふうむ」
猫又の言葉に俺たちは顔を見合わせる。
ヘルファイア・カルト。
以前、ラプラスに関する事件で不意に現れた人類の裏切り者。
それがサンドマンにも関係しているのだろうか?
「軍政局には今のところ何とも言えんな」
「そうだなぁ。もうちょっと何かあればいいんだが」
サンドマンの情報を手に入れて軍政局に売ろうという俺たちの計画は、残念ながら暗礁に乗り上げてしまった。
「なあなあ。お前らにこれからサンドマンについて調べてもらうことはできないか? 報酬はあの猫のおやつでどうだ?」
「にゃにゃ。別にいいよ。調べておいてあげよう。ただし、ちゃんと成果が出るという保証はないけれどいいかい? 猫は気まぐれだからね。犬みたいには動かないのさ」
「頼りないなぁ」
猫又の言葉にカリギュラは溜め息を吐く。
「さて、俺たちはそろそろ戻ろうぜ。ここは確かに地図アプリには表示されてない場所だから、帰るにはまたお前についていかないといけないんだろう?」
地図アプリを俺は開いているが、現在地の測定不能とエラーが出ている。
どうやら本当にここは熊本であって熊本ではない場所らしい。
「そうだね。やみくもに進むと変なところに出るから、ついておいで」
俺たちは帰り道も猫又についていき、無事に迷い家のある場所から脱した。
「こういう不思議な空間は他にもあるのかね……」
「この土地には地獄が覆いかぶさったんだ。不思議な場所のひとつやふたつはあるものだよ。にゃにゃにゃ」
俺が背後を振り返っても、もう迷い家は見えない。
その様子を見ながら呟くのに、猫又はそう言って笑ったのだった。
「地獄が覆いかぶさった、か。確かにそうなんだろうな」
地獄は一度は熊本を覆い、支配しようとした。
地獄戦争に日本が敗れていれば、熊本だけではなく九州全土、いや日本全土が地獄に支配されていたかもしれない。
今でもその残り火が僅かに燃え続けている。
「そう言えばお前、迷い家に辿り着いたら裕福になるって言っていたよな? 俺様たち、これからリッチになれるのか?」
「いや。裕福になれるのは無欲な人間だけらしいから、いつも欲丸出しの俺たちには何の恩恵もないだろうな」
「ええーっ!?」
わくわくしていたカリギュラの言葉を俺が否定する。
昔話とか伝承の常だが、欲深い人間がいつだって幸運に見放されているのだ。
物欲センサーとはよく言ったものである。
「クソ~! なあ、猫又。お前は何か稼げる話を聞いていないか?」
「あいにくあたしは福や富を招く招き猫じゃないよ。だけど、噂に聞くには黄金の招き猫というのが盗まれたとかで、持ち主が大金を払って探しているそうだ」
「ほう! 黄金の招き猫か!」
カリギュラがその言葉に目を輝かせる。
「カリギュラ。サンドマン以上に何の手がかりもないんだから、そんなもの探せないぞ。分かってるよな?」
「けど、見つけたら大金ゲットだぞ!」
「そりゃそうだけど……」
「探そうぜ、阿賀野!」
カリギュラはやる気満々だった。
こういうときはやる気に満ち溢れてるよな、こいつ。
「依頼が来たらな。俺たちにも招き猫を探してくださいって依頼が来たら探す」
俺はそう言って事務所へと戻った。
* * * *
その翌日のことである。
俺たちの前にはややふくよかな中年女性が座り、こっちを見ている。
着ている服はブランド品で、バッグも有名なブランドのものだ。
しかし、その表情には焦りの色が見られる。
「ですので、あなた方にこの招き猫を探していただきたいのです」
依頼主が差し出した写真には黄金の招き猫。
そう、本当に俺たちに黄金の招き猫捜索の依頼が来たのである。
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