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Case.84 迷子の幽霊

……………………


 ──Case.84 迷子の幽霊



 翌日、俺たちはサンドマンの拠点だったという廃校を訪れた。


「カリギュラ。臭いの方はどうだ?」


「んんー。薄いけど、一応悪魔の臭いがする。だけど、悪魔の種類を特定できるほど濃くはない。何とも言えないな」


「そうか……」


 俺たちは廃校内を捜索し、手がかりが残っていないか調べている。

 カリギュラは臭いを追い、俺は他の手がかりを探す。

 一度は憲兵が調べた場所だが、見落としがあるかもしれないと慎重に探った。

 前にラブホテルの廃墟を調べたときには、憲兵にも見落としがあったからな。


「しかし、学校の廃墟ってのは不気味だな……。幽霊とか出そう……」


「わはは! アンデッドが湧きそうな場所ではあるな! 俺様も映画でこういう場所にアンデッドが湧くのを見たことがある!」


「そうそう。学校の七不思議とかそういうの怖いよな、マジで」


「別に怖くはないだろ。お前、アンデッドが相手でも死ぬことないし」


「アンデッドってどこか不気味じゃん」


 アンデッド──。


 魔獣であるスケルトンやゾンビは割とまだ平気なんだけど、悪魔であるゴーストの類は苦手だ。

 いや、ゴーストも銃弾で殺せないわけではない。

 地獄戦争のときにもゴーストは山ほど倒した。

 軍事的な脅威としては、ゴーストはそこまでではないのだ。


 けど、やっぱりゴーストは、その、怖い……。

 連中、不気味だし、昔見たホラー映画を彷彿させるし……。


 だけど、カリギュラには恥ずかしいので正直に言っていない。

 あいつに話したら3週間はこのネタで馬鹿にされそうだからな。


「しかし、やはりこれと言った手がかりはなさそうだな……」


 俺たちは高校の校舎全体を見て回ったが、臭いにせよ、他のものにせよ、サンドマンの身元を特定したり、ここからどこに移動したかを突き止められるような情報は見つからないように思われた。


「おい、阿賀野。ゴーストの臭いがする」


「からかうなよ。俺がアンデッドが苦手だからって……」


「冗談で言っているわけじゃない。本当にゴーストの臭いがするんだ」


 カリギュラはそう言って鼻をすんすんと鳴らす。


「……どこからだ?」


「上階からだな」


 俺たちは今校舎の2階にいる。

 3階部分は地獄戦争の際の砲爆撃で破損しており、立ち入りが困難な場所だ。


「3階か。分かった。行ってみよう」


「おう!」


 俺たちは破壊されている3階に向けて壊れかかった階段を慎重に上る。

 天井が崩れ、床が抜け、歩きにくい場所を俺たちは進んでいく。

 瓦礫の山が広がる景色は見るも無残だ。


「カリギュラ。問題のゴーストは有害なタイプか、それとも無害なタイプか?」


「分からんが、あまり敵意のある臭いはしない」


「了解」


 俺は念のためにHK45自動拳銃を抜く。


 ゴーストにも銃弾は通じる。

 ゴーストの核となっている魂の部位──核を撃ち抜けば、やつらは死ぬ。

 ただし、心臓より小さな標的になるので撃ち抜くのは大変だ。


「こっちだ。まだ若いゴーストのようだな。そんな感じの臭いだ」


「慎重にやろう」


 俺とカリギュラはカリギュラが先頭に立ち、俺がやつに続いて進んだ。

 廃墟になった教室がいくつも並び、放置された机や椅子が散らばっている。


「いたぞ」


 俺たちはそんな廃墟と化した教室の中にゴーストの姿を見つけた。

 少女の姿をしたゴーストだ。

 俺たちに気づいている様子はなく、俺たちに背を向けていた。


 そして、何とも不気味なことに、ぐすぐすと泣いていた。

 廃墟と化した学校の教室で泣いている少女のゴースト……。

 ホラー感が強すぎる……。


「おい、お前!」


 しかし、カリギュラは全くホラー感を感じなかったのだろう。

 やつはずかずかとゴーストに歩み寄り、声を上げて肩を叩いた。


「ここで何してる?」


「あなたは……」


 そこでゴーストが振り返った。

 ホラー映画に出てくる幽霊みたいに青ざめた顔色をしていて、前髪がぼうぼうと目元付近まで伸びていて顔はよく見えない。

 服装は赤いワンピースであり、その点はポピュラーな白いドレスの幽霊とは違った。


「俺様たちはカリギュラと阿賀野だ。ここにいた誘拐請負人について調べていた。お前はサンドマンの仲間か?」


「サ、サンドマン……?」


「どうなんだ? ええ?」


「え、えっと……」


 カリギュラがぐいぐいとゴーストの少女を問い詰める。

 ゴーストの少女は押されに押され、おどおどとしている。


「カリギュラ。まずは事情を聞こうぜ」


 俺もこんなに怯えた反応をされると不気味というより可哀そうになってきた。

 俺はカリギュラの横に立ち、ゴーストの少女を見る。


「お前、名前は?」


「は、花子……」


 花子って。学校の七不思議にあるトイレの花子さんかよ。


「分かった、花子。どうしてここにいる? ここは見ての通り廃墟だが……」


「……私、迷子なんです……」


 花子はそう言い、顔を俯かせた。


「迷子~?」


「事情を聞かせてくれ。それから俺たちからも聞きたいことがある」


 もしかすると、この花子はサンドマンたちを見ているかもしれない。

 俺たちは僅かにだが、そう期待していた。


……………………

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