Case.79 誘拐事件
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──Case.79 誘拐事件
「サンドマン、ですか……」
現場に到着した憲兵──石川大尉たちは、俺が拘束したふたりの悪魔を連行させ、現場に落ちている空薬莢を調べていた。
「使用された銃弾は口径7.62x39ミリ弾。しかし、薬莢のヘッドスタンプには口径以外に情報はなし。この手の銃弾は最近地獄から流入しているものですね」
「サンドマンは悪魔だって話もあるが」
「今のところは何も分かっていません。少なくとも憲兵隊としてはサンドマンについて詳細な情報を把握していません。分かっているのはサンドマンを名乗るものがプロの誘拐請負人だということだけです」
俺が言うと石川はそう返す。
「そもそもサンドマンを名乗る誘拐犯が同一とも限らないのです。サンドマンはただの誘拐犯の間で流行りの名前なのかもしれません」
「可能性はある。まだ同一人物、または同一悪魔として特定できる材料はない。やつらはほとんど証拠を残さない」
「ええ。捕まえてもあの悪魔たちのようにSNSで集められた下っ端で、ろくな情報は持っていない。困ったものです」
闇バイトの類で集められた悪魔や人間たちが、サンドマンの指揮下で動いているというわけである。
ここでアサルトライフルを乱射した連中もただの雇われである可能性があった。
「これから憲兵としてはどうするつもりだ?」
「我々としても捜査は行いますが、この街は事件が多すぎる。我々のできることは限られます。できればあなた方にも捜査に参加していただきたい。報酬は支払いますよ」
「分かった。手を貸そう」
俺としてもエリザベスが護衛対象だったとはいえ、阻止できなかった誘拐だ。
報酬云々もあるが、協力しておきたい。
「まずどこから手を付けますか?」
「誘拐だった場合、身代金にせよ他の要求にせよ、犯人側から接触があるはずだ。お前たち憲兵はそっちを当たってくれ。こっちは以前サンドマンを雇ったことのある連中を当たってみる」
「分かりました。では、よろしくお願いします」
こうして、俺たちは手分けして行動することに。
俺は自宅に戻り、そこでカリギュラと合流。
「カリギュラ。新煉獄組の連中のところに乗り込むぞ。今回は穏便に」
「わはは。けど、フル武装で行くんだろう~?」
「それはもう。ヤクザの事務所に乗り込むときの礼儀作法だ」
「合点!」
俺たちはそう言葉を交わし、武装していく。
俺はいつものM27 IARアサルトライフルを武器庫から持ち出し、カリギュラはモスバーグスM590散弾銃を装備。
チェストリグに弾薬を詰め込んだら、作戦開始だ。
俺たちは軽トラを運転し、新煉獄組の事務所へ。
事務所の前には見知ったワーキャットたちがおり、俺たちが来ると明らかにビビっていた。
「べ、便利屋!? こ、今度は何しに来た……?」
「話を聞きに来ただけだ。そう身構えるな」
「そんなフル武装で言われても……」
「いいから丸山って男を出せ。前にここにいるのを見たぞ」
丸山平太は旧煉獄組にいた構成員で、俺が2回この事務所に押し入ったときに2回とも目撃している。
そして、丸山はサンドマンを雇って人質ビジネスに関与していた疑いがあった。
疑いがあったというのは、証拠不十分で憲兵が起訴しなかったというだけで、俺とカリギュラは丸山がサンドマンとつるんでいたのを知っている。
「ま、丸山の兄貴だな。待ってくれ」
そこでワーキャットのひとりがスマートフォンを取り出して連絡を取る。
オーケーが出たらしく、ワーキャットは道を開けて俺たちを通した。
そして、俺とカリギュラはそのまま事務所の中へ。
「よう、便利屋。王貴人の姉御ではなく俺をご指名らしいな」
丸山は中肉中背でスキンヘッドかつ眉毛もない男だ。
当然ながら肌には入れ墨がびっしりである。
「丸山。お前、以前サンドマンって連中とつるんでただろう? 情報を寄越せ」
「おいおい。いきなりなんだよ。その件は不起訴になったんだぞ」
「知ったことか。お前がサンドマンに金を送っていたことは部下が吐いてるんだ」
「その証言は拷問で引き出したものだろうが」
「拷問じゃない。強度の尋問ってやつだ。なんなら、ここでお前相手に再現してやってもいいんだぞ?」
俺とカリギュラはこいつの部下だった男を尋問して丸山がサンドマンに金を渡していたことを把握した。
だが、憲兵隊はその尋問は法廷で証拠にできないとして、丸山は不起訴になったのだ。
「おうおう。俺様たちはお前が不起訴になろうと縛り首になろうと構わんのだ。今ある事件を解決できれば、それでいいのでな。阿賀野が言うようにお前の部下にやった尋問をここで再現してやろうか?」
カリギュラがここで炎を手に浮かべてにやりと嗜虐的に笑う。
丸山が助けを求めるように周囲を見るが、誰も動かない。
動けば相手が銃を抜くより早く俺が射殺するというのが分かっているようだ。
「わ、分かった。サンドマンの情報が必要なんだな?」
「最初からそう言っているだろう。情報、持っているのか?」
「あるにはある。言っておくが今は俺はやつらとは切れているからな」
「それは結構なことだ」
今もサンドマンと繋がっていて、今回の誘拐にも関わっているなら、もうこの事務所を吹っ飛ばすしかなくなる。
こいつらオクソールに銃火器密輸とまるで懲りてないからな。
「やつらの拠点を一度訪れた。連中が根城にしていたのは地獄戦争で破壊され、今は使われていない高校の校舎だ。場所を教える」
そう言って丸山は俺たちに学校の住所を教えた。
「結構。他に何か情報は持っていないか? 連中の特徴とか」
「俺も顔を合わせたわけじゃないんだ。連中は俺に会うときも覆面をしていたから。だから、それだけ用心深いってことぐらいしか言えないな」
丸山は本当に情報はないらしく、力なく首を横に振った。
「そうか。世話になったな」
「もうトラブルは起こすなよ!」
俺とカリギュラはそう言い、新煉獄組の事務所を出る。
「さて……」
「早速、乗り込むか、阿賀野?」
「まだだ。今回は人質救出っていう慎重な行動が求められる。先に石川大尉にこの件を報告し、やつの方で何か進展があったかを確認しよう」
「了解。面倒な仕事になりそうだ!」
「全くだな」
俺たちはメアリー救出のために石川と合流することを目指し、憲兵隊司令部へと向かった。
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