Case.78 サンドマン
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──Case.78 サンドマン
メアリーが拉致された。
現場に残された手がかりは地面に転がる空薬莢とエリザベスたちを尾行していたふたりの悪魔の男たち。
「後ろを向いて跪け。抵抗しようと思うな。俺はできれば殺したくはないが、いざってときは躊躇わないぞ」
「クソ」
俺は銃口を向けたまま悪魔たちを跪かせ、後ろ手に結束バンドで拘束する。
それから首根っこを掴んで立たせ、路地裏に引きずっていった。
「まず聞くが、お前たちの目的は何だ?」
「クソくらえ」
オーガの男に問うが、やつはそう言って軽薄に笑う。
「状況が分かっていないみたいだな」
俺は拳でオーガの顔面を殴りつける。
やつは呻き声を上げて倒れようとするが、俺は倒れることを許さず引き上げる。
それから俺はマーマンの方を向いた。
「今度はお前に聞く。お前たちの目的は何だ? 答えるまでこいつをぼこぼこにする。こいつが死んだら、次はお前を同じように殴り倒す」
「ま、待て! それは……」
「質問への答え以外は受け付けない」
俺は今度はオーガの腹を殴り、やつはごぼりと胃袋の中身を吐き出した。
「お、俺たちは雇われただけだ! 目的までは知らない!」
「ほう? 誰に雇われた?」
「SNSで知り合った悪魔にだ! そいつに稼げる仕事があるって言われた!」
「そいつの名前は?」
「サ、サンドマンって言っていた。それ以上のことは知らないんだ」
「サンドマン? 確かか?」
俺はその名前に聞き覚えがあった。
「た、確かだ。俺のスマホを見てくれ。そいつからのメッセージがある」
「確認する」
俺はマーマンのズボンのポケットからスマートフォンを抜き取り、やつが言った暗証番号を入力してSNSの情報を見た。
そのSNSは以前あのラプラスが使っていたものと同じで匿名性が高いものだ。
そのSNS上で確かにサンドマンなる自称悪魔とマーマンたちがやり取りした痕跡が残っている。
「サンドマンか……」
まだ断定することはできないが、こいつは俺たちが以前かかわった事件の犯人と同じかもしれない。
「お前たちは憲兵に突き出す。小遣い稼ぎが高くついたな」
俺はそう言い、石川大尉に連絡を取る。
ただ憲兵に通報しても動くのは遅いからな。
それから俺はふたりを引きずってカリギュラに合流。
「カリギュラ。エリザベスは無事か?」
「ああ。ショック状態だが大丈夫だぞ。ロザリアもな」
カリギュラはそう言ってエリザベスたちを指さす。
エリザベスとロザリアは呆然としている様子だった。
「エリザベス。しっかりしろ」
俺は軽くエリザベスの頬を叩き、注意をこちらに向ける。
「はっ! 阿賀野様! メアリーが……!」
「分かっている。メアリーについて知っていることを教えてくれ。あいつに命を狙われるような敵はいたか?」
「し、知る限りではいないわ……」
「じゃあ、あいつも金持ち仲間か?」
「それは……ええ……彼女も裕福な方よ……」
そこでエリザベスがはっとする。
「まさか身代金目的で……?」
「可能性はあるが、まだ決まったわけじゃない」
俺はエリザベスの様子を見ながらカリギュラを呼ぶ。
「カリギュラ。俺たちをつけていた悪魔はサンドマンに雇われたと言っている」
「サンドマン~? また懐かしい名前が出てきたな~!」
「ああ。誘拐請負人サンドマン。同一人物かは分からないが、同じ名前だ」
サンドマン──。
以前、俺たちが解決した営利目的の誘拐事件で、誘拐を担当した悪魔または人間だ。
いや、悪魔か人間かどころか、そもそも個人かどうかも分かっていない。
全く正体不明ながら、誘拐そのものは確実に成功させるというプロの誘拐実行犯。
そして、以前サンドマンとかかわったときに、やつを雇っていたのは──。
「サンドマンを知る人間に話を聞く必要があるな。前にやつとやり合ったときには依頼主は取っ捕まえたが、サンドマンの方は逃している」
「おう。サンドマンを知ると言えば──」
「煉獄組」
そう、前にサンドマンを雇っていたのは煉獄組だ。
やつらがやっていた人質ビジネスで、誘拐を担当していたのがサンドマンである。
「エリザベス、ロザリア。お前たちは自宅に戻れ。送っていく」
「メアリーは……」
「俺たちで対処する。お前はメアリーの家族に連絡を取っておいてくれ」
「は、はい」
俺たちはそれからエリザベスのSUVを呼び、護衛をカリギュラに任せ、エリザベスたちを家まで送らせた。
「さて、俺は憲兵の到着を待つとするか……」
拘束されたふたりの悪魔と残された空薬莢を前に俺は憲兵の到着を待つ。
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