Case.77 乱入者
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──Case.77 乱入者
「ぶははははっ! やはりこいつお前とデートしたかっただけじゃないか!」
それからバーで事情を聞いて大笑いするカリギュラ。
「そういうわけだが、仕事は仕事だ。契約した以上、7日間はしっかり護衛だ」
「合点。だが、楽な仕事になりそうだな?」
「まだ油断はするなよ、カリギュラ」
最大の危機とも言えた黒獄からの報復がないと分かった以上、備えるべきは何かという話だ。
これまで見た通り、エリザベスは金持ちだ。
そして俺の経験上、金持ちはトラブルに巻き込まれやすい。
黒獄からの報復がなくとも、それなりにリスクはあるだろう。
完全に油断するわけにはいかない。
「しかし、俺様たちを騙すとはいい根性してるな、小娘~?」
「わ、悪かったわよ。けど、どうしても阿賀野様と一緒にいたくて……」
「わはは。こいつのどこがいいのやら」
稼ぎは不安定だし、がさつだし、暴力的だしとカリギュラが言う。
それを聞いてその言葉はそのままお前に返せるんだぞ? と思う俺であった。
「で、だ。これからの護衛についてだが、ある程度脅威を想定しなければならん。本当に襲ってくる可能性があるのは、さっきみたいな街のチンピラだけか?」
俺はエリザベスにそう尋ねる。
「ええ。それぐらい……じゃないかしら?」
少し考え込んだが、最終的にエリザベスはそう言う。
「今度は嘘ついてないだろうな?」
「それは確かにお金があるから、強盗などには気を付けなさいってお父様に言われているけれど」
「ふうむ」
まあ、確かにこの治安の悪い熊本では金持ちは狙われる。
しかし、リスクがそれぐらいならば、対処は可能だ。
「よし。分かった。次は夕食だったな?」
「ええ! そのあとで今度はナイトクラブに!」
「はあ」
どうやら徹底的に遊び倒す予定らしい。
黒獄からの報復があるわけではないと分かったから、この呑気さも理解できるが、要人警護をする側としては可能な限り大人しくしておいてもらいたいものだ。
「なあなあ。俺様たちにも晩飯奢ってくれるのか?」
「もちろんよ。行きましょう!」
「イエイ!」
エリザベスがそう言い、カリギュラもまたSNS映えする写真を撮ろうと張り切って外に出た。
それから夕食の場となるホテルを目指したのだが──。
俺はあることに気づいた。
「つけられているな」
俺はカリギュラにそう言う。
エリザベスたちがバーを出た途端、動いた悪魔が2名。
ひとりはオーガで、もうひとりはマーマン。
そいつらがずっとつけてきている。
最初はたまたまかと思ったが、ぴったりと俺たちの動きを見ながら歩いているところを見るに偶然ではなさそうだ。
「お? 早速トラブルか~?」
「かもしれん。ナンパにチャレンジしたいのか、それとも……」
尾行の動きは素人のそれに見えた。
待ち伏せも、先行する人間もなく、ただ見つけてくれと言わんばかりの見え見えの尾行をしている。
「カリギュラ。お前はエリザベスたちを頼む。俺は後ろの悪魔どもに事情を聞く」
「合点」
俺はエリザベスたちを先に行かせ、尾行してくる悪魔たちを物陰で待ち伏せる。
悪魔たちは俺が待ち伏せている場所に気づく様子もなく、のこのことやってきた。
そこで俺は悪魔たちの前に出た。
「よう、兄ちゃんたち。俺の連れに何か用事かな?」
「クソ。気づかれてたか!」
マーマンの方がそう言い、腰のホルスターに収まった拳銃に手を伸ばす。
しかし、俺の方が先にHK45自動拳銃を構えていた。
「馬鹿なことは考えるな。俺も死人は出したくない」
銃から手を離すように俺は視線で促す。
悪魔たちは険しい表情を浮かべると抵抗する意思がないと示すように、両手をゆっくり上げた。
「お前ら、ただのストーカーかナンパ野郎か?」
「へへっ。どうだろうね……」
俺の問いをはぐらかそうとするマーマン。
そこで俺はオーガがインカムをしていることに気づいた。
「誰と連絡している?」
俺はオーガの方に銃口を向けてそう尋ねる。
「と、友達だよ、友達。あんたには関係ない話だ」
「ほう。友達、ねえ」
事態が動いたのは、次の瞬間だった。
1台のワゴン車が繁華街の道路をかなりの速度で走り抜けてきたのだ。
車が向かう先にはエリザベスたちが。
「カリギュラ! エリザベスを守れ!」
『任せろ!』
俺はインカムを通じてカリギュラに向けて叫び、カリギュラがエリザベスを地面に押し倒して姿勢を低くさせると、ホルスターからS&W M500拳銃を抜いた。
バンはそのままカリギュラたちの隣に急ブレーキをかけて停車し、そこからアサルトライフルで武装した悪魔たちが降りてくる。
悪魔のひとりが威嚇するように空に向けてアサルトライフルを発砲すると繁華街に悲鳴が響き、混乱が広がる。
「クソ」
俺は尾行の悪魔たちがすでにその役割を終えていると悟った。
連中はエリザベスたちを尾行し、その位置情報を襲撃犯たちに伝えていたのだ。
しかし、やつらの狙いはエリザベスではなかった。
「来い!」
「きゃああっ!」
エリザベスを守るカリギュラをスルーして連中が襲ったのは──メアリーだ。
やつらはメアリーを手早くバンの車内に連れ去ると、すぐさま車を出した。
カリギュラが逃げるバンのタイヤに向けて銃口を向けるが俺はそれを制止。
「やめろ、カリギュラ。メアリーに当たるかもしれない」
『了解。しかし……』
現場には逃げ惑う人や悪魔が残された。
エリザベスには傷ひとつなく、ロザリアも無事。
メアリーだけが連れ去られた。
『どうする、阿賀野?』
「こっちで事情を説明してもらうさ」
俺は未だ銃口を向けたままのオーガとマーマンを睨むようにして見た。
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