Case.71 迷惑行為等防止条例、再び
……………………
──Case.71 迷惑行為等防止条例、再び
俺たちは一色銃火器店まで戻ってきて、店主に回収したデリンジャーを渡す。
「……ありがとう。助かった」
言葉が少ないが、店主はほっとした様子である。
父親の集めたコレクションだから、それなりに思い入れがあるのだろう。
「……報酬の45万円。確認してくれる?」
「ああ。確かに受け取った。毎度あり」
45万円の入った封筒を確認し、俺はそれを財布にしまう。
これで店主からの報酬が45万+オルガンからの報酬が50万で95万も儲かった。
「……シャツに血がついてるけど撃たれた?」
「ああ。まあ全然平気だから安心してくれ」
「……不死身だって噂は本当だったんだ」
「俺の噂を聞いたのか?」
「うん。前にちょっとね。不死身の便利屋が熊本にはいるって」
「まあ、その噂は当たっている。けど、頭がおかしいとか、誰それ構わず拷問する拷問魔だって噂は事実じゃないからな」
「信じておく」
俺が言うと店主は小さく頷いた。
「じゃあ、防犯はしっかりしろよ。歴史的に貴重な銃があるんだし、また盗まれないようにな」
「ええ」
それから俺たちは一色銃火器店を出て、軽トラに乗り込む。
「さて、飯を食おうぜ。何か美味いものを! そしてSNS映えするものを!」
「SNS映えはどうでもいいだろ……」
「SNS映えは重要だぞ。俺様たちの便利屋を盛り上げるためにも。俺様がお勧めする店があるから、そこに行こう!」
「はいはい」
それから俺たちはカリギュラが勧めるというレストランに向かった。
「……高そうな店だが……」
「そうだな! ディナーのコースはひとり2万5000円だ! ワイン抜きで!」
「はいはい。撤収でーす。ここはダメでーす」
「ええー!? そんなー!」
「それだけ料理が高い店で酒まで飲んだら稼ぎが飛ぶ。いつもの焼肉でいいだろ?」
「ぶーっ!」
カリギュラはそうやってぶーぶーと文句を言ったが、ひとり2万5000円以上も晩飯に金はかけられない。
それから俺たちは焼肉屋へ。
「お疲れ様でした、と」
「お疲れ様だ!」
俺たちは生ビールで乾杯し、お互いを労う。
早速塩タンから焼き始め、カリギュラはじゅうじゅうと焼ける肉をぱしゃぱしゃと写真を撮る。
「……それ、全部SNSに上げるのか?」
「いいや。厳選するぞ。本当によく撮れた写真だけを上げる。美味そうに撮れた写真を上げないとフォロワーは増えないからな」
「フォロワーって今は何人ぐらいなんだ?」
「お前、アカウントちゃんと見てないのかよ。ふふん。1000人をちょうど超えたところだ」
「へえ。1000人もねえ」
1000人もただ黙々と飯の画像とたまにカリギュラの自撮りが上がるだけのアカウントをフォローしているのか。
何というか、物好きはいるものなんだな……。
「お? またフォロワーが増えたぞ~」
「それより肉が焼けてるぞ。食べないのか?」
「食べる、食べる。それから酒を追加だ!」
「了解」
追加の酒と肉を頼み、注文の品はすぐに運ばれてくる。
「わはは。毎回これぐらい稼げるといいのにな!」
「そうはいかんだろう。今回はたまたま事件が重なっただけだ」
本当に偶然であった。
俺たちがたまたまその日に一色銃火器店を利用したことで、そこの店主からデリンジャー捜索の依頼を受けたのだが、それがなければ俺たちがザルクと黒獄の決闘に乱入するようなことはなかったはずだ。
その場合、熊本のふたつの犯罪組織が抗争状態に陥り、繁華街で銃撃戦が繰り広げられる騒ぎになっていたかと思うと、ちょっとぞっとする。
「また魔獣の駆除でぼちぼち稼ぐしかないさ」
「はあ。ゴブリンとスライムだけはやだ」
俺たちはそうやって焼き肉屋で散々飲み食いして、自宅に帰ったのだった。
* * * *
その翌日のことである。
俺たちはいつものように事務所で仕事を待っていた。
俺はノートパソコンでメールボックスに何か依頼が来るのを待ち続け、カリギュラはサブスクでアニメを見て爆笑している。
そんな中で事務所のチャイムが鳴った。
「はいはい」
仕事だと思って俺は部屋の扉を開けたのだが──。
「えへへ。来ちゃいました、阿賀野様……」
いたのは昨日、俺に惚れたと言った女吸血鬼のエリザベスであった。
……………………




