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Case.7 頭のおかしい便利屋コンビ

……………………


 ──Case.7 頭のおかしい便利屋コンビ



 一斉に銃を構えるアビス・ファミリーの構成員たち。

 悪魔が、人間が、自動拳銃の銃口を俺とカリギュラに向ける。


 そして銃声がけたたましく響いた。


 無数の銃弾が俺を貫き、俺は床に崩れ落ちる。


「ははっ! くたばったぞ!」


「ざまあみろ!」


 男たちが歓声を上げる。


 これでおしまい? ゲームオーバー? 勇者の冒険は終わってしまった?


 いいや。そうじゃない。

 俺の人生はまだ終わってなどいない。


「そっちの嬢ちゃんもハチの巣の死体になりたくなければ、武器を捨てな!」


「わはははっ! 何をほざいている? その不細工な面が張り付いた頭にはちゃんと脳みそが詰まっているのか?」


「げはははっ! ほざくものだな。いつまで生意気な口が叩けるか、楽しませて──」


 そこで下種に笑う豚鼻の悪魔の足が突然撃ち抜かれた。

 膝蓋骨が貫かれたのだ──5.56ミリNATO弾によって。


「そうだぜ。誰が死体になったって?」


「なあっ……!?」


 引き金を引いたのは他でもない。


 俺だ。俺がアサルトライフルの銃口を豚鼻の悪魔に向けて引き金を引いた。


 俺は肺に溜まった血をげぼりと床に吐き捨て、肉体から押し出されていく銃弾をつまんで地面に捨てた。

 俺の銃創は逆再生するかのように、元通りになっていく。


「どういうことだ!? ハチの巣にしたはずだぞ!」


「あ、兄貴! こいつ、もしかして例の頭がおかしい不死身の便利屋じゃあ……!?」


「ま、まさか、あいつらか……!?」


 何やら凄く失礼なことを言われた気がする。

 だが、それはどうでもいい。


 俺は穴だらけで血まみれになったシャツとジャケットを見て、溜め息を吐く。


「全く。不死身だとしても、服までは元に戻らないんだぞ」


 俺はそう愚痴を言いながら狼狽えるアビス・ファミリーのメンバーに向けて再びアサルトライフルを構える。

 カリギュラもにっと笑って炎を宙に浮かべた。


「やっぱりだ! 例の便利屋どもだ!」


「片方は軍隊上がりのサイコパスで、片方が地獄からも放り出されたサディストだって噂の……!」


「煉獄組の連中の事務所を爆薬で吹っ飛ばした、あの連中……!」


「女子供でも容赦なく拷問して殺すって言う……!」


「生きたまま人間や悪魔を焼き殺してその悲鳴を楽しむっていうふたり組……!」


 アビス・ファミリーの連中にざわざわと動揺が広がっていく。


 おい、ちょっと待て。どういう噂が広がってんだ?

 確かにヤクザの事務所を吹っ飛ばしたことはあるが、他は知らんぞ。


「わはははっ! そうだ、そうだ! 俺様たちはこの熊本で一番危険な悪魔と人間だ! 退くなら今のうちだぞ! さもなければ──」


 カリギュラがそう言って大笑いし、ぼっとバーの床から火柱が上がる。


「地獄の炎の味をとくと思い知らせてやろう……!」


 そのカリギュラの脅しがとどめになった。


「に、逃げろ! 殺されるぞ!」


「た、助けて!」


「お、俺を置いていくな! 誰か手を貸せえ!」


 アビス・ファミリーの男たちは脱兎のごとく逃げ出し、膝を撃ち抜かれた豚鼻の男も他の構成員の肩を借りて逃げて行った。


「ふう。悪は去った」


「ふはははっ! また勝利してしまった!」


 俺はそう言い、カリギュラは笑う。


「さて、サクラ。金を返す気になったか?」


 俺は血塗れ、カリギュラは炎を手のひらに浮かべてサクラに改めて尋ねる。


「は、はははは、はひっ!」


「じゃあ、14万な。準備しろ」


「え、えっと。6万円はレオさんで、4万円が手数料でしたよね……?」


 なぜか4万円上乗せされていることをサクラが指摘すると、俺は無言で自分のシャツとジャケットを指さした。


「クリーニング代」



 * * * *



「助かりました!」


 土下座して喜ぶレオ。

 悪魔も土下座するのかと思いながら、俺は深々と溜め息を吐く。


「はあ。これからはいくら可愛くても女の子に全財産貢ぐなよ?」


「はい! 心得ました!」


 本当に心得たのかと疑問に感じるが、俺たちの仕事はここまでだ。

 俺たちはレオの部屋を出てアパートの階段を降りる。


「じゃあ、俺たちは大家から代金貰ってくるか」


「うむ。仕事の対価を貰わねば」


 俺たちはそう言い、大家の部屋を訪れる。


「大家さん。家賃、回収してきましたよ」


「あら! ご苦労様!」


 このアパートの大家はえらいド派手なおばちゃんで、頭をショッキングピンクに染めている。

 俺たちが封筒に入れたレオの家賃を渡すと、その万札を数えていく。


「ありがとう! 助かったわ! これが手間賃ね!」


 そうして俺たちに渡されたのは──。


「確かに7500円、いただきました。領収書を切りますね」


 7500円である。

 これにはカリギュラもいつものことながら非常に渋い顔。


 だが、俺たちの仕事は基本的にこういう儲からないものなのだ。


……………………

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これで47500円の儲けならまあ……
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