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Case.69 いい警官と悪い警官

……………………


 ──Case.69 いい警官と悪い警官



 俺たちは再び熊本中央区に戻り、歓楽街を目指している。


「いいか、カリギュラ。そろそろ俺たちも脅すだけじゃない尋問の技術を身に付ける必要がある」


「何だよ、それ?」


「尋問のテクニックを得れば仕事ははかどる。だから、俺が言う段取り通りにやれ」


「ふむ。聞いてやろう」


「俺が教える尋問のテクニックのひとつは、いい警官と悪い警官ってやつだ」


 俺は情報軍のオペレーターとして尋問の技術をいくつか知っている。

 その中でカリギュラにでもできそうなものを俺は教える。


「俺はこれからオルガンに対して友好的に振舞う。友達みたいにな。『よう、古い友よ。元気していたか? ここ最近はいろいろと物騒だよな。そっちは被害に遭っていないか?』って風に」


「……そんなことでやつらが喋ると思うのか?」


「まだ続きがある。お前の方は俺とは真逆の対応をしろ。『おい、オルガン。てめえ、また何かトラブルを起こしやがっただろう? 正直に話さないと爪先から頭のてっぺんまで丸焼きにしてやるぞ』って具合にな」


「おおーっ! それで、それで?」


「やつは震え上がる。そこで俺が友好的なまま尋ねる。『オルガン。トラブルがあるなら解決してやる。俺たちにトラブルの情報をくれたら力になる』と」


「なるほど。飴と鞭というやつだな」


「言葉で心理的に揺さぶりをかけて、口を割らせる。暴力に頼ってばかりじゃ悪評が立つからな……」


 どういうわけか俺たちが悪魔を酷く拷問したとかいうデマが出回っている。

 これ以上、妙な悪評が立つと仕事が来なくなるかもしれない。

 なので、この事件は言葉だけで収めようと俺は考えていた。


「わはは。それで上手くいけばいいけどな」


「上手くいかせるの。じゃあ、オルガンに会おうぜ」


 俺たちはオルガンに会うためにアビス・ファミリーが所有しているバーに向かった。


「げっ! 頭のおかしい便利屋コンビ……」


 バーの用心棒であるヤギ角の悪魔はそう言い、険しい表情を浮かべた。


「人の顔を見た途端嫌そうな顔するなよ。オルガンに用事がある。どこにいる?」


「オルガンの兄貴なら事務所だが……」


「オーケー。呼び出してくれ。どうせ暇してるんだろ?」


「畜生」


 ヤギ角の悪魔は俺にそう言われてスマートフォンでオルガンを呼び出す。

 しかし──。


「ダメだ。兄貴は今、あんたらに応じられないほど忙しいらしい。事務所に来てくれと言っている」


「分かった。言っておくが俺たちを罠に掛けようなんて考えるなよ」


「も、もちろんだよ」


 俺はヤギ角の悪魔にそう念を押し、アビス・ファミリーの事務所に向かう。

 アビス・ファミリーの事務所の場所は知っていたが、行くのは初めてだ。


「このタイミングでオルガンが忙しいってのがちょっと気にかかるな」


「そうだな。まだデリンジャーの窃盗をアビス・ファミリーがやったという証拠はないけれど、俺様は怪しいと思っているぞ」


「まあ、全く無関係ってことはないだろうな。アビス・ファミリーの構成員が犯行に使われたらしい車を借りているんだから」


 俺たちはそんな言葉を交わしながらアビス・ファミリーの事務所へ。

 アビス・ファミリーの事務所は新煉獄組の事務所よりちょっとばかり立派なビルに入居している。


 ビル前にはアサルトライフルで武装した豚鼻の悪魔──オークが2名。

 俺たちはそいつらに笑顔を浮かべて近づく。


「よう。オルガンに会いに来た。やつはここにいるんだろう?」


「ああ? 誰だ、てめえ?」


 初めて会うそのオークたちは俺たちに銃口こそ向けないものの睨み付けてくる。


「オルガンに伝えろ。便利屋が会いに来たと。そうすれば伝わるはずだ」


「便利屋だぁ? 舐めてんのか、こら!」


 オークたちは全く俺たちの話を聞こうとしなかったが、そこで事務所の扉が開いた。


「馬鹿野郎! 何やってんだ、てめえら!」


「オ、オルガンの兄貴!」


 事務所の扉を開けて出てきたのは他でもないオルガンだ。

 オルガンはオークふたりを睨むと、オークたちはビビり散らかしていた。


「それから──」


 そして、オルガンは俺たちの方に視線を向けた。


「便利屋。来てくれ。相談したいことがある」


「ああ。ちょうど俺たちも相談したいことがあったところだ」


 オルガンにそう言われて、俺とカリギュラは事務所の中へ。


「若いのが悪かった。座ってくれ」


 それから俺たちは応接間に通され、ソファーに座る。


「オルガン。トラブルなら手を貸すぞ。俺たちもお前たちの手を借りたい案件を抱えているのでな」


「おうおう! また人様や悪魔様に迷惑かけているようなら俺様がこんがりローストしてやるぞ!」


 いい警官と悪い警官作戦発動。

 だが、オルガンは動揺した様子はない。


「ああ。このままだと街に大迷惑がかかるかもしれない」


 オルガンはあっさりとそう認めた。


「……何があった?」


「うちのボスの息子とゲヘナ・ファミリーのボスの息子が女の取り合いで決闘をすると言い出した。俺たちは止めようとしたんだが、ボスの息子は行方をくらませた。ふたりが殺し合えば、報復が始まり、アビスとゲヘナの間で戦争が勃発する」


「おいおい。マジかよ」


 ゲヘナ・ファミリーは熊本でも規模のデカい悪魔系の犯罪組織だ。

 そいつらがアビス・ファミリーと抗争になれば……この街は地獄を見るだろう。


「マジなんだ。便利屋、あんたらでボスの息子を探し出して、決闘を止めてくれないか? 俺たちは誰も戦争なんて望んでない」


 そう言ってオルガンは俺たちに頭を下げた。


……………………

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作戦やる以前の問題だったと言う。
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