Case.68 ナンバープレートの示す情報
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──Case.68 ナンバープレートの示す情報
軍政局にあるコネといえばひとりしかいない。
「このナンバーの車に事件性があると?」
「ああ。所有者を知りたい。盗難事件に関係している可能性がある」
俺の前にいるのはひょろりとした憲兵──石川大尉だ。
やつは俺がナンバーをメモした紙を差し出すのに、それをじっと見ていた。
「調べるのは構いませんが、一応個人情報保護ということもありますので、事件性がない場合は所有者は明かせませんよ?」
「分かった、分かった。それで構わない。調べてくれ」
石川はそう言い、俺たちはやつがナンバープレートを照合するのを待った。
「……3日前に盗難届が出されていますね。どうやら事件性はありそうです」
「元の所有者は?」
「北区在住の方です。詳細はこちらに」
石川はプリントアウトした詳細情報を渡してきた。
所有者の氏名、性別、住所、そして人間か悪魔かの記載。
この車の持ち主は人間だ。
「個人情報ですので、ここで見るだけにしてください。持ち帰るのはなしです」
「分かった。頭に叩き込んでおく。こう見えても記憶力はいいんだ」
俺は石川から渡された情報を頭に叩き込んだ。
「助かったよ、大尉」
「この件は貸しにしておきますよ。またあなたに頼みたい仕事もありますので」
「けっ。抜け目ない」
ある政治家が政治の基本はギブ&テイクだと言っていた。
大勢に貸しを作った政治家は政策実現に成功する、とも。
そういう意味では石川も政治家の類だ。
「なあなあ。ラプラス関係にあれから進展はあったのか?」
「ありません。我々が見つけたアカウントもすでに活動を止めています。しかし、女夢魔による人的被害は未だ続いています。ラプラスは別のアカウントで行動中なのでしょう」
「ヘルファイア・カルトは?」
「五十嵐イズラエルを始めとする主要メンバーは今も手配中です。熊本だけではなく全国で。国際手配にも指定されていると聞きます」
「一応仕事はしてるんだな~。どの事件も放置しているかと思ったぜ~」
カリギュラは石川からそう聞いて、呑気なことを言っていた。
「おい。あんまり憲兵をからかうと逮捕されるぞ、カリギュラ。さっさと行こう」
「合点」
俺たちはそれから軍政局を出て、車の持ち主の住所に行く。
熊本市北区に向かう。
地獄戦争の際に破壊された日本陸軍北熊本駐屯地を横目に住宅地を進むと、俺たちは目的地に到着した。
「ここだな。立派な家だ」
家には駐車場があり、駐車場にはデカいSUVが鎮座している。
見る限り新車だ。
「よーしっ。これからどうする?」
「話を聞く。犯人に心当たりがないか、どうか」
「知らないから盗難届を出したんじゃないのか?」
「盗難届を出した人間が必ずしも被害者とは決まらないからな」
「どういうことだ?」
「まあ、見てろって」
俺は首を傾げるカリギュラにそう言い、家のチャイムを押す。
すると──。
「おう、なんだい、兄ちゃん?」
出てきたのは入れ墨の入ったガタイのいい人間の男。
入れ墨はタンクトップから覗く肌にびっしり。
俺は入れ墨に偏見を持たないようにしているが、こいつは堅気じゃない。
「お前が盗難届を出していた車が見つかったぜ。藤崎宮前駅の駐車場で目撃された」
「へえ。そうかい。あんたら、憲兵には見えないが?」
車が見つかったというのに男はあまり喜んだようには見えない。
「ああ。憲兵じゃない。便利屋で、盗難品を探している」
「俺は便利屋に車を探してくれと頼んだ覚えはないが?」
「だろうな。お前、車は盗まれたわけじゃないだろう?」
俺は駐車場にある立派なSUVに視線を向けてそう言う。
「3日前に盗難届を出したにしては、随分と立派な車をすでに乗り回しているじゃないか。あれは保険会社が出してくれた代車には見えんぜ?」
「……何が言いたい?」
「盗みをやるから車を貸して、それから盗難届を出した。盗難の被害者であれば疑われないからな。もちろんこれは俺のただの邪推に過ぎないかもしれない。だが──」
そこで俺は腰のホルスターに収まったHK45自動拳銃をちらりと見せる。
「もし、お前が盗難にがっつり関与しているなら今のうちに知っていることを話した方がいいぞ。俺たちは仕事をやるのに暴力は躊躇わないからな」
「おうおう。そうだぞ。頭のおかしい便利屋コンビとは俺様たちのことだ!」
俺が静かに脅すと後ろからカリギュラが余計なことを言う。
「げえっ! 頭のおかしい便利屋って繁華街で銃を乱射したり、ヤクザの事務所を吹っ飛ばしたり、手当たり次第悪魔を拷問しているって連中か……? た、確かにデカい男と銀髪の女悪魔のコンビだとは聞いていたが……」
「そうだ、そうだ! 貴様も喋りたくなるようにちょっとばかり炙ってやろうか?」
デマが半分の男の言葉にカリギュラはそう言って手のひらに炎を浮かべて見せる。
ふたりして暴力で脅すのは尋問するうえであまりよろしくないのだが。
「わ、分かった。頼まれたんだ。車を貸してくれって。昔のなじみに……」
「そいつはどいつだ?」
「ドルヴァスっていうアビス・ファミリーのメンバーだ。俺も元メンバーで……」
「アビス・ファミリーの、か。そいつはオークで間違いないか?」
「あ、ああ。なあ、俺は本当に車を貸しただけだ。でも、返ってこないから盗難届を出した。それだけなんだよ。俺は盗みがあったとしてもそれには無関係だ」
「そういうことにしておいてやる」
俺は冷や汗を流している男の肩をぽんぽんと叩いて、軽トラに戻る。
「さて、アビス・ファミリーの連中に事情を聞こうぜ」
「わははは。合点だ!」
まずは歓楽街に行ってオルガンに会う。
やつを締め上げれば何かしらの情報は出てくるだろう。
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