Case.67 推測と裏付け
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──Case.67 推測と裏付け
俺は一色銃火器のバックヤードを見渡す。
骨董品とも言える銃火器の他には、HK416アサルトライフルやミニミ機関銃、AW50対物ライフル、レミントンM870散弾銃といった殺傷力の高い武器も並んでいる。
「まず疑問点を整理しよう」
俺は言う。
「犯人はそもそも本当に悪魔なのか? 人間が工具を使って押し入ったという可能性もある」
まだ悪魔の仕業と決まったわけじゃない。
扉は強引に破壊されていたそうだが、バールなどを使った可能性もある。
「次になぜ数ある銃火器の中から骨董品のデリンジャーだけを選んだのか?」
多くの銃がある中で犯人はどういうわけか骨董品のデリンジャーだけを選んだ。
その理由も考えなければならない。
「前に盗まれたデリンジャーを買いたいと言った人間や悪魔はいなかったか?」
「……いない。けど、前に妙な注文を受けたことはある」
「妙な注文って?」
「……古い拳銃が欲しいという注文。特にデリンジャーを、という指定ではなかったけれど、確かに古いモデルの拳銃が欲しいと言われた。数は2丁で、2丁とも全く同じモデルのものを、という注文。だけど、あのデリンジャーは非売品だから売らなかったし、他の拳銃では満足していない様子だった」
「そいつは悪魔だったか?」
「ええ。オークだった。豚鼻をした悪魔の」
古いモデルの拳銃を欲しがった悪魔。
「そいつがコレクターでお前がデリンジャーを持っていると知っていた可能性は?」
「私は人に見せたことはないけれど、父が生前に同業者にコレクションを自慢していたから、知っている人間はかなりいると思う」
コレクションは熊本が地獄戦争に巻き込まれてから集められたものだそうだ。
そして地獄戦争後に店主の父が同じ銃を扱う業者にそのコレクションをよく披露していたと店主は語る。
「となると、容疑者はそこまで絞れないな……」
デリンジャーがここにあったと知る人間が少なければ容疑者リストは狭められるのだが、あいにく知っている人間は多いようだ。
「カリギュラ。臭いの方はどうだ?」
「鉄と油の臭いの中に悪魔の臭いがするぞ。そこまで古くない悪魔の臭いだ」
「種類は特定できるか? 店主はオークがデリンジャーに似た条件の拳銃を注文しに来たと言っている」
「あいにく、ここに残っている臭いじゃそこまでは無理だな」
カリギュラは俺の問いに肩を竦めてそう返す。
「じゃあ、ふたつの方法で追おう。ここから続く悪魔の臭いと骨董品の銃火器が流れそうな市場の動き。そのふたつを追いかければどっちかが引っかかるだろう」
「合点だ」
俺がそう言うとカリギュラが頷く。
「店主。一度盗みに入られた店はまた被害に遭うこともある。用心してくれ」
「分かった。防犯はしっかりと行う」
「それじゃあ、俺たちはまずは臭いを追ってくる」
店主に俺はそう言い、俺とカリギュラは臭いを追って外に出た。
「カリギュラ、臭いはどっちに続いている?」
「こっちだ」
カリギュラはそう言い、臭いを追う。
「こっちは藤崎宮前駅だな……」
「臭いはこっちに向かっている」
俺たちは臭いに導かれるまま、藤崎宮前駅の方に向かう。
そして藤崎宮前駅の駐車場にカリギュラは進んだ。
「臭いは一度ここで途絶えているな」
「ここに残っている臭いで悪魔の種類を判別できないか?」
「そうだな……限りなくオークに近い気もするのだが、あの店にいたのはオークという先入観があるせいかもしれん」
「何とも言えないか。とりあえず──」
俺は駐車場に設置されている監視カメラの方に視線を向けた。
「あれを調べてみよう」
正直、動いているかどうかは分からないが、頼りになりそうなのはあれだけだ。
俺たちは駐車場の管理人室に向かう。
そこには中年の退屈そうにしている管理人がいて、俺たちが近づくと訝しげな視線を向けてきた。
「何だい?」
「やあ。俺はこういうものだ」
「便利屋……?」
「ああ。今は失せ物探しをやっている。近くで窃盗があってね。調べているんだ」
「ふうん。で、私に何か用事かね?」
「あそこにある監視カメラの映像が見たい。頼めないか?」
俺がそう頼むと管理人は考え込む素振りを見せた。
こういう立場の人間がこういう態度を取ったときにやるべきことはひとつだ。
「これで頼めないか?」
俺はそっと5万円をカウンターに載せる。
管理人はそれに目を止めるとささっとそれを受け取り、俺たちに管理人室の中に入るように促した。
「いつ頃の映像が見たいんだい?」
「2日前の深夜から早朝にかけての映像を頼む」
「分かった」
管理人は録画されていた映像を再生していく。
「そこだ」
カリギュラが臭いを辿った位置に黒いバンが停車した。
それからサングラスや目出し帽で顔を隠した2名の男たちが下りてきた。
手には大きなボストンバッグだ。
「こいつらオークだな」
「ああ。間違いない」
目出し帽をしていも分かる豚鼻。こいつらはオークだ。
オークは全員で3名。
2名が車を降り、1名は運転席に残った。
それから時間が進み、出ていった2名のオークが戻って来た。
慌てた様子で車に乗り込み、そのまま車は急発進して駐車場を出ていった。
「こいつらで間違いなさそうだ」
「車のナンバーも確認できた。あっさり捕まりそうだな!」
「ああ。大きな進展だ。軍政局の人間に頼んで照会してもらおう」
カリギュラがガッツポーズし、俺もにやりと笑って頷く。
「ありがとな。助かったよ」
「あんたにここの映像を見せたことは他の人間には言うなよ?」
「分かってるって。誰にも言わないよ」
ナンバーを照会し、車の所有者を突き止めれば一発解決かもな。
と、俺は実に楽観的に考えていた。
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