Case.66 デリンジャーを追え!
今日の更新はこれにて終了です。応援よろしくお願いします。
……………………
──Case.66 デリンジャーを追え!
最近、仕事でドンパチしたせいで弾薬が不足してきた。
「そろそろ弾薬を補充しないとな」
俺とカリギュラは事務所の中に作った弾薬庫にいる。
そこはずらりと武器が並ぶ。
それこそその量とラインナップは志茂が集めていた銃火器より多いぐらいだ。
正直、ちょっとした戦争でも起こせそうなほどの武器弾薬である。
まさに最終戦争に備えるアメリカ人といった具合。
仕事道具なので金欠の中でも収集し、整備してきたが……。
「……なあなあ、阿賀野。仕事道具とは言えど、こんな馬鹿みたいに銃を集める必要はなかったんじゃないか? 俺様たち、ときどき食うにも困っているのに、銃だけあってもしょうがないだろう」
「だけど、銃がないと仕事にならないことも多いし。加えて俺たちは方々から恨みを買っているから、こういうので自衛しないと袋叩きに遭うぜ?」
「そうかな~?」
俺の言葉に疑問を呈するカリギュラ。
しかし、この街で悪魔・魔獣・犯罪組織を相手に便利屋なんてものをやっている以上、こういのは必要経費だ。
いくら不死身でもステゴロで銃を持った相手には勝てんからな。
「それより弾薬の補充をしないといけない。カリギュラ、街に出るぞ」
「合点。ついでに昼飯食って帰ろうぜ。SNS映えするようなお洒落なランチ!」
「お洒落なランチねえ」
というわけで、俺たちは弾薬を調達し、昼飯を食ってくることに。
これから俺たちが向かうのは信頼できる銃火器店だ。
俺たちが欲しいのは実際に相手を殺傷できる実用的な武器であって、見せつけて脅すだけのものでも、壁に並べて悦に浸るためのものでもない。
だから、どこで作られたかも分からないようなカラシニコフやコルトM1911には興味はない。
銃弾についても同様で、可能な限り信頼できる品が欲しい。
で、今の熊本には銃火器店がいくつもある。
自衛のための銃を求める市民や民間軍事会社のコントラクターを相手に、いろいろな店が商売をしている。
軍政局は熊本県内ではそういう動きに目を瞑っているが、県外に銃が持ち出されそうになると話はがらっと変わる。
県境に憲兵がやたらと検問を敷いているのは、地獄由来の物質が持ち出されることを防ぐための検疫と同時に、熊本県内に溢れる銃火器や爆発物が県外に持ち出されるのを防ぐためだ。
まあ、毎週のように『熊本県まで行って銃を買って帰ってくるだけの合法な仕事です!』というのに騙されて銃の密輸という闇バイトをやっちまう人間が出ているがね。
熊本県内での武装は黙認されても、県外に出れば即座に銃刀法違反でお縄だ。
地獄に侵攻されて世紀末になっているのは、熊本だけなのだから。
「銃弾はいつもの店か?」
「ああ。一色銃火器だ」
俺たちはそんな多々ある銃火器店の中でも一色銃火器という店を贔屓していた。
寡黙な女店主がやっている店で、この熊本で一番信頼できる店だ。
この店で不具合のある品を掴まされたことは一度もない。
店主が言うには地獄戦争以前からやっている店だとか。
……流石にアサルトライフルとか軍用品を扱いだしたのは、地獄戦争の後からだと思っておきたいが。
その店は藤崎宮前の奥まった場所にあり、小ぢんまりとした店構えをしている。
「こんちわ」
「おうおう。客が来てやったぞ~」
俺とカリギュラはそれぞれそう言って店内へ。
「……いらっしゃい」
中には黒い眼帯をした20代後半ほどの女性が店番をしていた。
彼女がこの店の店主だ。
手にはコルトSAA拳銃があり、それをメンテナンスしている様子だ。
「しけた接客だな~。もうちょっとにこにこしろよ~」
「黙ってろ、カリギュラ」
俺はぱしりとカリギュラの後頭部を叩く。
こっちの方に目も向けない接客はいかがなものかと俺も思うが、この店は贔屓にしているので揉め事を起こしたくない。
「失礼、店主さん、12ゲージのショットシェルを買いたいんだけど、在庫あるかい? スラッグ弾ね」
「フォスター型?」
「ああ」
「待ってて」
それから店主はショットシェルが詰まった箱を持ってきた。
「いくつ必要?」
「25発入りを4個頼む」
「分かった。4万になる」
俺は段ボール箱に几帳面に収められた弾薬を受け取り、4万円を現金で支払うとベルゲンリュックサックに詰め込む。
「……ねえ、便利屋をやっているんだったよね?」
ここで店主が俺にそう話しかけてきた。
「ああ。悪魔関係のトラブル解決から魔獣駆除まで手広くやっているぜ。何か頼みたいことでも?」
「……うん。ちょっと問題に思っていることがあって。時間ある?」
「あるぞ。聞こう」
「じゃあ、こっちに」
俺たちは店主に促されて店の奥に。
店の奥には表に出ていない商品が置かれていた。
リー・エンフィールドライフルやStG44突撃銃、99式短小銃といった第二次世界大戦中の武器から詳細不明のマスケット銃まで様々だ。
「凄いコレクションだな」
「……祖父と父のものだったの。私が継いだ。そして、問題があるのは、このコレクションについて」
店主は銃火器が博物館のように展示された店のバックヤードで、一か所だけ何もなくなっている空間を指さす。
「そこには何が?」
「コルト・シングルデリンジャー拳銃が2丁あった。けど、2日目に盗まれたの」
「また随分な骨董品が盗まれたんだな……」
コルト・シングルデリンジャー拳銃とは.41口径の銃弾を使用する単発式の拳銃だ。
護身用に作られたもので、最後に製造されたのは1910年代なので骨董品という俺の評価は的外れではないはずだ。
「……店のそこの扉が強引にこじ開かれていた。人間の仕業じゃないと思う」
店主はそう言い、バックヤードの中で最近修理されただろう真新しい扉を指さす。
「悪魔の仕業かもしれない、と」
「憲兵にも盗難被害を出したのだけど、彼らはこの手の事件に動くのが遅い……。だから、代わりに探して取り戻してくれない?」
「盗難品の奪還か。任せろ」
この手の仕事も俺たち便利屋の仕事だ。
「報酬は50万でどうかな? もっと出した方がいい?」
「いや。俺たちにこれからも質のいい武器弾薬を売ってくれると約束してくれるなら、もっと安くていいぞ。45万で引き受けよう」
「……ありがとう。これが盗まれた銃の写真。捜索に役立てて」
「ああ」
いつだって戦争の勝敗は兵器の質と数が決めるものだ。
俺たちも安定した銃火器の供給源を確保しておかないとな。
「じゃあ、早速仕事にかかるよ」
「お願い」
店主は不愛想な無表情のままに頷き、俺とカリギュラは消えた骨董品の拳銃探しを始めることに。
……………………




