Case.63 レッドキャップの炙り
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──Case.63 レッドキャップの炙り
俺たちは志茂と一緒にレッドキャップの拠点である第二次世界大戦時代の防空壕を目指している。
俺たちは縦列で慎重に森の中を進む。
先頭の斥候は俺が務め、先行して前進。
それに続いて志茂が進み、最後尾はカリギュラが臭いでレッドキャップに警戒する。
そのようにして俺たちはお互いがすぐにカバーできる位置を取りながら防空壕へと進んでいく。
「防空壕までは間もなく」
俺は地図と地形を見ながら、正確にカリギュラたちを先導する。
道中でレッドキャップを数体発見した。
俺はハンドサインで接敵を知らせ、志茂がサプレッサーを装着したFN SCAR-Hバトルライフルでレッドキャップの頭を静かに撃ち抜いた。
口径7.62ミリNATO弾はレッドキャップの頭部を一発で吹き飛ばす。
「流石は元レンジャーだな」
俺はその正確な射撃に頷く。
「お前さんこそ、いい目をしている。この山林に隠れた小鬼どもがこちらを見つけるより先に見つけるとは」
「レッドキャップがいると分かれば、目につくものもあるからな」
レッドキャップの足跡はゴブリンよりやや大きく、そして深く地面に刻まれる。
そして、山林の中でもやつらは樹上や茂みの中からの奇襲を好む。
そういう場所に注意し、カリギュラの臭いによる探知を得れば、もう待ち伏せによって被害を受けることはない。
「進もう。防空壕がそろそろ見えてくるはずだ」
俺たちは経路上のレッドキャップを掃討しながら、防空壕に迫る。
問題の防空壕に辿り着くと──。
「いるな、レッドキャップがかなり……」
「ここが連中の巣穴で間違いない」
俺と志茂は双眼鏡で防空壕の入り口を見る。
防空壕の前にはすでに5、6体のレッドキャップがいて、農作業用の剪定バサミなどで武装している。
恐らく自分たちの巣穴を守っているのだろう。
「ここからの作戦は?」
「見張りを排除し、防空壕を爆破する。小鬼どもは生き埋めだ」
「防空壕を吹き飛ばせる爆薬まで持っているのか?」
「足りるかどうかは分からないがな」
そう言って志茂は背中に背負っていたベルゲンリュックサックからプラスチック爆薬を取り出す。
「俺は爆弾の専門家じゃないが、恐らくそれでは入口を封鎖することぐらいしかできないだろう。ここは俺の相棒に頼ろう」
俺は志茂の持っている爆薬の量では足りないと判断した。
そこで俺がカリギュラの方を見る。
「カリギュラ。入り口から炎を放って焼き殺してやれ」
「合点」
防空壕の中を炎で満たせば、熱で殺せなくとも酸欠で殺せるだろう。
火炎放射器はトンネル陣地に効果的だ。
「では、見張りを排除して入り口を押さえるぞ。準備は?」
「いつでもいいぞ」
「では、掛かろう」
俺たちはそれから素早くレッドキャップたちに銃口を向ける。
俺とカリギュラはそのまま有効射程に相手を収めるまで前進し、志茂は後方からそれを支援。
12ゲージのスラッグ弾で確実にレッドキャップを仕留めたいならば、50~100メートルは接近しなければならない。
それ以上の距離となると、狙いが逸れて有効な射撃にならない。
俺とカリギュラは風下から防空壕の入り口に迫る。
「げげげっ!」
しかし、そこでレッドキャップの1体がこちらの動きに気づいた。
視線が俺たちの方を向き、声を上げる。
レッドキャップはゴブリン同様に3色型色覚を有するとされている。
俺たちの着ているオレンジ色のハンティングベストは見つけてくれと言っているようなものだ。
「志茂。見つかった。援護してくれ」
『任せろ』
俺はインカムを通じて志茂に援護を要請し、志茂はすぐに応じた。
俺たちに気づいたレッドキャップの頭部が抑制された銃声とともに撃ち抜かれ、屍を晒す。
「げげげげっ!?」
しかし、その射撃でレッドキャップたちが警戒態勢に入る。
「カリギュラ。突っ込むぞ。続け!」
「ははっ! 派手にやろう!」
俺とカリギュラは地面を蹴って駆け、レッドキャップの見張りへと接近。
「げげっ!」
レッドキャップの見張りは俺たちに気づいたが、すでに遅い。
俺たちは連中をすでに散弾銃の射程に捕らえた。
俺とカリギュラはモスバーグM590散弾銃の引き金を引き、レッドキャップの頭や胸を撃ち抜いていく。
志茂からの援護射撃もあり、交戦から数十秒でレッドキャップの見張りは壊滅した。
「クリア」
「クリア!」
俺とカリギュラは防空壕の入り口を確保した。
「あとはここを焼き払うだけだな!」
「……思ったんだが、一応中に人がいないか確認した方がよくないか?」
「はあ? レッドキャップの巣に生きている人間なんているはずないだろ?」
「一応だよ。ドローンを使えばいいしさ」
「心配性だな、お前。将来禿げるぞ」
「うるせえ。慎重って言ってくれ」
俺たちはそれからドローンを背負っている志茂が来るのを待った。
「志茂。一応中を調べてから焼き払おうと思う。ドローンで中を確認してくれるか?」
「いいだろう。調べてみよう。俺もちょっと気になることがあったからな」
俺と志茂はそう言葉を交わし、志茂はドローンで防空壕内を探索。
そこで見つかったのが──。
「こいつは、まさか……」
「やはりか。小さいがゲートだ。地獄に繋がったゲートだな」
ドローンからの映像にはレッドキャップたちが巣くう防空壕の最奥に縦横1メートルの地獄に繋がるゲートができているのが映されていた。
「ゴブリンはともかく一体どこから小鬼どもが来たのか疑問だったが、これで合点がいったぞ。小鬼どもはここから湧いていやがったんだ。ゲートを封鎖しなければ、これから小鬼どもや他の魔獣が現れ続ける」
志茂は忌々しげにそう言う。
さて、困ったことになった。
「このゲートは見た限り不安定だ。衝撃を与えれば簡単に閉じると思う。持ってきた爆薬を使ってゲートを吹っ飛ばそう」
俺はふたつの事例を知っている。
ひとつは不安定なゲートが爆薬によって封鎖されたケース。
もうひとつは安定したゲートが爆発によって広がったケース。
前者の場合はこれ以上問題は起きずに済むが、後者の場合は問題が拡大する。
しかし、今回は後者の心配はいらない。
明らかにこのゲートは小さく、不安定だ。
前にもこういう小規模なゲートを爆破処理したことはある。
「そうと決まれば早速中にいるレッドキャップどもを焼き払って、ゲートを吹っ飛ばそうぜ。善は急げだ!」
「ああ。やってくれ、カリギュラ」
「合点!」
それからカリギュラは防空壕の中に炎を放つ。
炎が防空壕の中を焼き、慌てたレッドキャップたちが飛び出してくるのを俺たちは銃弾で歓迎していく。
「そろそろいいか~?」
「よさそうだな。炎を消してくれ。俺が爆薬を仕掛けてくる」
カリギュラが火加減を見て尋ね、俺はそう返す。
さあ、ゲートを吹っ飛ばしてハッピーエンドだ。
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