Case.62 鉄砲撃ちの志茂
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──Case.62 鉄砲撃ちの志茂
志茂の自宅はミカン農家のあった場所からは離れた山の麓にあった。
見る限りは普通の田舎の家であり、質素な平屋建ての家だ。
「そういえばあんたらの名前をまだ聞いてなかったな」
「俺たちはこういうものだ」
そう言って俺は志茂に名刺を差し出す。
「便利屋、か。なら、ゴブリン駆除にでも来たのか?」
「そのはずだったんだが、レッドキャップに襲われた。それよりお前のことを聞かせてくれ。心配している連中がいたんだ」
ミカン農家はまだ志茂が自宅に戻っていないと心配しているだろう。
「うん。それは悪かった。だが、俺はこの村を守らなければならんのだ」
「何があった? ゴブリン駆除に行って、レッドキャップに襲われたのは分かっているが、逃げて生き延びたのか?」
「ああ。あの小鬼の群れに山の中を追いかけ回されてな……。何とか一度は家まで逃げ切れたが……」
そう言いながら俺たちに冷蔵庫からペットボトルの麦茶を出してくれる志茂。
「やつらの数を見ただろう? あいつらはもっと数が多い」
「何だって? マジかよ」
「ああ。山の中には第二次世界大戦中の古い防空壕の跡があるんだが、そこに住み着いたみたいでな。元の住民であるゴブリンどもを追い出したんだろう。ゴブリンが麓でミカンを食い漁ったのは、そのせいでもあるに違いない」
クソ、あれだけの数でも苦戦したのにさらにいるのかよ!
「しかし、お前よく生き延びられたな。爺さんなのに」
カリギュラは麦茶をぐいっとやったのちにそう失礼なことを言う。
「俺は元自衛官だ。そう、今の日本陸軍がまだ陸上自衛隊と呼ばれていたときに軍務に就いていた。レンジャー徽章も持っとったぞ」
「すげえな」
元レンジャーとは。タフなわけだ。
「で、だ。お嬢ちゃんの方は分からんが、お前は元軍人だろう? このまま小鬼どもを掃討するのを手伝ってくれんか?」
「そうしたいのはやまやまなんだが、ただのゴブリン駆除だと思ってそこまで弾薬は持ってきていなかったから、弾薬を取りに一度家に帰らないといけない」
俺もカリギュラもモスバーグM590散弾銃のショットシェルを撃ち尽くし、残念なことに弾切れだ。
この状況ではレッドキャップのような危険な魔獣の相手はできない。
「それなら安心しろ。武器はある」
そう言うと志茂は俺たちを部屋の奥に案内する。
三重カギで施錠された扉を潜ると、そこには──。
「おわっ。すげえ数の銃火器……」
「わはは! 戦争が起こせそうだな!」
そこにはアサルトライフルに加えて、機関銃、狙撃銃、短機関銃、果ては対物ライフルの類まで銃火器が壁一面に並んでいた。
「こいつはどうして……?」
「地獄戦争によって故郷がこうなってから、俺たちは自衛する必要が出た。人食いの魔獣や悪魔を相手にするには武器が必要だ。だから、こうして集めていたんだ。在日米軍の横流し品や民間軍事会社の連中が持ち込む物を買い取って、自衛のための武器をたっぷりとな」
そう言うと志茂はドンッと俺たちの前に12ゲージのショットシェルが詰まった弾薬ボックスを置く。
「こいつを好きに使ってくれ」
「あ、ああ」
にやりと笑う志茂に俺たちは戸惑いながらもショットシェルを補充する。
「ゴブリン程度ならエアライフルで十分だが、レッドキャップ相手になると流石にエアライフルではな。俺はこいつで行く」
志茂はそう言いFN SCAR-Hバトルライフルのマガジンをオレンジ色のハンティングベストのポーチにたっぷりと詰め込む。
FN SCAR-Hバトルライフルは口径7.62ミリNATO弾を使用する銃火器で、口径5.56ミリNATO弾を使用するアサルトライフルと比べると威力はあるが反動が大きい。
しかし、先ほどの志茂の射撃は見事だったので、その点は大丈夫なのだろう。
恐らく70代の爺さんだろうに、大したものだ。
それに加えて腰のホルスターには金メッキのデザートイーグルだ。
「なあなあ。その派手な金ぴかの銃はどうしたんだ?」
「あるアメリカ兵から買ったんだ。中東の独裁者が持っていたらしい。で、その国にアメリカが侵攻したときにお土産に持って帰ったらしい。弾は手に入れにくいが、意外に性能がいいから使っている」
「へえ」
カリギュラが尋ねると志茂はそう返す。
「さて、作戦だ」
志茂は武器の準備を済ませてから、テーブルの上に地図を広げる。
「防空壕はこの場所にある。もっと人数がいれば、包囲網を敷くこともできるのだろうが、あいにくこっちには3人しかおらん。戦力は分散させず、3人でまずは防空壕を叩く」
「それから?」
「ドローンを使って山狩りだ。1匹残らず、この山から連中を駆逐してやる。連中が村に降りてくる前に」
実際、レッドキャップによる人的被害はクマの比ではない。
レッドキャップは殺しの技術を身に付けており、道具を使って人を殺める。
レッドキャップによる悲惨な人的被害は度々報告されていた。
なので志茂がレッドキャップを恐れ、そして警戒するのも分かる。
「本当は犬がいればもっとやりやすいんだが、俺の愛犬の小太郎は1年前に老衰で死んじまったからな。よく訓練されていて、愛くるしい猟犬だったんだが……」
そう言って少し悲しそうな表情を浮かべる志茂。
「臭いを追うならこっちに任せろ。このカリギュラは鼻が利く」
「おう。俺様に任せろ」
俺たちはそんな志茂にそう言った。
「本当か? なら、任せるとしよう」
こうして俺たちは作戦を確認した。
防空壕という敵拠点を叩き、それから残敵を掃討する、と。
「では、お前ら──」
志茂がバトルライフルを手に告げる。
「戦争を始めよう」
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