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Case.58 取り違えられた荷物

今日の更新はこれにて終了です。応援よろしくお願いします。

……………………


 ──Case.58 取り違えられた荷物



 俺たちは麻薬カルテルが狙っている危険なブツ──オクソールの原料となる苗が国外に持ち出されるのを阻止するために行動している。


 すでに連中の移動手段であろうステーションワゴンのタイヤは潰し、護衛に雇ったであろうワーウルフは拘束した。


 あとは荷物を押さえに行った連中を捕まえるだけだ。


「コインロッカーはこっちだ」


 俺は熊本駅の白川口にあるコインロッカーに向かう。

 タクシー乗り場からコインロッカーはすぐだ。


「何だい、あんたら!」


 だから、さっきのアサルトライフルの銃声は相手に聞こえている。

 見れば写真に写っていた褐色の肌をしたラテン系の女、そしてもうひとり別の男が、黒いキャリーケースをコインロッカーから持ち出そうとしていた。


 俺たちの姿を見た男の方が腰のホルスターから銃を抜こうとするが、俺の方が先に銃口を相手の頭に向けた。


「おっと。そいつを抜くと悲劇になるぞ」


「クソ。あの飲んだくれワーウルフ、何を見張ってやがった……!」


 男はそう愚痴り、ホルスターからゆっくりと手を離す。


「お前ら、憲兵には見えないが?」


「便利屋だ。これは善良な一市民としての義務を果たしているだけだが」


 女の方は落ち着いて俺たちを観察していた。

 俺たちの格好や装備はとてもではないが、憲兵には見えない。


「これはあたしの荷物だ。荷物を持ち帰るだけだ。妨害されるいわれはないね」


「ホテルで起きたことは知ってるぞ。若者を拷問して殺しただろう」


「あいつがこの荷物を持ち逃げしたからだ!」


「持ち逃げした? あいつもお前らの仲間だったのか?」


 ヒステリックに叫ぶ女から俺は冷静に事情を聞こうとする。

 もうすでに憲兵には通報したので、憲兵が来るまでの時間稼ぎでもあるのだが、個人的に興味もある。


「違うよ。あたしらはナイトクラブで地獄の連中と取引して、バッグを受け取った。だけど、開けてみたらびっくり。入っていたのは大量のコンドームや大人の玩具、それからコスプレ衣装の類!」


「……まさかとは思うが、あの青年が間違ってお前らの荷物を持っていっちまったのか? 自分の荷物と間違って?」


「そうだよ! あいつが阿呆なことしなければ、誰も死ななかった!」


 そう言って地団駄を踏む女。


 写真に写っていたのはふたつの似たような黒キャリーケース。

 そしてハイになった上に酔っ払っていた芦田青年と女夢魔(サキュバス)。

 その近くで取引していた麻薬カルテル。


 ああ。なんてこった。

 とんでもなく阿呆で、そして不幸な結果だ。


「だからって殺すことはなかっただろう。不幸な行き違いだ」


 俺はそんな女にそう言う。

 そこで憲兵隊のパトカーのサイレンが響いてきた。


「全員、動くな!」


 憲兵たちは男と女に手錠を掛け、連行していった。

 キャリーケースの中身も確認され、中には麻薬探知犬が反応するオクソールの苗と思しき植物が詰まっていた。


「ご苦労様です、阿賀野さん」


 この場で俺たちが拘束されなかったのは、知り合いがいたから。

 石川大尉だ。

 俺は彼に直接通報したのだ。オクソールの原料と麻薬カルテルについて。


「善良な市民としての義務だよ、石川大尉。と言いたいところだが、こっちも慈善事業じゃなくてね。出すもの出してもらえるか?」


「道を歩けば凶悪事件にぶつかり、そして見事解決する便利屋さんには表彰状が必要でしょうか?」


「ははは。ナイスジョーク。俺たちが欲しいのは現ナマだよ、大尉」


 石川がにこやかに笑って言うと俺はそう言い返した。


「分かっています。軍政局としても助けられました。ですが、もういっそここまで来たのであれば、軍政局で軍属として働きませんか? 安定した収入が欠けているのでしょう? 軍政局の雇われになれば、給料は支払いますよ」


「やだよ。軍政局の軍属とか絶対薄給だろ。副業禁止になるし」


「まあ、それはそうですが考えてみてください。食べるのに困ってきたら」


「はいはい」


 俺は石川にそう言い、石川は一礼して立ち去った。


「……今回は俺のケツを蹴らないのな、カリギュラ?」


「お前が言うように軍政局の軍属になっても薄給だろうからな。それに俺様は軍政局のお役所仕事がどうにも苦手だ。書類、書類、書類と……」


 また定期収入のチャンスを逃したわけだが、カリギュラは納得していた。


「社会が回るのにはそういう仕事をしてくれる多くのデスクワーカーが必要なんだよ」


 俺だって仕事のたちにちゃんと契約書を準備しているのだ。

 契約を結んで、仕事を果たして、報酬を貰うのは大変なのである。


「報酬と言えば……クレイジー・イワンのことを忘れてた! アンジーをやつに届けるのが本来の仕事だ!」


「ああ! 俺様も忘れてた! 急いでホテルに戻るぞ!」


 それから俺とカリギュラは大急ぎで、ホテルへと戻った。



 * * * *



「助かったよ、便利屋さん!」


 それから2時間後のこと。


 クレイジー・イワンの隣にアンジーが並び、やつらは仲睦まじい姿を見せていた。

 俺たちの事務所でいちゃいちゃしている。

 お互いの尻尾でハートマークを作ったりと、それはもういちゃいちゃである。


「お前の彼女にもうちょっとドラッグと酒は控えるように言っておけよ」


「そうだぞ。今頃、頭ぶち抜かれて灰になっていたかもしれんのだからな」


 俺とカリギュラはそんなクレイジー・イワンとアンジーに苦言を呈する。


「もちろんだとも。なあ、アンジー?」


「ええ、イワン。早速無事の再会を祝って飲みに行きましょう!」


「そうだね!」


 こいつら俺たちの話、数ミリでも聞いてたか?


「マジで気を付けろよ? それから今回の仕事の報酬だが」


「準備してきたよ。50万円だったよね?」


 簡単な捜索になると思ってそこまで吹っ掛けておかなかったことを俺は若干後悔したが、あとで軍政局からも報酬はあるしな。


「じゃあな、おふたりさん。本当にもうトラブルは起こすなよ?」


「ああ、便利屋さん! 行こう、愛しいアンジー! 君に再び会えて私がどれだけ嬉しいかを伝えたい!」


 そして、クレイジー・イワンとアンジーのふたりは事務所を去った。


「カリギュラ。今日はどんな飯の気分だ?」


「俺様はステーキが食いたい! 分厚いヒレの!」


「よーし。じゃあ、ステーキ食いに行こう」


 報酬が入った俺たちも、早速豪勢な飯のために事務所を出る。


……………………

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