Case.48 非登録悪魔の巣窟
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──Case.48 非登録悪魔の巣窟
俺たちは憲兵隊の石川大尉から地獄に流出した武器についての調査を引き受けた。
俺とカリギュラがまず当たったのは、リッチーと交友を持った新谷だ。
「新谷さん? 先日お世話になった便利屋の阿賀野ですが」
『ああ。阿賀野さん! どうされました?』
「ちょっとご相談したいことがありまして。今もあの事件のリッチーと連絡を取り合っておられるのですよね?」
『ええ。彼とは今もアンティークの取引を。それがどうしました?』
「よければ彼にもう一度会わせてもらいたいのですが。どうでしょうか?」
俺がそう言うと少し間、沈黙が流れる。
『……もしかして憲兵関係だったりしますか?』
「どうしてそう思われました?」
『彼、登録悪魔じゃないって言ってましたから、それで……』
あのリッチーは登録悪魔じゃないのか。
ますますどうやって武器取引をしたか気になるな。
「いえ。彼を未登録だからといって問い詰めたいわけではありません。別のことについて話を聞きたいのです」
『う~ん。分かりました。連絡してみます。一度切りますね』
それから新谷が電話を切り、俺たちは彼女から連絡を待つ。
それから15分ほどして折り返しの電話があった。
『阿賀野さん。リッチーさん、会ってもいいそうです。場所をお伝えしますね』
「ありがとうございます」
こうして俺たちはあのときのリッチーに会う約束を取り付けた。
「すぐに向かうぞ」
「合点!」
俺たちは軽トラックに乗り込み、リッチーとの待ち合わせの場所に向かう。
リッチーが俺たちを待つのは市内にある主に非登録悪魔たちが屯する廃ビルだ。
ここには犯罪で登録悪魔としての権利が抹消されたものや、最初から登録悪魔になどなるつもりもなく地獄と地球を行き来している悪魔などが大勢いる。
なので、割と危険地帯だ。
犯罪組織も不用意に近づこうとしない場所である。
俺たちはそんな廃ビルに僅かな武装で踏み込んだ。
俺は腰のホルスターにHK45自動拳銃を、カリギュラはS&W M500を下げているのみ。
廃ビルのそばにすでに物騒なAK-47アサルトライフルで武装した悪魔がいるのを見ると、本当に落ち着かないものだ。
「カリギュラ。撃たれるまでは攻撃するなよ」
「分かってる。無駄なトラブルは起こさない」
「それでいい」
俺たちはアサルトライフルを抱えた悪魔ににこにこと笑って会釈すると、廃ビルの中に入っていった。
悪魔は怪訝そうに俺たちを見たが憲兵の類ではないと思ったのだろう。俺たちをそのまま通過させた。
廃ビルの中はホームレス同然の悪魔たちが段ボールや廃材の上に寝ている。
「わざわざ地球でこんな生活をするぐらいなら、地獄に戻ればいいのにな」
「いろいろ事情があるんだろう。お前みたいに」
「俺様みたいに、か」
カリギュラも敗軍の将であり、肉体の80%を喪失したことで地獄に戻れなくなった。
地獄に戻れば責任を問われるだろうし、権力争いに巻き込まれれば今のカリギュラでは生き残れない。
俺はそう思っていた。
「俺様が地球にいる理由の半分は焼肉のためだぞ。あれはシンプルながら地獄では味わえないものだからな」
「ははは。そのうち地獄に焼き肉屋を出店するやつも出るだろうさ」
俺たちはそんな言葉を交わしながら、廃ビルの中をリッチーとの待ち合わせ場所へと向かう。
リッチーが指定したのは、廃ビルの5階にあるかつて女性向けブティックが入っていた場所だ。
そこは武装したスケルトンが立ち、他の悪魔たちが近寄ろうとしない場所だった。
「リッチー。阿賀野とカリギュラだ。話に応じてくれるんだろ?」
俺が黒い天幕に覆われた店内に向けて声を掛けると、武装したスケルトンは脇に退き、俺たちに通るように促した。
「よくぞ来た、阿賀野にカリギュラよ……」
リッチーはテナントの中に占いの館みたいな空間を作っていた。
部屋の真ん中には小さな円卓が置かれ、その上には怪しく輝く水晶玉だ。
全体的に薄暗いその空間でリッチーは俺たちを出迎えた。
「ああ。お前に聞きたいことがあって来た。交戦の意志はない。この通り」
「分かっている。私もまたお前たちと争うつもりはない」
俺が両手を半分上げて言うとリッチーも頷き、俺たちに椅子を勧めた。
「なあなあ。ここで何をしているんだ? 占い屋か?」
「いいや。私は調べているのだ。地獄とこの地球がどうして繋がったかを」
「地獄と地球が繋がった理由……?」
カリギュラが能天気に尋ねるのにリッチーは平坦な口調でそう答える。
俺とカリギュラは予想外なその返答に首を傾げた。
「ああ。疑問に思ったことはないか? どうして地獄はこの地上に姿を見せたのか」
リッチーはそう尋ねて話を続ける。
「秘密主義者である地獄の国王たちの陰謀かもしれない。あるいは地球の人間の企てかもしれない。いずれにせよ膨大なエネルギーがこのふたつの世界を繋ぎ、結び付けた。しかし、その膨大なエネルギーはどこから生まれたのか?」
リッチーは俺たちにそう問いかける。
「私はそれを探っている。もし、その手段が分かればもっと様々な世界を旅することもできるかもしれないからな」
「なるほどね」
確かに疑問だった。
地獄と地球はどうして接続されたのか?
その真相はカリギュラすらも知らないのだから。
「お前たちは別のことに関心を持っているように見える。私が応じられることならば応じよう」
「ああ。お前がスケルトンに持たせている銃火器。あれはどこから手に入れた?」
ここでようやく俺たちは本題に入った。
「あれか。あれはある悪魔から手に入れたものだ。もっとも真っ当な仕事をしている悪魔ではないが……」
「悪魔からか? 人間ではなく?」
「あれが地球製の武器であることは私も知っている。地獄で作られた粗悪なコピー品ではないことも。だが、手に入れたのは間違いなく悪魔からだ」
意外な事実だった。
俺たちはてっきり地球の悪党が武器をリッチーに売ったのかと思ったが、そうではないらしい。
リッチーは同じ悪魔から武器を購入したと証言している。
「その悪魔について教えてくれるか?」
「……憲兵に突き出すのか?」
「場合による。お前とのトラブルのときのように銃撃戦が少々混じっても平和的に終わるかもしれない」
「ふむ。分かった。名前を教える。その悪魔の名前は──」
リッチーが告げたその名前は俺たちがすでに知っている名前だった。
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