Case.47 カラシニコフの謎
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──Case.47 カラシニコフの謎
先日、解決したストーカー事件について俺はちょっとした疑問を抱いている。
あの大量の銃火器はどこから出回ったのか、だ。
あの場にはちょっとした内乱が起こせそうなほどの銃火器が集まっていた。
悪魔が銃を使うこと自体には驚かないとしても、あの数はおかしい。
そんなわけで俺は現場から回収したAK-47アサルトライフルを調べていた。
「製造元はロシアのトゥーラだな。よく犯罪組織に出回ってるデッドコピーってわけじゃなさそうだが……」
刻印を見ながら俺はそう呟く。
「ロシアに伝手のある犯罪組織から流出したのか、あるいは地獄を相手に武器取引をやっている野郎がいるのか……」
俺はマガジンを外した状態のアサルトライフルをよく観察する。
防錆の油がまだ濃く残っているところから見て、長期保存されていた可能性がある。
それに刻印の番号からしてかなり古い代物だ。
このことから推察されるのは……。
「阿賀野~。探偵ごっこしてないで仕事探せよ~」
俺がアサルトライフルを弄り回してるとカリギュラがそう言う。
「うるさいな。仕事ないんだからしょうがないだろ」
「何もないのか? あれからもう1週間だぞ~?」
「ないものはないの」
ストーカー事件を解決してから1週間。
俺たちに次の仕事はなかった。
まだまだ貯蓄は幾分かあれど、お金が出ていくばかりで入ってこないのは落ち着かないものである。
「あーあ。俺様も一度でいいから仕事で忙しい~って言ってみたいぜ」
「全くだな」
軍隊にいたときはそれはもう毎日が任務に次ぐ任務で忙しかったが、自営業になってからは暇で暇でたまらない。
スケジュールは真白でがらがら。
来る電話は詐欺か、世論調査。
メールは音信不通で、ときどき迷惑メール。
カリギュラは1日中サブスクでアニメやドラマを見ており、俺はこの通り椅子に座って探偵ごっこ。
口が裂けても仕事で忙しいとは言えない。
そんなときだ。
メールの着信音が響いた。
「ん……?」
「仕事か?」
「いや。軍政局からのメールだが……」
俺はそのメールの差出人を見た。
それはよく知っている名前であった。
「石川大尉からだ。仕事かどうかは分からないが、軍政局のオフィスで会いたいとさ」
* * * *
俺たちは旧熊本県警本部内にある石川大尉のオフィスに向かった。
「やあ。よく来てくれましたね、阿賀野さん」
「仕事の話なのか?」
「部分的には、そうなります」
あいまいな石川大尉の物言いに俺は嫌な予感がした。
「住宅地で銃撃戦があり、それにあなた方が関与していたという情報が寄せられているのですが、身に覚えはありませんか?」
「さて? 何のことやら?」
俺は視線を泳がせてそう言う。
「あなた方のことなので理由あってのこととは思いますが、市街地での武器使用には慎重になってください。今回は被害者が出なかったものの、流れ弾や跳弾による被害が無視できないのは元軍人であるあなたもご存じでしょう?」
「向こうが撃ってこなければこっちだって撃たないさ」
石川大尉の言うことはもっともだが、その文句は俺たちではなくあのリッチーに言ってくれと思う。
「ともあれ、あの現場にはいたのですね?」
「ああ。依頼人がその場にいたからな」
「現場に落ちていたスケルトンの残骸と銃火器ですが、銃撃戦と関係ありますか?」
「ある。スケルトンどもがカラシニコフ構えて乱射していた」
銃撃戦の原因はそれだよと俺は言った。
「ふむ。現場には大量の銃火器が残されていました。それも地獄でデッドコピーされているような粗雑なものではなく、地球で作られたものです。軍政局と憲兵隊はこれを大きな事件だと見ています」
今やカラシニコフは地獄でもデッドコピーされるようになった。
もちろんライセンス料なんて払われてない。
かの偉大なるミハイル・カラシニコフが聞いたら嘆くことだろう。
「この熊本のどこかに地球製の武器を地獄に売買している悪党がいる。憲兵の懸念はそんなところか?」
「ええ。悪徳兵器ブローカーの存在を我々憲兵隊は懸念しています」
石川大尉の懸念は俺が言った通りだ。
地獄相手に兵器密売を行っている悪党がこの熊本にいる、と。
地獄とはカリギュラ討伐後に停戦こそ成立したが、今も再侵攻の可能性がある。
そんな潜在的な敵勢力と言っていい相手に地球の人間が武器を売っているのは、裏切り者の誹りを逃れられないだろう。
「我々はこれがただの単純な銃火器の密売に留まっているのか。それともより高度な装備の流出も起きているのか。確かめたいと思っています」
「で、俺様たちには何をしろと?」
「あなた方はあの銃火器の持ち主と交戦しているのでしょう? そこから銃火器の出所を調べてはもらえませんか? もちろん調査報酬はお支払いします」
「いくらだ?」
「着手金に20万、成功報酬に80万でどうでしょうか?」
「乗った!」
成功すれば100万円という仕事が回ってくるのにカリギュラがぐっとこぶしを握り締めて頷く。
俺もそれだけ稼がせてもらえるなら異論はない。
「では、調査のほどをお願いします。あの大量の銃火器がどこから流れてきたのか。そして、銃火器以外の装備も出回っているのか。それらについて調べてください。期待していますよ」
石川大尉はそう言い、俺たちに着手金の20万円を支払う。
久しぶりのどっしりとした札束の重さに俺たちはにっこり。
「オーケー。俺たちに任せておきな」
「俺様たちがこの謎を解き明かしてやろう!」
俺たちはそう言って仕事を引き受け、軍政局の外に出た。
「よし。まずはあのリッチーから話を聞こう。やつが武器を買った相手を特定する」
「合点。なら、新谷に連絡を取らないとな」
「ああ。善は急げだ。新谷さんに連絡して、リッチーに会わせてもらおう」
俺たちはそう言葉を交わし、動き出す。
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