Case.46 交渉も戦闘手段のひとつ
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──Case.46 交渉も戦闘手段のひとつ
スケルトンをさらに召喚するリッチー。
「死んでもらおう、カリギュラ」
武装したスケルトンたちが、やはり着剣したAK-47アサルトライフルなどで武装し、カリギュラに銃口を向ける。
「そんな雑魚で何とかなるとでも?」
「今の弱体化したお前にはこれで十分だ」
不敵に笑うカリギュラと感情を見せないリッチー。
そしてスケルトンたちが一斉に発砲。
スケルトンたちはがたがたと骨を揺らしながらアサルトライフルを乱射する。
カリギュラが電柱の影に飛び込み、そこからスケルトンたちに向けて炎を放つ。
高熱の炎がスケルトンたちを火葬していくが、スケルトンの数は多い。
「カリギュラ! こっちからも援護する!」
俺はベランダからM27 IARアサルトライフルを構え、その狙いをリッチーに向けた。
光学照準器を覗き込み、確実にリッチーの脳天をぶち抜けるように狙いを定め、俺は引き金を引いた。
放たれた2発の銃弾は確実にリッチーの頭をぶち抜いたが──。
「そのような玩具で私が倒せると思ったか?」
脳天をぶち抜かれたはずのリッチーは平然としており、その傷はみるみるうちに回復していく。
まるでビデオを逆再生したみたいに傷は塞がり、リッチーは俺の方に視線を向ける。
「死ぬがいい」
リッチーの手からレーザーのような光が伸びた。
それは俺の心臓と肺を貫き、俺は口から気泡の混じった血を吐きながら崩れ落ちる。
「あ、阿賀野さん!?」
新谷が悲鳴を上げるのが聞こえてきた。
彼女が俺の方に駆け寄ってくる。
俺は悲痛な表情の彼女を見上げ──。
「ああ。クソ。また服がお釈迦だぜ」
すっと立ち上がって、口の中に残っている血をぺっと吐き捨てた。
「え? あれ? い、今、心臓を貫かれて……」
「俺は不死身なので大丈夫ですよ。お気になさらず」
「は、はあ」
俺が不死身なのを見ると、大抵の人間はリアクションに困るものだ。
「お前……噂の竜殺しか……。まさかカリギュラと組んでいたとは……」
リッチーはここで初めて感情らしい感情を見せた。
それは驚愕という感情である。
「噂になっているかどうかは知らないが、俺は確かに竜殺しだぞ」
「不死身の肉体を手にした人間か。だが、私も同じように不死の肉体を手にした。決してお前に劣りはせぬ」
「おうおう。なら、死にたくなるまでぶち抜いてやるぜ」
俺はそう言って再びアサルトライフルを構えると、リッチーに向けてライフル弾を叩き込みまくった。
脳天に、胸に、腹部に、あらゆる場所に俺は銃弾を叩き込んだ。
しかし、リッチーは銃撃を受けた衝撃で多少よろめきこそすれど、地面に倒れることはなかった。
「無駄だと言ったはずだ。愚かな行為だぞ」
「いいや。無駄じゃないぜ?」
俺はにやりと笑う。
「わはは! その通りだ! 無駄ではない!」
そう、俺がリッチーの注意を引いている間にカリギュラが召喚されたスケルトンどもを片付けたのだ。
そしてカリギュラは次の獲物としてリッチーに炎を放つ。
「いいぞ!」
リッチーは松明のように燃え上がり、呻き声を漏らし、俺たちは歓声を上げる。
だが、いくら燃やそうともリッチーは完全な灰にはなってしまわない。
「この程度の炎で焼き尽くされるほど私は脆弱な存在ではない……!」
そして、リッチーがそう宣言するとやつの周囲に光の壁が生じ、カリギュラの炎が振り払われた。
「全盛期のお前であればリッチーである私であろうと焼き尽くせただろうが、今のお前に私を殺すことはできん。諦めるがいい、カリギュラ」
リッチーはそう言い、再びスケルトンを召喚する。
武装したスケルトンたちが魔法陣からわらわらと湧き出る。
「畜生。手詰まりか……!?」
「あ、阿賀野さん! 軍政局に通報して憲兵に来てもらいましょう!」
俺が唸る中、新谷がスマートフォンを取り出した。
そこでリッチーの視線が素早く新谷に向けられる。
俺が見る限り、そこでやつの見せた感情は驚きと恐怖だ。
「……おや? 憲兵を呼ばれるとまずいってわけじゃないだろう。なあ、カリギュラ、リッチーの弱点ってのはあるのか?」
「あるぞ。やつらは自分の魂を肉体から別の容器に移すことで、不死身になっているんだ。その容器を破壊すればやつらは死ぬ。だが、そんな大事なものを持ち歩くはずもないだろうし……って、んん?」
リッチーは言っていた。
自分の大事なものを新谷が握っていると。
そして、やつは新谷がスマートフォンを取り出したと同時に反応した。
「ほほう。それはこれだったりするか?」
俺は新谷のスマートフォンにストラップとして付けられた緑色の宝石を突く。
「それに手を出してみよ。貴様に恐ろしい死が降りかかるぞ……!」
「俺、不死身だし~」
「ぐぬぬ……!」
これまでも俺を呪いの類で殺そうとした悪魔は何名もいたけど、どれも不発に終わっている。
リッチーの反応を見るにやつの魔術でも俺を殺すのは無理っぽいな。
「じゃあ、さくっとこいつをぶち壊して……」
「ま、待て! 実力行使に出たことは謝罪する! それを壊すのだけはやめてくれ!」
「殺しにきといて何言ってやがる」
リッチーが慌てふためくのに俺は新谷から宝石を受け取り、地面にたたきつけようと持ち上げた。
「そ、そこの女! お前の集めているような古い品を私は大量に持っているぞ! それと引き換えにそれを返してはくれないか!?」
「えっ!?」
ここでリッチーが交渉を呼びかけたのは、新谷であった。
新谷はリッチーのその提案に目を輝かせるのが俺にも見えた。
「古い絵画や家具、アクセサリーなどお前に譲ろう! だから、それを壊すのだけはやめてくれ! 頼む!」
「えーっと……」
新谷は俺の方に視線を寄越す。
俺は首を横に振りたかったが、この宝石は彼女のもので決定権は彼女にある。
「リッチー。こいつを取り戻したら、もう二度と新谷さんや他の人間に手を出さないって誓うか?」
「誓う。我らが地獄の大君主たるサタンの名において誓う」
「分かった。……新谷さん、どうぞ交渉してください」
俺は小さく溜め息を吐くと、新谷にそう促した。
彼女はトトトっと階段を駆け下り、裏手の駐車場でリッチーと対峙する。
それから交渉は始まった。
「具体的にどういう品があるか見せてもらえますか?」
「うむ。例えばこの絵画は地獄の国王たるベルフェゴールが──」
「──おおっ! 凄く、凄く地獄っぽい絵です!」
「分かるか? お前はセンスがいいな。ならばこれも気に入るだろう──」
絵画、家具、時計、アクセサリーなどなど。
リッチーは魔法陣からスケルトンにそれらを運ばせて、新谷に見せていく。
先ほどまで銃撃や魔法が飛び交った裏手の駐車場は、今やあたかも蚤の市のようになっていた。
「……なあ、本当にこれでいいと思うか、カリギュラ?」
「……本人が満足しているからいいんじゃないか?」
俺たちはアンティークに関する会話で盛り上がる新谷とリッチーを見ながらそう呆れ気味に言葉を交わす。
この後、交渉はまとまり新谷はお宝をゲットしてほくほく。
リッチーも自分の魂が収められた宝石を取り戻してほくほく。
俺たちはストーカー事件解決の報酬30万円を受け取ってほくほく。
ストーカー騒ぎは思いのほか、平和的に解決されたのだった。
後日、聞くところによれば新谷はあれからもリッチーとやり取りし、彼から地獄のアンティークを取り寄せているとか。
面倒に巻き込まれないといいのだが……。
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