Case.45 女子割引 VS シルバー割引
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──Case.45 女子割引 VS シルバー割引
俺はスケルトン軍団の周囲をよく観察する。
スケルトンは自然発生するものではない。
低位魔獣である連中は死霊術師によって生み出され、操られる。
そして、死霊術師を殺せば無力化できる。
要は一種の無人地上車両みたいなもんだ。
「クソ。この付近にはいないな……」
そして昨今の無人戦闘地上車両のように、スケルトンも一定の自律行動が可能になっている。
というわけで、死霊術師が1体ずつ操作せずとも、スケルトンは戦闘可能である。
そんなスケルトンたちは俺の姿を視認すると一斉に銃口を向けてきた。
「ああ。畜生」
銃声、銃声、銃声。
けたたましい銃声が響き、俺はアパートの駐車場に止めてあった車両の影へ。
「カリギュラ! そっちは大丈夫か!」
『凄い銃声がしているが、こっちは大丈夫だぞ。そっちに援軍に行こうか?』
「ダメだ。お前は新谷を守っていろ。こっちは、そうだな、どうにかする!」
『合点だ!』
不幸中の幸いは死霊術師が銃の扱いに慣れていなかったことだろう。
スケルトンどもが使用している銃はAK-47アサルトライフルも、PKM機関銃も、どれも反動が激しいものだ。
そしてスケルトンにはその反動をしっかり支えられるだけの筋肉がない。
というか、やつら、スケルトンなだけあって骨だけだし。
その上、そんな銃をフルオートでぶっ放しているので、狙いは逸れる逸れる。
俺はスケルトン軍団が俺よりも自分たちが握っている銃相手に四苦八苦しているのを確認して遮蔽物から飛び出した。
「銃ってのはこうやって使うんだぜ、兄ちゃんたち!」
俺はM27 IARアサルトライフルでスケルトンの頭をぶち抜きながら前進。
スケルトンどもが狙いの定まらない銃を振り回しているだけだと分かった以上、過剰に連中を恐れる必要はない。
次々に頭部を破壊され、戦闘不能になるスケルトン。
どういうわけか脳みそが入っているわけでもないのに、スケルトンは頭部を破壊されると動かなくなる。
そりゃ全身ぼきぼきに砕かないと死なないって言われても困るけどさ。
「────!」
ようやく自分たちの置かれた状況を理解したのだろう。
スケルトンたちは声にならない雄叫びを上げると、銃剣を装着したアサルトライフルを振り回して襲ってきた。
「そっちの方がお似合いだな」
俺は銃剣を突き出してくるスケルトンをいなしながら、銃床で頭部を殴りつける。
スケルトンの頭部は竜殺しの俺の腕力で繰り出された打撃を前に砕かれていく。
それでもスケルトンは突き進んでくる。
こいつらは無人地上車両と同じで恐怖など感じないからだ。
仲間がいくら破壊されようと、恐怖せずに突っ込んでくる。
それがちとばかり厄介だ。
「ぐっ……!」
銃剣付きアサルトライフルを槍のように構え突撃したスケルトンの1体が俺の腹に銃剣を突き立てた。
腹部に痛みというより熱さが感じられ、内臓が抉られるのを感じる。
大量の血が流れるが、俺は止まらない。
「痛いだろうが!」
俺は腹に銃剣を突き立てたスケルトンの頭を銃床で粉砕し、残るスケルトンどもの相手を続ける。
『阿賀野! やばいぞ! 裏手から別動隊だ!』
「何だって!?」
俺がスケルトンを半数以上壊滅させたころ、カリギュラからそう連絡があった。
『スケルトンが数体とそれからあいつは……──!』
「どうした、カリギュラ!?」
突然、カリギュラからの報告が途絶え、俺は焦った。
まさかカリギュラが負けるなんてことはないと思うが……。
「クソ。応答しろ、カリギュラ!」
残るスケルトンを殴り砕き、俺は階段を駆け昇って新谷の部屋へ急ぐ。
「新谷さん! カリギュラ!」
「あ、阿賀野さん!」
新谷は無事だった。彼女はフローリングの床の上にへたり込んでいる。
だが、カリギュラの姿が見えない。
そして窓は激しく割れており、そこには血の跡だ。
「新谷さん、カリギュラはどこに!?」
「ま、窓から飛び出して外に……」
そこで裏手の駐車場で炎が上がるのが見えた。
俺が窓ガラスの破片を踏み越えてベランダに出ると──。
「あれは……!」
ローブの男がいた。
新谷がストーカー被害を訴えていた悪魔らしき存在だ。
カリギュラはそれと対峙している。
すでに地面には炎の痕跡が刻まれ、スケルトンの残骸も転がっていた。
「カリギュラ!」
「阿賀野! 気を付けろ、こいつは……!」
ローブ姿の男のフードが風で煽られて取り払われる。
その下にあったのは、ミイラのようになった人間の顔だ。
剥き出しになった歯、腐り落ちたのだろう鼻、そして爛々と赤く怪しく輝く目。
それは初めて見るタイプの悪魔であった。
「不死者の王にして不死の魔術師──リッチーだ……!」
カリギュラはその正体を言い当てる。
「地獄の元帥カリギュラよ。そのような姿になっているとは……哀れなことだ」
そのリッチーとやらはやたらと低い声でそう語る。
「誰もが羨んだあの巨躯も、美しく輝いた白い鱗も、力強く羽ばたく翼も失って、力なき女の姿に落ちているとは。本当に哀れなことだ」
「ははん。俺様は今の状態に満足しているぞ? この姿だと──」
リッチーの言葉にカリギュラはにやりと笑う。
「女子割引が効くからな! 映画館でも、喫茶店でも、焼き肉屋でもドラゴンの姿でいるより安く飯が食える! わははは!」
……今、その話する必要あるか?
確かに今のカリギュラは女子割引を活用しているけどさ。
「貴様こそ哀れなものだな、リッチー。そんなに醜い面では誰ひとりとして飯を奢ってくれないぞ?」
「……食欲などとうの昔に消えた。今の私にあるのは知識への欲望だけ。知識を追求し、魔術を極めることのみが私の欲望だ」
「ほう? 若い女のケツを追い回していたのにか? 説得力ないぞ!」
カリギュラがリッチーにそう指摘する。
そうだ。こいつがストーカーなら、性欲ありまくりじゃねーか。
「……あれは違う。私の大事なものをあの女が握っているからだ。それを返してもらいに来ただけ」
「大事なものって?」
「言えぬ。そして、言う必要もない。お前たちを殺して奪うのみだ」
リッチーはそう宣言すると魔法陣からさらなるスケルトンを召喚した。
どうやら激しい戦いになりそうだ。
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