Case.44 アンティークの収集は歴史の収集
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──Case.44 アンティークの収集は歴史の収集
俺たちはストーカー被害に悩まされているという新谷の自宅に向かった。
新谷の自宅は俺たちが話した喫茶店からさほど離れておらず、徒歩でも15分程度で到着した。
「ここです」
新谷が指さすのは、俺たちが住んでいるアパートよりずっと立派なアパートだ。
その3階に彼女の部屋はあった。
「さあ、上がってください」
「お邪魔します」
俺たちは新谷の部屋に上がり、部屋の中を見渡す。
部屋の中には様々な古い置物や家具、アクセサリーなどがあった。
「アンティークがご趣味で?」
「ええ。リサイクルショップ巡りが趣味なんです。特にこの熊本だと珍しい品に出会えて楽しいんですよ」
そう言ってにこにこと笑う新谷。
どれもよく手入れされ、また整理整頓され、まるで博物館みたいだ。
「昨日、部屋に侵入されたときに何か盗られたものはありませんか?」
「たぶんないと思うんですけど。何分、物が多いものでまだ確認できていないんです」
「そうですか。なら、金銭やクレジットカードの類はどうです?」
「それは大丈夫でした。一切取られていません。だけど、それがまた不気味で……」
金目のものは盗らずに、ただ侵入した……?
となると犯人は新谷が思っているように悪魔のストーカーで間違いなさそうだが。
「カリギュラ。臭いの方はどうだ?」
「すんすん。この部屋全体から古い悪魔の臭いがするぞ。臭いの元は……」
カリギュラが視線を走らせる。
「あれらだな。あのアンティークとやら、地獄から流出した品じゃないか?」
カリギュラが見るのは新谷が趣味で集めているアンティークの品々。
それらから古い悪魔の臭いがするとカリギュラが言う。
「ええ!? これが地獄から……?」
新谷はそう言うと驚愕し──目を輝かせた。
「素敵! 前々からただのアンティークじゃないとは思ってたんですけど、地獄から伝わってきた品だなんて! これからはもっと大事にしないと!」
「ああー……。そうですね……」
地獄からの品と言われると普通は不気味に思いそうなものだが、新谷にとっては違うらしい。
「正直、地獄の品なんてろくなものがないから捨てた方がいいぞ」
「そんな! 地獄からここまで旅してきたこの可愛い子たちを捨てるなんて!」
呆れたようなカリギュラの言葉に新谷はそう叫ぶ。
「アンティーク収集の何が楽しいかと言えば、そのアンティークが辿ってきた旅を感じることなんですよ。長い時間を、長い距離を、様々な人々の手を旅してきたアンティークほど愛おしく感じるものなんです」
「は、はあ……」
アンティーク趣味について力説する新谷に俺は頷くしかなかった。
「カリギュラ。他に臭いは? 具体的にどういう悪魔かは分からないか?」
「古びた臭いがするから、年老いた悪魔だろうが、それ以上のことは分からないな」
「ふうむ。老齢の悪魔か……。やばいタイプのやつか?」
「俺様に比べればやばくはないが、それなりに脅威だろうな」
そう言って、からからとカリギュラは笑う。
「そうなるとまずいな。これがちゃちな低位悪魔や魔獣による悪戯なら容易いんだが」
年老いた悪魔というのは得てして危険なものだ。
やつらは狡猾で、強い力を持っている。
地獄戦争のときにもやつらは脅威であった。
しかし、いまいち理解できないのはそんな老齢の悪魔がどうして人間相手にストーカーなんてやっているのか、だ。
「どういう理由が考えられる?」
「さてな。あの女に一目惚れでもしたんじゃないか?」
「冗談を言ってる場合じゃないぞ」
「そう言われてもな。俺様にもさっぱり想像がつかない」
カリギュラにもお手上げの様子だ。
「となると、できるのは問題の悪魔を取っ捕まえることぐらいか」
「そうだな。それが手っ取り早い。ストーカーの理由は悪魔から聞けばいい」
俺たちはそこで新谷の方を向く。
「新谷さん。暫くの間、俺たちが身辺警護に当たります。問題の悪魔を捕まえれば、それで問題は解決するでしょうし。よろしいですか?」
「は、はい。お願いします」
俺たちは新谷の許可を得て、行動を開始。
「俺は家の外を、このカリギュラが家の中を見張ります」
「家の中は俺様に任せろ」
女性の家なので家の中は同じ女であるカリギュラに任せた。
俺は家の外で軽トラックからアパートを警備することに。
「カリギュラ。ストーカー悪魔が手を出すまでは殺すなよ。事情を聞くんだからな。それから人の家だから炎を使うときは用心しろ」
「わははは。分かってる、分かってる」
「本当に分かってるよな……?」
こうなってはカリギュラが問題の悪魔を焼き殺さず、また家も焼かないことを祈るのみである。
* * * *
俺は外に止めた軽トラックの中で、新谷をストーキングしている悪魔が現れるか監視している。
「一応銃を持ってきておいて正解だったな」
俺の手元には車に乗せておいたM27 IARアサルトライフルと腰のホルスターに下げたHK45自動拳銃がある。
しかし、相手がアンデッドである場合、この手の武装はいまいち頼りにならない。
「手榴弾や梱包爆薬、欲を言うなら無反動砲がほしいところだ……」
人口密集した市街地でそういうものをぶちかましていいかどうかは別として、地獄戦争中はそういう爆発物はアンデッドによく効いた。
「カリギュラ。聞こえるか?」
『聞こえるぞ~。こっちは問題なしだ』
俺とカリギュラはインカムがちゃんと機能するかを確認する。
「何かあれば知らせてくれ。俺は外から監視を続ける」
『合点だ』
それから俺は日が暮れて、夜になる中で監視を継続。
そして、とっぷりと夜の帳が下りたころだ。
「……ん」
俺の視線の先に何かが見えた。
それに目を凝らすと──。
「畜生。団体さんかよ……」
AK-47アサルトライフルやPKM機関銃で武装したスケルトンが10体前後、アパートの方に向かってきた。
どうやら問題のストーカーは追いかけ回すだけなのには飽きたらしい。
「クソッタレめ。カリギュラ、警戒しておけ。お客さんが来たぞ……!」
俺はそう言い、アサルトライフルを手に軽トラックを降りた。
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