Case.42 アスファルトの上のミミズ
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──Case.42 アスファルトの上のミミズ
俺たちは旅行の帰りに地中から人間を襲う魔獣デスワームに襲撃され、重機の上に籠城を強いられていた。
そして、今そのデスワームをぶち殺すために3秒のカウントダウンが始まっている。
「3────」
俺は地面を見つめる。地割れのようなひびが生じた道路だ。
「2────」
ぐっと足に力を込める。俺の脚力は竜殺しブーストのそれでそれなり以上だ。
「1────」
いつでもスタート可能。やってやるぜ。
「0!」
そして、俺は地面に飛び降りた。
すぐさま地震のような振動が響き、俺は一気に走る。
デスワームは地中を素早い動きで移動してるらしく、俺はとにかく走った。
道路を飛び出し、草原の上を駆け、デスワームを引き付ける。
「うおおおっ! 来たぞ、来たぞ!」
振動が激しくなり、足元が揺れる。
地面に亀裂が生じ、俺はそれに足を取られないように走りながら、ぐるりと大きく回るようにカリギュラがいる重機を目指す。
「カリギュラ! 出てきたらすぐに燃やせよ!」
俺はそう叫んだとき、地中からデスワームが飛び出してきた。
鋭い爪の並ぶ巨大な口が俺を噛み砕こうと伸び、それに対して俺は振り返りざまにHK45自動拳銃を発砲。
頭部に45口径拳銃弾が叩き込まれるが、デスワームはびくともしていない!
「畜生! やっぱりか! カリギュラ、頼むぞ!」
「死ねっ!」
地上に現れたデスワームに向けて炎が叩き込まれる。
デスワームの頭部が炎に包まれ、やつはのたうちながらも地中に引っ込もうとした。
「させるか! 逃がさんぞ……!」
俺はそんなデスワームの頭部を掴み、ぐいっと地中から引きずり出す。
俺の竜殺しとしての腕力を前にずるずると引きずり出されていくデスワーム。
地面に出てしまえばアスファルトの上でのたうつミミズそのものだ。
そうなってしまえば、もはやこいつは脅威ではない。
「カリギュラ! こんがり焼いてやれ!」
「合点!」
カリギュラはデスワームの全身を炎で包み、全身を炎で包まれたデスワームは悶え、暴れ、そして異臭を発しながら丸焼きになっていった。
「デスワームの姿焼き、いっちょうあがり!」
「はあ。流石に今回はビビッたぜ……」
カリギュラが重機の上でにやりと笑うのに俺の方は深々と溜め息。
温泉に浸かってゆっくりしたばかりだというのに、ミミズに食われたらがっかりって騒ぎではない。
「カリギュラ。他にはいないな?」
「臭いはこれだけだな。それに成体のデスワームは基本的に単独で行動する」
「そうか」
俺たちはデスワームが2体いる可能性にも備えたが、その心配はいらないようだ。
「おーい。問題の魔獣は駆除できたぞー!」
「おおっ! ありがとう! 助かった!」
俺たちが岩の上にいる3名の作業員に声を掛けると、彼らは安堵した様子で岩から降りてきた。
「本当に助かりました。あのまま岩の上で干上がってしまうかと思っていましたから」
「俺たちが通りかかってよかったな。ここら辺は何もないし」
作業員たちが礼を言うのに俺とカリギュラは周囲を見渡す。
この付近はひたすら草原が広がっており、民家も何もない。
「しかし、お前たち、ここで何の工事をしていたんだ?」
「地中に電気のケーブルを通しているんですよ」
「電線の地中埋設ってやつか?」
「ええ。阿蘇にあるUNEの地熱発電施設からの高圧ケーブルの延伸作業です」
「UNEの地熱発電施設……?」
俺はどこかで聞いた単語を聞いて、どこで聞いたかを思い出そうとする。
「ああ。思い出した。地獄戦争が起きたときに工事中だった施設だな。あれ、完成していたのか?」
「ええ。戦争が終わってからほぼ完成しました。このまま工事が進めば阿蘇の地熱を利用することで安定した電力供給が行えるようになるはずです」
「それはありがたいな」
俺と作業員たちが言葉を交わしている中、カリギュラが首を傾げる。
「地熱発電……? そんなものが阿蘇にあったのか?」
「ああ。ニュースで見た。阿蘇山の膨大な火山エネルギーを利用しようという試みだったはずだ。地球のエネルギーってのは膨大なものだからな」
「ふうん。この阿蘇にそんなものがね……」
「地熱発電のせいで温泉が出づらくなる、なんて話もあるけど温泉は楽しめたな」
それが理由で地熱発電所の建設に反対する市民もいたので、俺は記憶していた。
「……地熱発電、か……」
「何か思うところがあるのか?」
「いいや。ただ──」
カリギュラは阿蘇山の方を見る。
そこで地獄と繋がる空間の裂け目が生じ、地獄が押し寄せたのだ。
「──そのエネルギーはどれほどのものなのだろうな?」
カリギュラはそう呟くように言ったのだった。
* * * *
俺たちはそれから自宅に帰った。
「旅から帰ってくると何となく寂しくなるよな」
「そうだな……。またこの狭苦しくてダサいアパート暮らしに逆戻りだ……」
「うるせえ。ダサいって言うな」
帰るなり自宅に文句を言うカリギュラ。
まあ、確かに綺麗な旅館に比べたら、うちのアパートは小汚いかもしれないけど。
「それでも言うだろう。おうちが一番ってな」
「誰が言ったんだよ?」
「昔の児童文学の登場人物」
カリギュラが尋ね、俺が答える。
熊本はカンザスじゃないけど、悪くない場所だ。
「さて、明日からまた仕事だぞ」
「仕事があればいいけどな」
「それ言うなよ……」
休暇は終わったが、仕事があるとは限らない。
辛い現実だけが戻ってきたのである。
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