Case.36 第二種接近遭遇
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──Case.36 第二種接近遭遇
「だからね。全部、宇宙人の仕業なんですよ」
俺たちの前で深刻そうな表情でそう語る農作業着の男性。
俺とカリギュラも険しい顔をして、その話を聞いていた。
さて、どうして俺たちは宇宙人の話を聞く羽目になったのかについて振り返ろう。
依頼が来たのは昨日のことだ。
依頼は1通のメールから始まった。
メールの着信音が響いたのは、グーラの事件を解決してから3日後のこと。
「ん……?」
俺はそのメールの内容に目を通して、首を捻った。
「どうした、阿賀野? 依頼のメールじゃないのか?」
「依頼のメールではあるんだが……」
「あるんだが?」
「どうにも内容が妙なんだよ」
俺はそう言ってカリギュラにもメールを見せる。
「……牧場の家畜が毎晩のようにキャトルミューテーションされて困っています? キャトルミューテーションってなんだ?」
「宇宙人による家畜の殺傷、らしい」
「宇宙人~?」
俺が先ほどネット検索で調べた情報を告げると、カリギュラが今にも大笑いしそうな表情を浮かべた。
「まあ、家畜が奇妙な死に方しているって話だから、実際には魔獣による被害か何かじゃないかね。阿蘇の方は未だに魔獣が多いし」
「なら、その変な依頼、受けるのか?」
「今、他に仕事ないし」
繰り返すが俺たちの仕事にはむらがある。
これから先の仕事の予約でいっぱいなんてことは全然なく、こうやって予約もなく送られてくる依頼をこなしているだけなのだから。
「それに宇宙人の調査と駆除で20万出すって話だ。普通の魔獣だったとしても20万貰えるなんて美味すぎる話だろ?」
「ふうむ。そうだな。もし、本当に宇宙人だったら面白い話になるしな! わはは!」
20万というのは俺たちにとっては魅力的な金額だ。
家畜被害の正体が大量の魔獣の群れとかでもない限り、確実に儲かる額なのだから。
「じゃあ、決まりだな。メールを返信して、契約書を結んでおこう」
俺たちはこうして宇宙人に襲われているという畜産農家の依頼を受けて、阿蘇方面にある牧場へと向かったのだった。
「ここだな」
地獄戦争でがたがたになった道路を軽トラックで走ること2時間。
俺たちは依頼主の牧場に到着した。
その牧場は主に牛を育てている牧場らしく、広い放牧地を備えている。
そこには熊本のブランド牛である赤牛がのびのびと草を食んでいた。
魔獣の気配なんてない実に平和そうな場所に見える。
「ああ。便利屋の阿賀野さんですか?」
俺たちは牧場の前に車を止めると、すぐに依頼主が姿を見せた。
「ええ。あなたが宮崎さん?」
「そうです。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
宮崎というのはごくごく普通の初老の男性に見え、宇宙人を追いかけているようなオカルト好きの変人には見えなかった。
俺は名刺を差し出し、それから宮崎に案内されて牧場にある事務所に通された。
「引き受けてくださって感謝しています。軍政局にも相談したのですが、対応できるのは数年後だと言われてしまい、途方に暮れていたんです」
「なあなあ、宇宙人が出るってマジなのか?」
宮崎が事情を語る中、カリギュラが興味津々でそう尋ねた。
「ええ。本当ですよ。見てください。これが宇宙人どもにやられた家畜の死体です」
そう言って宮崎は印刷した写真を俺たちに見せる。
そこには──。
「こいつは……」
俺たちはその写真を見て目を見開いた。
家畜は外科手術でも行われたように腹部を四角に切り取られ、内臓がごっそりとなくなっていた。
俺たちも仕事でいろいろな魔獣によって食い殺された家畜を見てきたが、こんな死体は見たことがない。
「ううむ。確かに俺様たちの知っている魔獣の仕業には見えないが……」
「そうだな。お前が知らないなら本当に魔獣じゃない可能性が高いな……」
カリギュラは地獄の元帥で地球侵攻も指揮したドラゴンだ。
悪魔や魔獣についての知識は群を抜いている。
そのカリギュラが知らないとなると、いよいよ本当に宇宙人か……?
「被害はいつから?」
「2週間ほど前からです。最初はヘルハウンド辺りの魔獣の仕業かと思ったんですが、こんな奇妙な死に方をする家畜が、それから6頭も出ましてね。これは絶対に魔獣の仕業ではないと考えたんですよ」
そう言って宮崎は一度事務所の奥に引っ込むと、何かの書籍を取ってきた。
それは有名なオカルト雑誌で、宮崎はページをめくる。
「ほら。アメリカで起きた同様の事件ですが犯人は人間でも、野生の動物でもないと分かったそうです。この家畜の死に方はうちで起きた事件のそれと全く同じでしょう?」
「た、確かに……」
その雑誌に掲載されていた写真にも、腹部を手術のように綺麗に切断された家畜の死体が写っていた。
「……これはマジで宇宙人の仕業なのか?」
カリギュラがそう呟く。
「そもそも地獄が存在すると分かった今、宇宙人だけ存在を否定されるのもおかしなものなんですよ」
宮崎はそう語る。
地獄というオカルトな存在が地上に溢れて以降、地球の常識はいろいろと変わった。
しかし、まさか宇宙人も実在するのか?
俺とカリギュラは顔を見合わせて、考え込む。
「だからね。全部、宇宙人の仕業なんですよ」
そんな俺たちに宮崎はそう言ったのだった。
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