Case.33 ブラッドムーンの夜に
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──Case.33 ブラッドムーンの夜に
俺たちは行方不明のワーウルフの女性シグリッドの捜索を行っている。
その中で俺たちは彼女が付き合っていたという暴力的な彼氏らしいアタウルフについて情報を手にした。
「次はどうする?」
「ワーウルフ・バーに行く。そこでアタウルフを探す」
「それが一番の近道だろうな」
シグリッドとアタウルフが出会ったのは市内のワーウルフ・バーだ。
そこで何か情報が得られるかもしれない。
そう考えて俺たちは歓楽街に入り、ワーウルフ・バーを探す。
ワーウルフ・バーは歓楽街のどこの犯罪組織の縄張りにもない場所にあった。
店構えは至って普通のバーだ。
しかし、問題がある。
ワーウルフ・バーなだけあって、ワーウルフ以外はお断りな雰囲気があることだ。
俺たちがバーの前に来ると、用心棒のワーウルフがじろりと俺たちを睨む。
「長居はしないし、トラブルは起こさない」
俺は用心棒にそう言い、バーの扉を潜った。
「おやあ? つるつるの猿が来たぜ?」
俺たちがバーの中に姿を見せるとくすくすと笑う声とともにワーウルフたちが俺たちに視線を向けてくる。
「お前たち、ここがどこか分かってるのか?」
バーテンダーも俺たちを睨んでそう告げる。
「分かってる。ワーウルフの友達を探しているんだ。アタウルフとシグリッド。知ってるか?」
「つるつるのあんたがアタウルフの友達? 冗談だろ。あいつがワーウルフ以外とつるむはずがない」
「アタウルフはついでだ。俺たちはシグリッドを探すことを頼まれている。彼女が仕事に姿を見せなくて心配している悪魔がいてな」
「彼女か……」
俺の言葉に渋い顔をするバーテンダー。
「聞くところによればアタウルフは暴力的な彼氏らしいな。シグリッドに危害を加えている可能性は?」
「アタウルフは確かに乱暴なやつだが──」
「おい、おっさん。アタウルフについて嗅ぎ回っているのか?」
ここで俺たちの隣にひとりのワーウルフの女が割り込んできた。
軍人かボディビルダーみたいな筋肉質な身体をしたワーウルフの女で、俺たちの方に敵意のある視線を向けている。
「ああ。正確にはその彼女についてな」
「じゃあ、失せな。あんたらつるつるの猿には関係ない話だ」
そう言ってペッと俺の顔に向けて唾を吐きかけるワーウルフの女。
「いいや。関係あるね。俺たちは仕事で来ているんだ。ほら、フリスビーを取ってこないとお前らだってご褒美にジャーキーは貰えないだろ?」
「てめえ……! あたいらを犬扱いしやがったな……!」
俺が唾を拭って挑発すると、ワーウルフの女はまんまと乗った。
やつは鋭い爪を剥き出しにして俺に殴りかかる。
俺の喉を爪が裂き、顔面も爪で斬り刻まれた。
俺はげぼりと血を吐き、地面に崩れ落ちる。
「ギーゼラ! お前、何やってんだ!? 死んじまったぞ!?」
バーテンダーがそう非難の声を叫ぶ。
「知るかよ! こんなつるつるの猿が何人死のうと関係あるか?」
「軍政局に知られたら……」
「誰も知らないって言えばいいだろ。どうせここでのことに憲兵が顔を突っ込んでくることはないんだから──」
そこでギーゼラという名のワーウルフがカウンターに顔をガンッと激しい音を立てて押し付けられた。
HK45自動拳銃を抜いた俺の手によって。
「殺しに来たんだ。殺されても文句は言えないよな」
「なあっ!?」
シャツは血塗れだがすでに傷ひとつない俺を見て、ギーゼラが目を見開く。
ギーゼラは俺の腕を振りほどこうとするが、ワーウルフの腕力でも竜殺しの俺の腕力には敵わない。
「お前、アタウルフを知っているな? やつはどこだ?」
「し、知るか! 放しやがれ!」
「この銃がよく目に入っていないみたいだな。こいつはハロウィンの玩具じゃないぞ」
そう言って俺がバーの天井に向けて2発発砲するとワーウルフたちは怯える子犬みたいに竦み上がった。
「て、てめえ、憲兵が来たら……」
「お前が自分で言ったんだぞ? 憲兵はこの辺りのことについて調べないってな」
「クソ……」
しかし、ここまでやってもギーゼラがアタウルフについて話す様子はない。
「はあ。カリギュラ。喋りたくなるようにしてやれ」
「ふふふっ。合点だ」
俺がそう言うとカリギュラは手の中に炎を生み出した。
「さて、髭の先からじわじわ炙ってやろうか。この拷問が終わるころにはお前はちりちりの犬になってしまうだろうなあ?」
「この臭いは……ドラゴン!? 何だって人間と……!」
「さっさと答えんか、小娘。アタウルフはどこだ?」
そしてカリギュラの炎がじりじりとギーゼラの髭から熱していく。
「や、やつはブラッドムーンの集会場だ! そこにいる!」
「ブラッドムーン? 人狼至上主義の団体か?」
ブラッドムーンは悪魔の相互扶助会の中でもワーウルフだけに限定された組織だ。
……ということに表向きはなっているが、実際は俺が言ったようにワーウルフこそがもっとも優れた種族だと主張する連中の集まりになっている。
つまりはイカレたレイシストの秘密結社で、他種族への嫌がらせや強盗、果ては殺人などの犯罪に手を染めていると聞いている。
「ブラッドムーンの集会場ってのはどこだ? 髭が焦げてなくなってしまうぞ?」
「モールの地下だ! サクラマチのモールの地下!」
「わははは。ご苦労だった」
カリギュラは俺にウィンクして合図し、俺は自動拳銃のグリップでギーゼラの首筋を叩いて失神させた。
良い子は悪魔以外には真似しちゃいけないぞ。
「じゃあな。情報提供助かったぜ」
「二度と来ないでくれ……」
疲れ切ったバーテンダーに見送られて、俺たちはバーを出る。
「ブラッドムーンか。また面倒なのに出くわしたな……」
「ははは。楽しみじゃないか。憲兵を気にせずどんぱちできるぞ」
「俺は嫌なの」
そして、ワーウルフ・バーから十分に離れると俺たちは立ち止まった。
「状況を整理しよう」
俺たちは集めた情報を一旦整理することに。
「発端はグーラからの依頼だった。シグリッドの安否確認をしてくれと言う話だったが、彼女は家におらず、臭いは繁華街で途絶えた」
「ああ。それから狂犬病のワーウルフについての噂を耳にした」
「そう、俺たちは灰色の体毛が落ちていると聞いてシグリッドの失踪と結びつけたが、今度はブラッドムーンが出てきた。狂犬病のワーウルフとブラッドムーンを結びつける手がかりは今のところは少ない」
「……そうだな。それらふたつは灰色のワーウルフの体毛が関係しているという共通点しかない。体毛だけでは確実な証拠とは言えないな」
「ああ。このふたつは全くの別事件かもしれないし、やはり繋がりがあるのかもしれない。その点を頭に置いて──」
俺は告げる。
「──完全武装でブラッドムーンの集会場に殴り込もう」
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