↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/96

Case.31 途絶える臭い、聞こえてくる噂

……………………


 ──Case.31 途絶える臭い、聞こえてくる噂



 ネットで調べたのだが、グーラはもっぱら食べ物の写真を撮ることが多いグルメカメラマンらしい。

 熊本の飲食業界ではそれなりに有名人だとか。


 今回も雑誌に掲載するための写真撮影である。

 で、カリギュラが食べているのは、店から届けられた出来立てかつ特大の海鮮丼だ。


「いいよ、いいよ! その感じ!」


 カリギュラが美味そうに海鮮丼を貪るのをグーラはそう言いながら写真を撮る。

 前は寿司に魚が生だと文句言っていたカリギュラだが、本当に美味そうにイクラやマグロ、甘エビの乗った海鮮丼を貪っていく。


 クソ。本当にこいつ美味そうに食うな……。俺も海鮮丼食いたくなってきた……。


「素晴らしい! これまでで一番の出来上がりになりそうだ!」


 カメラに保存された画像を確認しながら、グーラは満足げに頷く。


「わはは。それはモデルがいいからだな!」


 カリギュラは自画自賛して残りの海鮮丼を平らげた。


「撮影はこれで終わりだ。こちらがアルバイト代だよ」


「おお! 飯を食うだけで金が貰える仕事とはな! 美味い、美味い!」


 封筒に収められた1万5000円を受け取り、カリギュラは大満足。


「それで、連絡が途絶えたというモデルのことだが」


「そうだったね。一応調べてもらおうかな。彼女には稼がせてもらったし」


 そう言ってグーラは一枚の写真を俺たちに見せた。

 そこに映っていたのは、ひとりの若い灰色の体毛をしたワーウルフの女性だ。

 ちょっとばかりふくよかだが、健康的と言える範囲。


「彼女の名前はシグリッド。熊本で他のカメラマンの元でも仕事をしているそこそこ有名なワーウルフのモデルでね。住所はここ。様子を見てきてもらうのは、いくらぐらいかかるんだい?」


「様子を見てくるだけなら数千円ってところ。事件に巻き込まれていて、捜索の必要性が生じたら、15万前後で応相談ってところだ。どうする?」


「結構な出費になりそうだけど仕方ないね。お願いしよう」


「毎度あり」


 俺はこうしてグーラからのシグリッドの安否確認と捜索を請け負った。


「さて、まずはこの住所に行ってみるか」


「おう! 早速もう一仕事だ!」


 俺たちはすぐに車でシグリッドが暮らすという市内のマンションに向かった。

 問題のマンションは地獄戦争の前から存在するもので、戦争の傷跡が僅かに壁面に残る建物だった。


「シグリッドさん。いらっしゃいますかー?」


 俺はチャイムを鳴らし、部屋の扉をノックするが反応はない。


「どうもトラブル臭いな。部屋の中から悪魔の臭いはするか?」


「臭いはするが、どうにも薄いな。今ここにいる様子はなさそうだ」


「オーケー。なら、ここから臭いを辿って行ってみよう。いけそうか?」


「ああ。やろう」


 俺たちはワーウルフの臭いを辿って、市内に繰り出す。


 俺たちが市内の繁華街まで臭いを追ってきたとき、ふと立ち止まってカリギュラがすんすんと鼻を鳴らした。


「まずいな。臭いが途絶えた。酷く薄くなって、消えてしまった」


「おいおい。ここら辺にいるってことか?」


「分からん。だが、これ以上臭いは追えない」


「参ったな。安請け負いしすぎたか……」


 俺たちは歓楽街の真っただ中で立ち止まり、周囲を見渡す。


「ううむ。とりあえず不審な感じではあるな。グーラが言っていたようにシグリッドが複数のカメラマンのモデルをしていたとすれば、そのうちひとりとトラブった可能性もあるだろう」


「ふうむ。なら、カメラマンたちを追っていくか?」


「ああ。そうしよう。それ以外に手はなさそうだ。だが、その前に──」


 俺の腹がぐるぐると鳴った。


「晩飯だ。俺も海鮮丼が食いたい……」


 宣伝というのは馬鹿にならないな。

 カリギュラが飯食っている光景を見ただけで、俺まで腹が減るんだからな。


「はははっ! それなら今日は俺様が奢ってやろう! この1万5000円でな!」


「お? マジで? ごちになりまーす!」


「俺様にとくと感謝するのだぞ!」


 俺たちはそういうわけで近くにある海鮮丼を出してくれる海鮮居酒屋に入った。

 俺たちがテーブルに着くと、どうもこの辺りは悪魔の客が多いことに気づいた。

 リザードマンやマーマンの客がいる。


 リザードマンはともかく魚人であるマーマンは魚食っても平気なのか? と思わなくもなかったが、魚も同じ魚食うことあるから別に不思議なことじゃないか。


「ご注文、お決まりですかー?」


 そんな店内で俺たちが呼び鈴を鳴らすと店員がやってきた。


「海鮮丼ひとつ。お前はどうする?」


「俺様はアジフライ定食を!」


「あれだけ食った後でがっつり定食を食うのか……?」


「俺様はいつも空腹だからな!」


 うへえ。随分わんぱくな胃袋なことで……。


「……なあ、聞いたか? 例のワーウルフの話……」


 と、ここで俺の耳に興味深い単語が入り込んできた。

 声がしたのは隣のテーブル席でリザードマン2名が話し込んでいる。


 そのふたりは厚手のジーンズに黒いポロシャツ、膝や肘に装着した軍用のプロテクター、そして腰のホルスターに下げたグロック19自動拳銃からして、恐らく非番の民間軍事会社(PMSC)のコントラクターだ。


「ああ。5人殺したらしいな。狂犬病になっているって噂だ」


「クソ。次の満月の日、俺は当直なんだよ。おっかないぜ」


「ははっ。運が悪かったな。俺は非番だ」


 狂犬病のワーウルフ? なんだか不吉な情報を聞いちまったな。


「なあ、カリギュラ。マンションで血の臭いはしたか?」


「いいや。しなかったぞ。どうしてだ?」


「ちょっと気になることができてな」


 失踪したワーウルフのモデル。

 巷で囁かれる狂犬病のワーウルフ。


 これが何の繋がりもないことを祈りたいが……。


……………………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。