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Case.27 電気を貪る小鬼

……………………


 ──Case.27 電気を貪る小鬼



 俺たちが軍用ドラッグたるオクソールの密輸入に関わっていた女夢魔(サキュバス)を憲兵に突き出してから7日が過ぎた。


 そして、俺たちは──また仕事がなかった。


「仕事、仕事……」


 俺はメールボックスを何度も更新して新着メールを求める。

 しかし、依頼のメールは来ていない。

 先に仕事で100万入ったとはいえ、安穏とはしていられない。

 俺たちの仕事は収入が不安定なのだから。


「……カリギュラ。お前は何をしているんだ?」


 カリギュラはおやつに買っただろうプリンをスマートフォンで写真に撮っていた。

 何やらいろいろ角度を変えて写真を撮っているが、意味が分からない。


「ふふふ。俺様も営業努力をすることにしたのだ」


「営業努力~?」


「そう! 見ろ、これを!」


 そう言ってカリギュラはスマートフォンの画面を俺に見せる。

 そこにはSNSのアカウントがあった。


「なになに? 『便利屋@熊本。凄腕の悪魔と軍隊上がりの人間が経営しているお店です。熊本での悪魔・魔獣関係のトラブルの解決は弊社にドンとお任せ。連絡先のメールアドレスは──』と」


「SNSなら大金を掛けずに宣伝できるからな。いいだろ!」


「考えたな。しかし……」


 俺はカリギュラが投稿した内容を見ていく。

 飯・飯・飯、と飯の写真しか投稿していない。


「……これは広告になるのか?」


「企業アカウントだからな。これぐらいでいいんだよ」


 う~ん。そういうものなのだろうか?

 企業アカウントとかよく見たことないから分からないんだよな。


「このアカウント、いつから開設したんだ?」


「先週だ。効果が出るのはもう暫く待て」


「期待せずに待っていよう」


 俺はそう言いながらメールボックスを更新する作業に戻る。

 そのときだ。不意に事務所の電気が消えた。


「また停電か。最近、多いな?」


 俺はノートパソコンで作業していたため影響はなかったが、モデムの電源が落ちてインターネットへの接続が止まってしまったのでメールの更新ができなくなった。


「そうだな。だけど、すぐに復帰するだろう」


 カリギュラがそう楽観的に言うと確かに電気はすぐに戻ってきた。

 ぱちぱちとLEDライトが瞬き、再びノートパソコンがインターネットに繋がる。


「ほらな?」


「しかし、何が原因なんだろうな? 確かに戦争のせいでインフラが破壊された場所ではあるが、もう何度も停電するような災害は起きてないはずなんだが……」


 カリギュラがにっと笑ってそう言うが、俺の方は疑問を抱えていた。


 地獄戦争で一度熊本のインフラは酷く破壊された。

 しかし、地獄戦争後は地獄に浸食されたこの地に価値を見出した様々な企業が進出してきたこともあって、電力供給には力が入れられているはずだったのだ。


 なのに、ここ最近どうにも停電が多い。


「それよりも昼飯は何にする、阿賀野。宣伝のためにもSNS映えする飯がいいぞ!」


「腹に溜まればなんでもいいだろ……」


 俺がカリギュラにそう返したとき、ピコンとメールの着信音が。


「お! 仕事だぞ、カリギュラ!」


「何の仕事だ?」


「魔獣の駆除だ。だけど、軍政局からの依頼じゃない。UNEって企業からだ」


「UNE?」


「ユナイテッド(U)・ネクスト(N)・エネルギー(E)社。熊本の電力事業に参入している企業らしい」


「ほう。電気の話をしていたときに、電気関係の企業の依頼が来るとはな」


 俺がメール本文を読んで説明すると、カリギュラが感心したようにそう言う。


「で、駆除する魔獣は何だ、阿賀野?」


「グレムリンだ。この企業の施設にグレムリンが住み着いたらしい」


 グレムリン──。


 送電網や電子機器類から電気を盗む魔獣だ。

 こいつが発生すると軍用品だろうと電子機器は狂いまくり、バッテリーは瞬く間に干上がるので地獄戦争のときには用心した魔獣の一種だ。

 今の戦争は人々が思っている以上に電子機器で支えられているからな。


「グレムリンか。報酬は?」


「1匹につき……5万出すとさ。わお!」


「おおーっ! グレムリン1匹に5万とは破格だな!」


 これが軍政局の依頼ならグレムリンの駆除に出る報酬はせいぜい8000円程度だ。

 それが5万円とは破格と言うほかない。


「これは企業が儲かっているから羽振りがいいのか、それとも……」


「何か裏があるか?」


「そう、グレムリンの数が異常なまでに多いとかな。けど、メールには大至急駆除をって要望があるんで考えている暇はない」


「受けようぜ。裏があっても問題はないだろ。俺様たちは死ぬわけじゃないし」


「それもそうだが」


 俺は不死身だし、カリギュラも肉を食えば回復する肉体をしている。

 多少なりとも仕事に裏があろうが、切り抜ける自信はあった。


「じゃあ、早速UNEにメールを返信して連絡しておく」


 俺は依頼のメールを寄越したUNEの担当者に返信し、依頼を引き受けることにした。


「で、そのUNEの施設はどこにあるんだ?」


「黒川第四発電所だとさ」


 俺はカリギュラにそう返し、グレムリン駆除のための武装を整えると白川の流域に存在する黒川第四発電所を目指したのだった。


……………………

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