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Case.19 誰かが愛する魔獣

……………………


 ──Case.19 誰かが愛する魔獣



 俺たちは黒スーツの男たちに拘束されてる柴田教授の救出を目指している。


 パイプ椅子に拘束された柴田教授を囲んでいるのは人間の男が2名、明らかに悪魔と分かる角の生えた男3名だ。

 拳銃を向けている男は人間である。


「カリギュラ。俺は柴田教授に拳銃を向けてる男を叩く。お前は取り巻きを頼むぞ。できれば半殺しにしてくれ。どういう事情があったのか聞いておきたい」


「合点。ミディアムレアに焼き上げてやる」


 俺はHK45自動拳銃を握ったままカリギュラに指示を出す。


「3カウント」


 それから俺たちは3秒のカウントダウンを始める。


 3────。


 柴田教授はこの状況の割には冷静そうだ。


 2────。


 男たちの方は焦り、怒り、苛立ちが見える。


 1────。


 さっさと動かないとまずいことになりそうだ。


 0────。


「やれ、カリギュラ!」


 俺はそう合図し、拳銃を握っていた男の肩を狙って発砲。

 45口径拳銃弾が男の肩を貫き、男が悲鳴を上げて拳銃を落とす。


「わはははっ! 燃えろ!」


 さらにカリギュラが周囲にいた男たちに炎を放った。

 いきなり炎に包まれた男たちは大きな悲鳴を叫び、地面を転がる。


「クソ! 畜生! 何なんだよ!」


「動くな。次は頭に叩き込むぞ」


 肩を撃ち抜かれ、出血を押さえながら喚く男に俺は銃口を向ける。

 男が落とした拳銃を蹴って遠くにやり、俺は男を押さえつけると素早く結束バンドで後ろ手に拘束した。


「柴田教授? 大丈夫か?」


「君たちは憲兵か……?」


「いいや。ただの便利屋だ」


 目を瞬いて尋ねる柴田教授に俺はそう返した。

 それからコンバットナイフで柴田教授を拘束していた結束バンドを切断し、俺は床に倒れている男を見つめた。


「さて、ここで何をしていたんだ? どうして柴田教授を拘束していた?」


「くたばりやがれ」


 ぺっと唾を吐いて、そう言う地面に倒れた男。


「彼らは死体の処理にスライムを使っていたのだよ」


 そこで自由になった柴田教授が言う。


「死体の処理に?」


「ああ。暴力団か何かなのだろう。私がスライムを追ってここで調査を行っていたら、彼らがやってきて死体をスライムで満ちたプールに落としていた」


「なるほど。考えたものだな……」


 スライムは食べる速度こそ遅いものの、骨すら残さずに食べつくす。

 見つかりたくない死体を処理するには都合のいい存在だ。


「カリギュラ。焼きすぎるなよ。こいつらは憲兵に突き出す」


「了解だ」


 男たちを燃やしていたカリギュラの炎は不意に消え、男たちは完全に伸びた状態で地面で呻いている。

 俺はひとりずつ結束バンドで手足を拘束していった。


 それから俺は軍政局にこのことを通報した。

 すぐに憲兵が来るという話になり、俺たちは一段落。


「ここのスライムは軍政局がどうにかするだろう」


「それは困る! 私はここのスライムに大きな発見を得たのだ!」


「……まさか教授も死体の処理を……?」


「違う、違う。ここのスライムは、活性汚泥の微生物と同じ働きをしてくれるんだ。つまりは水の汚れを分解し、綺麗な水にしてくれている」


「は、はあ……」


「しかも、その浄水能力はこれまで人類が見つけたあらゆる微生物を上回るそれだ。マイクロプラスチックも、薬物汚染も、全て浄化してくれる。もし、このスライムを培養し、下水処理に用いれば様々な地域で水不足や水の汚染による疾病を予防できるだろう。このスライムは何としても、大学に持ち帰らなければならない。憲兵に処理させるわけにはいかないんだ」


「いや、でもここのスライムは死体を食べているんだが……?」


「だから何だね。ここにいるスライムが殺したわけじゃない。犠牲者は気の毒に思うが、スライムたちに罪はないだろう」


「まあ、それはそうだが……」


 確かにスライムは死体を食べただけで、殺したのは恐らくここにいる連中だ。


「とりあえず教授が無事であることを依頼主の大学に報告させてくれ。スライム云々はそのあとで。いいな?」


「うむ。そうしよう。できれば可能な限り多くのスライムを持ち帰りたい」


 誰も愛さない魔獣たるスライムにも価値を見出す人間はいるものなんだなと俺はちょっとばかり感心した。

 それも死体の処理とかいう悪用ではなく、浄水という人類の役に立つ分野で。


 それから憲兵がやってきて、男たちを連行していき、柴田教授は保護された。

 また同時に長らく厄介者だったスライムにも脚光が当たり、後日──。




「逃がすな! 捕まえろ!」


「待て! 1匹15万!」


 柴田教授の所属する九州大学がサンプルとして買い取ってくれるという話になり、スライムには1匹15万で取引されるようになった。


 俺たちは依頼を受けてせっせとスライムを捕まえ、ケージに押し込む。

 柴田教授から提供されたスライムでも壊せない強化ガラス製のケージには緑色や黄色のスライムがうねうねと蠢いている。


 スライム漁の方法も割と確立された。

 スライムがいそうな場所をカリギュラが炎であぶり、そこから出てきたスライムを俺が捕まえる。

 スライムは素手では触れないので、頑丈で分厚いゴム製の手袋で捕らえる。

 そして、素早くケージに押し込むのだ。


「これで4匹! 60万だぞ! ははは!」


「わはははっ! 大儲けだ!」


 俺たちは思わぬ儲け話を手にして、大笑い。


「……だが、やっぱり臭いな……」


「おええっ……」


 大金を手にした俺たちだったが、同時に酷い悪臭も押し付けられてしまった。

 スライムが汚物を浄化すると言っても、こいつら自身が清潔なわけじゃない。


「はあ。今日はまず銭湯に行くか」


「おお! いいな! 広い風呂で湯を浴びよう!」


「そうそう。さっぱりしてから飯食いに行こう」


 俺たちはそう言葉を交わして、市内にある銭湯に向かったのだった。

 何だかんだで柴田教授の捜索と合わせて収入130万だ。

 暫くは家計も安泰である。


……………………

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