Case.13 消えたミントちゃん
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──Case.13 消えたミントちゃん
仕事がない。
石川から依頼された女夢魔事件の再調査を果たしてから、すでに3週間が経過していた。
だが、その間、俺たちに新しい仕事はなかった。
「ああ。失業している気分だ……」
「実際、失業しているようなものだろ。毎日食事が貧相になっていくぞ。最近、肉が満足に食えていないので俺様は不満だ……」
「次の仕事の目途が立つまでは倹約しなければいけないんだよ……」
そう言いながら俺は軍政局のホームページや自分のメールボックスを見て、魔獣の駆除でも何でもいいので仕事の依頼が出ていないか確認する。
しかし、何もない。
「……なあ、カリギュラ。これってこの前俺たちが殺した女夢魔の呪いだったりするか?」
「失業する呪いなど聞いたことない」
そう言って溜め息を吐くカリギュラ。
「なあなあ。お前が竜殺しの傑物であることを大々的に宣伝すれば、客は山ほど来るのではないか? そうすれば毎日焼肉が食えるし」
「やだ。そんなことしたらまた俺の名前を利用しようって有象無象が湧くだろ。もうそれはまっぴらごめんだ。俺は客寄せパンダじゃない」
「そうは言うがな。お前、広告も出してないだろう。それでは仕事が来ないことは俺様にも分かるぞ」
「でもよ。広告出すのも金がかかるんだぜ?」
ただでさえ収入が安定しないのに広告料なんて出費も増えたらえらいことだ。
「しかし、知名度がなくて仕事が来ないのは明白だろう。このまま貧乏が続くと広告を出す費用もなくなり、そのまま赤字で倒産してしまうぞ」
「そう言われてもな……」
どういう広告を出せばいいのやらと考えていたとき、事務所のチャイムが鳴った。
「おおっ! 仕事かもしれんぞ!」
「稼げる仕事でありますように!」
カリギュラがソファーから飛び上がり、俺は扉に向けて駆ける。
「こ、こんにちは……」
外にいたのは12、13歳ほどの女の子だった。
彼女は扉の向こうから俺が現れたことに少し怖がっている様子だ。
「あ、あの、便利屋さんですよね……?」
「そうだけど……」
まずいぞ。
稼げない仕事の予感がひしひしとしてきた。
「お、お仕事をお願いしたいんです。聞いてもらえますか?」
「……分かった。中に入ってくれるかい」
俺が女の子を連れて事務所に入るとカリギュラが物凄く渋い表情をしていた。
やつにもこれから説明を受ける仕事が絶対儲からないという確信があるようだった。
「それで、何を依頼したいのかな?」
「その、ミントちゃんを探してほしいんです」
「……ミントちゃん?」
俺とカリギュラは少女の言葉に顔を見合わせて首を傾げる。
「ミントちゃんっていうのは私が飼っていた猫の名前です。そのミントちゃんが2日前に家から逃げ出しちゃって……」
「迷い猫を探してほしい、と」
「はい。便利屋さんはこういうのが上手だってネットで見たんです」
そう言ってスマートフォンの画面を俺たちに見せる少女。
画面には以前の仕事で猫を探したときの写真がSNSのアプリに表示されている。
ああ。俺たちは前にも猫探しをやっている。
そのときは一応魔獣が猫を攫ったという話だったのだ。
それに金持ちな飼い主だったので、たんまりと報酬を貰ったが。
しかし、口コミってのは馬鹿にできないな。
SNSでこうして写真がアップロードされて、そこから仕事が来るとは。
欲を言えばもうちょっと稼げそうな客が釣れてほしかったが……。
「保護者の人はここに来たことを知っているのかい?」
「……お父さんとお母さんはミントちゃんは気味が悪いって……」
「気味が悪い?」
猫ってのは可愛くてふわふわしたハッピーな生き物だと認識していたが、それが気味悪いとはどういうことだろうか?
「まずはそのミントとやらの写真を見せてみろ」
「こ、これです」
カリギュラが要求し、少女がスマートフォンにミントの写真を出す。
「……ただの黒猫に見えるが」
「俺様にも黒猫にしか見えない」
あれか。黒猫だから不吉ってか?
それだと親御さんの価値観が中世ヨーロッパになっちまうが。
「お父さんとお母さんはミントちゃんが人間の言葉を喋ったって言うの。だから、きっと呪われた猫なんだって……」
「猫が喋った?」
俺たちはそう言われてもう一度ミントの写真を確認。
そう言われてもただの黒猫にしか見えない。
「ふむ。もしかすると、猫に化けている悪魔や魔獣かもしれんな」
「ええっ!? ミントちゃんが悪魔!?」
「俺様はただの猫が喋るようになったなんて話は聞いたことがないからな」
少女が狼狽えるが、カリギュラは気にした様子もなく肩を竦める。
「まあ、とりあえずミントちゃんを探そう。ミントちゃんは君の家から逃げたんだよね? 家はどの辺りだい?」
「は、はい。案内します」
少女はそう言ってソファーから立ち上がり、俺たちも続く。
「まさか人殺しの女夢魔の次は猫を探すことになるとはな。それもこんな小娘の依頼で……」
「これも仕事だ。人生はこつこつ働くのが一番」
「はああああ」
俺の言葉にカリギュラは深々と溜め息を吐く。
「ところで、君の名前は?」
「私は橘ヒナです」
「じゃあ、案内よろしく頼むよ、ヒナちゃん」
そして、俺たちはヒナとともに彼女の家に向かった。
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