待ち合わせ
喫茶店でとある人を待っている。
空になったコーヒーカップを見て思ったよりも時間が経っていたことに気づいた。
随分と早くに来てしまったなと思いながらも、スマホの充電をすり減らしながら暇を潰す。
30秒ほどスマホを見つめて視線を窓にやる。また30秒ほどスマホを見つめてまた視線を窓に。こんなことを30分以上も繰り返しているから俺が誰かを待っているというのは店主にはお見通しだろう。
幸い、他に客はいない。
駅から少し歩いたところにあるこの喫茶店は以前何度か訪れたことがある場所だった。
高校生の頃の自分には少し大人びた空間のように感じで、そんな中で紅茶を楽しむ時間が好きでしょっちゅう入り浸っていたのを思い出す。
あの頃は金も全然持ってなかったから喫茶店に小遣いのほとんどが消えていたな。
なんてことを考えてるうちに喫茶店のドアが開いた。
1人、喫茶店に似合う服装の人物が入ってきた。その人に比べると俺の服装はTシャツにダボっとしたズボンで喫茶店なんかよりは居酒屋の方がよっぽどお似合いだなんて言いながらまだ居酒屋に行けるような年齢ではないのは一旦どこかに置いておこう。
その人物は店内を見渡して客が他に1人もいないことに驚きながら俺のことを見つけるとすぐに向かいの椅子に座った。
しばらくの間沈黙が続いた。俺が相手が話し出すのを待っているように相手も俺が話し出すのを待っているのだろう。
仕方ない、ここは男として俺が先に話し出すか。
「久しぶり…と言いたいけど別にそこまで時間も経ってないのか。おはよう、○○さん。」
「おはよう、ごめんね急に連絡して呼び出して。」
「そんなことないよ、暇を持て余してる僕にとって誰かのお誘いというのは一大イベントだからね。」
「友達とかいないの?」
「最近は1人のことが多いね。」
そう言うと相手の顔が少し悲しそうになった後安堵の表情を見せた。
どう言う感情なんだろうと考えてると今度は相手の方から話し出した。
「今日呼び出したのはあなたの生活を知りたかったから。」
せ…生活…毎日食っては寝てを繰り返してる俺の生活を聞いて何になるんだか。
いや、そう言う意味じゃないのは理解している。いいじゃないかそんなに知りたいなら話そう。
その前に…空になったコーヒーカップにもう一度目をやる。カップの底から新しいコーヒーが湧いてきてないかななんて絵空事を考えていたのだけれどどうやら俺にそんな超能力はないようだ。
まったく大学生になっても喫茶店というのは金が掛かるものだ。
まあ決して俺はそこにかかるお金を高いとは思わないけど。
「すみません、コーヒー一つください。」
店主が慣れた手つきでコーヒー豆を挽き始める。
ゴリゴリという鈍い音がサラサラとした音に変わってそろそろだなとスマホを机に置く。
コーヒーが机の上に届けられる。
まだ湯気が立ち込めているので少し待つ。
最近は寒くなってきたので思いの外冷めるのが早いからタイミングは重要だ。
数分間、スマホも見ずにコーヒーカップを見つめる。そんな俺の動作を相手は変な顔せずただ見つめている。
随分と異質な空間だと思う。
時計の針が5分後を指した時、俺はおもむろにカップを掴み一口コーヒーを啜った。
温かい、いい温度だ。
「あぁ…ごめんごめん生活の話だっけね。じゃあまずはこのコーヒーについての話をしようかな。」




