第072話 乾燥させたかっただけ
ダンジョン前にやってきたハジメは、魔石を握りながら光学迷彩が解ける時間を測定していた。
想像していた通りに一時間程度で解除されてしまった。
「うん、これを元にして魔石に含まれる魔蘇量を定義出来るな」
ナナシ・スライムはHPが5で持続時間が五分であった。
アーズス・スライムはHPが25で持続時間が二十五分だ。
ミューカス・スライムはHPが50で持続時間は五十分。
フレア・スライムはHPが100で持続時間は百分。
「うん、HPの数値が持続時間になる訳か……これが魔蘇量と考えても良さげだな」
ノイジー・スライムはHPが35だったが、見付けることが困難なので魔石は使用していない。
それに鳥居へのプレゼント用に加工済みだったのもある。
ハジメは時間をメモすると、マッピングするためにダンジョンへと入っていった。
「まあ、データは取れたかな?」
スライム狩りをする気は無かったので直ぐに出て来た。
ダンジョン内と外世界では経過する時間軸が違うので直ぐに出てきたように見えてしまう。
「ちょっと思い付いた事を試してみるか……」
次にハジメはMP回復薬の改良を試みた。
と、言っても薄めると味がマシになるのかをテストするだけだ。
出来上がっているMP回復薬(雑)に他のスライム溶液を混ぜてみるのだ。
味が濃かった味噌汁に水を足して薄めてみる事が良くある。それと同様に出来るのではと考えたのだ。
「まあ、溶液はまだまだ有るしね」
ナナシ・スライムやアーズス・スライムでは『薬草と溶液を混ぜた物』になってしまった。
ミューカス・スライムではMP回復薬(薄)になっていた。
スライムの種別で薄まる度合いと効果が違っている。元になるHPなどが違っているせいであろう。
最後にフレア・スライムを混ぜてみると(雑)の注意書きが消えていた。
「上手くいったかも……?」
ダンジョンに入っている時には光学迷彩を実行している。
回復魔法陣で回復せずに出てきたのでMPは減ったままである。
ハジメは出来上がったMP回復薬を飲んでみた。
「うぼぉっ、あ゛あ゛あ゛あ゛……」
回復薬を薄めたのに味は変わらず不味いままであった。
片膝を付いた状態で不味さに耐えきったハジメは次のテストに掛かった。
効果が薄い物は放置と冷蔵とに分けてみた。時間経過を観察したかったのだ。
冷蔵は納屋に有る種籾保管用の冷蔵庫を使う。祖父が健在だった時に農作業用に使っていた物だ。
自宅の冷蔵庫では母親に叱られてしまうので保管しない。
ハジメは小学生時代に昆虫標本を作ろうとした事がある。
昆虫採集を終えて冷蔵庫に虫の死骸を入れてみた。
冷蔵庫に死骸を入れておくと、良い具合に乾燥してくれるとネットで見たので実行したのだ。
それが母親に見つかってこっぴどく叱られたのだ。
(まあ、味噌を出そうとしていたのに、虫の死骸を手に持ったら驚くわな……)
悪戯をしようとした訳では無い。ハジメ本人は至って真面目だった。
夏休みの宿題をこなそうとしていたに過ぎない。
しかし、結果的に悪戯とされてしまった。
(台所から悲鳴が聞こえた時には何だ?と思ったもんなあ)
本人は悪意なくやっているだけに始末が悪い。
(そういえば、暫く冷蔵庫を開けさせて貰えなかったな……)
夏休みの間はバツとしてハジメは冷蔵庫の開閉を禁じられた。
理不尽だと抗議したが聞き入られなかったの言うまでもない。
お陰で冷凍庫のアイスを取り出すのに、妹に頼まないといけなくなってしまった。
そんな冷蔵庫の出来事を思い出してクスリと笑っている。
自分の部屋に戻ってきたハジメは、マッピングデータを見ながらスライム発見場所をメモしていった。
(一箇所で発生している訳じゃないのか……)
恐らくダンジョン的には理由があるのだろう。
等間隔に近いぐらいの印に気が付いていた。
(うん、五メートル四方に一体の割合みたいだね)
第五階層の端までドローン映像を見ていた時に有る物を見つけた。
最初にドローン偵察した時には気が付かなかった物だ。
フレア・スライムは火炎攻撃を飛ばして来る。
ドローンを失うリスクを避ける為に高度を持たせていたのであった。
安価なドローンとはいえ、失うには高校生の懐事情にとって厳しい物が有るのだ。
今回はフレア・スライムの発生場所を特定する為にゆっくりと飛ばしている。
それで見付けることが出来たようだ。
(扉?)
扉だけがポツンと立っているのに気が付いたのだ。




