第071話 傀儡廻しのYOASOBI
本を写したハジメは帰宅した。
上がったBPは魔力を上げておく。これでMPは12となる。
「魔法を使う際にMPは消費されるけど、継続使用している時に減るかを試さないと……」
気になった事は、直ぐに確かめないと気が済まない。ハジメは自室で試してみるつもりであった。
本当はダンジョンの側でやりたかったが、夕飯の時刻が迫っていたのだ。
「遅れるとオカズが減らされてしまう」
ハジメは母親に時間厳守を命じられている。逆らうという選択肢は無かった。
入浴を済ませ夕飯も終えると自室に籠もって魔法の研究に邁進した。
学校の勉強もコレくらい頑張れば良いのにと思うが、それを指摘しないのは約束だ。
「レシピによるとポロミス草を使うとHP回復薬になって、アイカツ樹の葉を使うと傷痍回復薬になるんだな」
マイドレイク草は春の七草である『セリ』に似ていた。
水中に生えていたが、水周りに自生している所も似ている。
ポロミス草は同じく春の七草の『なずな』に似ている。
ならば『なずな』の自生しそうな場所に生えているのではないかと推測してみた。
そして、アイカツ樹は『ハギ』とそっくりであった。
「うむ、偶然とは思えないよな……」
ナズナは別名ぺんぺん草とも呼ばれ、日本各地の至るところに自生しているアブラナ科の草の一種だ。
道端など日当たりの良い所に生えている。
ハギは日当たりの良い山裾などに自生するのだそうだ。
「日当たりって……ダンジョンに日光は届かないんだが?」
とりあえず、葉の形などは覚えたので、明日以降のダンジョン探索で探すことにした。
「それにしても他の傷痍回復薬も何の植物なのか分からない物だらけだな……」
名称:初級傷痍回復薬(アイカツ樹の葉が必要)
機能:擦り傷・打ち身・軽度の裂傷を回復する
名称:中級傷痍回復薬(アイカツ樹の葉と枝が必要)
機能:骨折・裂傷を回復する
名称:上級傷痍回復薬(メコム樹の枝と葉と樹液が必要)
機能:切断された箇所を回復する(頭部以外)
名称:高級傷痍回復薬(賢者の樹の葉と花蕾が必要)
機能:切断された箇所を再生する(頭部以外)
名称:超級傷痍回復薬(世界樹の枝と葉と樹液が必要)
機能:絶命した命を再生する
複数の素材を使う物もあった。
「……きっと、一緒に使うって事では無いんだろうな」
煮出すなり抽出するなりの順番が必要な気がしていた。
ダンジョンで簡単に事が運んだことが皆無であるから疑り深くなっているのだ。
「でもって、最後の奴はエリクサーって言うんじゃね?」
命の再生とは神を超越した存在の回復薬だ。
それ以前に世界樹が何処に生えているのかが不明である。
「必要な事態になるような事はしないけど……」
安全第一が好きな四文字熟語だ。危ないと思ったら逃げることを信条としている。
『おお、ハジメよ……死んでしまうとは情けない……』
そんな事を言われながら、超級回復薬を振りかけられる図を創造してしまった。
それ以前にハジメはソロでダンジョンに潜っている。
だが、超級回復薬が必要な事態になってもそれを使ってくれる人が居ないのだ。
「そ、その内パーティを作るさ……」
しかし、ハジメには難しい話であった。乏しいコミュニケーション能力を鍛えないと話が始まらない。
何しろ家族以外で会話をするのは学校の知り合いぐらいだ。それも片手で賄えてしまう。
「まあ、ダンジョンの事をどうやって説明するかだな……」
今の時代には有り得ない現象が起こっている。しかも、誰も知らない事だ。
「……」
MP回復薬やHP回復薬も、使っている素材は一緒なのに回復量が違っていた。
きっと、配合の仕方とか量とかが関係しているのであろう。
これはコレで探求のしがいが有りそうであった。
「寝る前に魔石の事を先に調べておこうかね」
ハジメは光学迷彩を起動して、部屋からこっそりと抜け出しダンジョンに向かった。
入口の所でフレア・スライムの魔石が一時間持つのかを検証するのだ。
帰りに第四階層に潜って必要な素材を探す。探すと言ってもドローンを低空飛行させ映像に撮るだけだ。
「夜遊びしに行く訳じゃないんよ……」
そう言い訳しながらウキウキで出かけて行った。




