第070話 薬師爆誕
ハジメはフレア・スライム狩りに第五階層にやって来た。
まずは自分の状態を調べる事にした。
「自分を鑑定」
ハジメのステータスパネルが展開される。
名前:石垣一
階級:3
HP:8/8
MP:10/10
BP:0.907
状態:正常
職業:謎こんにゃく体液愛好者
筋力:4
頑丈:4
敏捷:5
魔力:5
・生活魔法(初級)
・クラフト魔法(線引き)
・隠密(光学迷彩)
知力:2
幸運:3
特技:(鑑定:初回特典)(傀儡廻し:初級)(異世界言語翻訳:初級)(薬師:初級)
装備:(ミナカヌシの仮面:初級)
特技欄に薬師が生えている。
MP回復薬(雑)を作れるようになったお陰だ。
「もう少しでBPが貯まりそうだな」
BPの値がもう少しで1に届きそうだ。
フレア・スライム狩りが終わる頃にはBPが上がっている事であろう。
「第五階層に生えている草の種類も掌握しないとだな」
MP回復薬が作れるという事は他の回復薬も可能なはずだ。
「傷を回復出来るヒール・ポーションが一番欲しいかな」
傷痍回復薬、通称ヒールポーションだ。
BPの割り振りは魔力を優先しているので、身体への直接攻撃には滅法弱い。
ハジメも自覚はしているが、このダンジョンに出現してくるのはスライムしか見たことが無い。
なので、装備の強化や筋力強化は後回しにしていた。
「逃げているのでは無い……戦略的撤退といいたまへ」
誰に聞かせる訳では無いが、エアメガネをクィっと上げながらハジメが呟いていた。
光学迷彩を起動してフレア・スライムを捕まえて回る。
フライパンが一組分しか無いので一匹毎に外まで持ち出していた。
「まあ、一辺に捕まえても捕獲瓶が足りないし……」
フレア・スライムを十匹ほど狩ったら図書館に籠もろうかと考えていた。
もちろん、他の回復薬のことを調べるためだ。
「第六階層が有るのなら降りてみたいけど調べることが多いからなあ」
MP回復薬の改修や保存期間の調査などもあった。
「直ぐに駄目になるとは思えないけど、ワインみたいに熟成するってもんでは無いよな」
ワイングラスにMP回復薬を注いで、グラスをくるりと廻す図を創造してしまった。
「一口含んでぐぁっ!となる構図しか思い浮かばない……」
ハジメのお手製MP回復薬は、トラウマ級のダメージを与えているようである。
そんな事を考えながらフレア・スライムを捕まえては外に運ぶの繰り返していた。
その間もシン・スライムプレスによる経験値獲得は欠かさない。
色々と忙しいダンジョンスローライフである。
「スローライフ(忙しい)とは……」
そんな哲学を考えながら図書館に移動する。
図書館の司書パネルの前に来たハジメは質問した。
「貸し出す本の数に上限は有るのですか?」
『本の数に上限は有りません』
「貸出期限は何時までなのでしょうか?」
『貸出期限はダンジョン時間で百二十時間です』
二十四時間制ならば五日間。外世界では二十五日となる。
時間経過が異なるので色々とややこしいのだ。
「それを過ぎるとどうなりますか?」
『デコピンの刑に処されます』
「デコピン?」
『はい、こんな感じです……』
パネルから半透明な巨大な腕が生えてきた。そのまま壁辺りまで伸びるとデコピンを実行した。
どごんっ!
デコピンとは思えない振動と衝撃が部屋全体を覆った。
見るとデコピンされた壁はひび割れた上に凹んでいる。
「ちょっ!」
中々に強烈なデコピンであった。
忘れないように気を付けようとハジメは心に誓った。
「傷を直す回復薬とHP回復薬のレシピが書かれた本を貸して下さい」
『貸出には資格が必要です』
「薬師の資格があります」
司書パネルから再び手が生えて伸びてきた。先程のデコピンを見た後では身構えてしまう。
しかし、デコピンでは無く人差し指と中指だけを突き出して、ハジメのおでこにそっと触れただけであった。
『資格を確認出来ました……』
どうやら直接触れるだけで、相手のステータスを確認できるようだ。
これは訓練すればひょっとしたら自分でも出来るのではないかとハジメは考えた。
『チックタックチックタックぼぉーん本』
司書パネルがいつものオマジナイを唱えると薄い本が二冊出現していた。
ハジメは早速手に持って読んでみる。
『作り置き回復薬入門』『うっかりさんの傷痍回復薬』
どちらも望んでいた本であった。
「図書館ではコピー……写本みたいなサービスは無いのですか?」
『ご自分で写し取るしか方法はありません』
「写真を取りたいのですが……」
『当館では時間が経過しないので写真撮影は出来ません』
「へぇ-…………え?」
時間が経過しないという考えが理解出来なかった。
言葉にしろ思考にしろ時間経過とは無縁では無いのだ。
「えーと、時間が経過しないと動作とか出来ないと思うのですが……」
『その辺はダンジョンのシステムが上手く機能しているのです』
「……」
『中の本を守る為に一定の物以外は時間停止させているのです』
「そうですか……」
生き物に時間停止が効かないと解釈した。本の劣化を防ぐためであろう。
まあ、それ以上は考えても分からないので本を読むことにした。
「時間停止って事はマジックバッグみたいのが作れるという事かな?」
異世界ラノベ定番アイテムのマジックバッグだ。是非とも調達したい。
ハジメは図書館の仕組みが知りたくなった。




