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Wine・Red  作者: 雪白鴉
六章
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78、恋の実

遅くなりました!めちゃめちゃ不定期更新ですみません・・・!!

 しきりに雨が降る十月十七日、本日二十七歳になる白井夏希は気になる同僚の家に、彼のお隣さんの女子大生といる。このラッキーかつとんでもない状況に、白井は動揺をあらわにするしか無かった。


「美味しそうなガトーショコラですね」

「不器用なりに頑張ったの!」


 水瀬と御厨は台所に立ち、何やら慌ただしく動いている。それもこれも全部白井のためである。

 誕生日なのにスイーツも何もないのは寂しいと、御厨が手作りのガトーショコラを持ってきてくれたのである。


 今日、初めて会ったのに服まで貸してくれて、白井はお礼の言葉だけでは足りないような気がした。


「あ、でもちょっと甘すぎちゃって・・・」

「そうなんですね・・・。では、少しアレンジを加えても?」

「どうぞどうぞ〜」


 このまま座っていて良いのだろうかとモヤモヤする白井。ゆっくりとソファから立ちあがろうとすると、御厨に肩を押さえられ、座らされた。


「座ってて」

「は、はい・・・」


 真剣な顔つきの御厨に逆らえず、白井はまたちょこんとソファに座って待つことになった。


「御厨さん、確か冷蔵庫にマスカルポーネと生クリームの素があったと思います」

「お、あったあった・・・けどなんであるの・・・」

「そんなことを気にする前に私の指示通りにしてください。マスカルポーネクリームを作ります」

「御意!!」


 棚からグラニュー糖を取り出した御厨は水瀬の指示通り、マスカルポーネにグラニュー糖を混ぜ、泡立てた生クリームに混ぜた。

 その間、水瀬はガトーショコラをレンジに十五秒ほどかけ、取り出したガトーショコラに適量のラム酒をかけた。


「お酒!?」

「こうすると甘いガトーショコラが一気に大人のガトーショコラになります。バーで出るガトーショコラは大抵これです。本当は酒をかけてから一時間ほど染み込ませるのが基本ですが時間がないので温めてみました」

「さ、さすがバイトのバーテンダー・・・」


 ガトーショコラにラム酒を染み込ませている間、水瀬は紅茶の茶葉とオレンジジュース、レモンを取り出した。


「すみません、お二人とも紅茶と柑橘類、シナモンは大丈夫でしょうか」


 白井にも聞こえるように水瀬が言う。白井はこくりと頷き、御厨は大きな声で「大丈夫!」と答えた。


「今度は何するの?」

「ノンアルカクテルです。現在、珈琲を切らしておりまして。即席ですがスパイスシトラスティーを作ります」

「何それぇ」


 三つグラスを出した水瀬は慣れた手つきでグラスに氷を入れ、濃いめに作った紅茶とオレンジジュースを入れた。そして、申し訳程度に三日月型に切ったレモンをグラスの淵に引っ掛けた。


「さ、ガトーショコラも良い頃合いでしょう」


 ガトーショコラが載る程度のおしゃれな皿にラム酒が染み込んだガトーショコラとマスカルポーネクリームとどこからか出てきた葡萄を添え、カクテルと共にテーブルに並べた。


「おぉ〜すっごーい!高級レストランのデザートみたい!!」


 本当にその通りである。美しい紅茶とオレンジの色に染まるグラスにガトーショコラからほんのりと香るラム酒。そして、その盛り付けの綺麗さ。流石としか言いようがない。


「美味しそう・・・」


 ポツリと呟く白井の口からは今にもよだれが垂れそうである。らんらんと輝く白井の目を見た水瀬は愛おしそうに微笑んだ。ここまでやった甲斐があったと思いでもしたのだろう。


「じゃあ、お姉さんのささやかなる誕生日パーティーということで!」


 元気の良い御厨の声に合わせて、三人は乾杯した。


「お姉さん、ハッピーバースデイ!!」

「おめでとうございます、白井さん」


 家族でもない人に、おめでとうと言ってもらえてここまで嬉しかったことは今までにあっただろうか。最悪の誕生日なる予定だったこの日が、ページをめくってみればこんなに幸せな空間が広がっていたとは想像すらできなかっただろう。大して大きなパーティーでもないのに白井はこのささやかが一番の大きなパーティーに思え、ポロリと涙が頬を伝った。


「お姉さん!?」

「すみません、何かご不満な点でも・・・!」


 慌てる二人がぼやけた視界に映る。白井は大きく首を横に振った。


「いえ、なんだか今日は嫌な日になる気がしていたので。それが最後の最後でこんなどんでん返しがあるなんて・・・」


 涙を拭った白井はおそらく白井の最高峰である笑顔を見せた。


「ありがとうございます」


 その笑顔に水瀬は目を見開いた。慌てた御厨が白井の涙を持っていたハンカチで拭いているが、水瀬には白井しか視界に入らなかった。


(なるほど・・・これも恋煩いの一部なんですね・・・)


 ぎゅっと胸の前で手を握りしめる。

 トクトクといつもより早い鼓動が耳の奥から聞こえてくるようで、水瀬はきゅっとその感情を胸の奥にしまい込んだ。


(あぁ・・・好きです、白井さん・・・)


 

 

 最近、水瀬のキャラ崩壊後起きているような・・・。いや、これもまた水瀬。白井への想いが爆発しませんように。そして、琴袮ちゃん、すごく良い子ですね。

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