アウレイリアの生還
※戦闘シーンがございます。
「…アウレイリア…さま…」
変わり果てたアウレイリアの姿をミカエル達は茫然と見つめる。
「…蛇ですの?」
「でも、体は人間よ」
「酷く禍々しいな…。見ているだけで足が竦む」
「…アウレイリア様をこんな風にするなんて、あの王子、やっぱ狂ってやがる」
一方でラルフレッド王子は化け物となったアウレイリアを見て、恍惚とした表情を浮かべた。
「ああ、美しい。美しいよアウレイリア。さぁ、そのまま憎しみを開放するんだ…」
ハンクレイン王子は王子をこれ以上しゃべらせないように魔法で強制的に気絶させた。しかし、間に合わずは発せられた言葉に反応し、化け物になったアウレイリアは蛇の髪をミカエルに向かって放った。ミカエルは咄嗟に蛇の頭を切り落とす。しかし、間髪入れず別の蛇の髪が襲ってきた。襲われかけたミカエルを援護するようにハンクレインは蛇の頭を切り落とした。だが、切り落としたはずの蛇の頭はすぐに再生する。
「く、こりゃキリがねぇ…どうします?ハンクレイン王子」
次から次へとやってくる蛇の頭を切り落としながら、リカルドはハンクレイン王子に尋ねた。ハンクレイン王子は蛇の相手をしながら言った。
「恐らく、本体を浄化しないと無理だ。メイシャン、アンドリアス、リカルドは私と共に蛇の頭を一斉に首を切り落とし、ミカエルが本体へとたどり着くための道を作ってくれ」
「おっし!任せてください!」
「道はワタシ達で切り開くわ」
「失敗は許さないわよ、ミカエル」
3人はミカエルに代わり蛇の相手を始める。ミカエルは蛇からいったん離れるとハンクレイン王子に視線を向けた。
「ミカエル、お前は本体にたどり着いたら心臓を貫け。そして、心臓が止まる前に聖水を飲ませろ」
「はい!」
力強く頷いたミカエルは懐から短剣を取り出し構える。そして、一気に駆け出した。それを見とどけた4人は一斉に蛇の首に刃を向けた。
「「「「いっけぇ!」」」」
蛇の首が一斉に地面に落ちる。ミカエルは落ちてくる蛇の頭をよけながら身体本体に向かって勢いよく飛び込んだ。
「…アウレイリア様…愛しています」
そして、一気に本体の心臓を貫いた。
ギャァァアアア
女は絶叫をあげ崩れ落ちる。ミカエルはしっかりとその体を抱きとめると、懐から透明な液体の入った小瓶を取り出した。そして、その瓶の中身を一気に口に含む。そのままアウレイリアに口づけると無理矢理それを飲ませた。すると、アウレイリアの身体が光に包まれ始める。次第に黒い魔力が宙へと舞い始め、空へと消えていった。
その不思議な光景を平野にいた全員が緊張した面持ちで見守った。メルベルトシュタインの兵との戦いを終えた兵士たちも体力を使い果たし地面に座り込みながら、その光景を見上げている。
ハンクレイン王子達4人はアウレイリアを抱くミカエルの傍に駆け寄ると不安そうにアウレイリアの顔を覗き込んだ。先ほどまでの黒い刺青は消え去り、白百合のような白い肌に戻っている。胸の傷もしっかりとふさがり、しっかりと息をしていた。
ふと、アウレイリアの瞼がピクリと動く。それに気づいたミカエルは咄嗟にアウレイリアに呼びかけた。
「アウレイリア様!」
震える手でしっかりとアウレイリアの手を握る。そうしないとアウレイリアが遠くに行きそうで怖かった。
「…ミ、カエル…」
「アウレイリア様!よかった…!」
かすれた声で、でもしっかりとミカエルの姿を瞳に写し彼の名を呼んだアウレイリアに、ミカエルは安堵の表情を浮かべる。そしてアウレイリアをぎゅっと抱きしめた。アウレイリアはそんな彼にありがとうと告げるとぎゅっと抱きしめ返す。少ししてミカエルは落ち着きを取り戻したところで抱きしめていた腕を緩めた。
「アウレイリア様…」
何かをこらえるような表情でアウレイリアに近づいたリカルドは、アウレイリアの名を呼ぶとガバリと頭を下げた。
「お守りできずすみませんでした。俺…」
「リカルド…いいのよ。貴方のせいじゃない。もう自分を責めないで。それよりも私は貴方にもお礼を言いたいわ。助けに来てくれてありがとう、リカルド」
「アウレイリア様っ!」
リカルドは腕で顔を覆い号泣した。アウレイリアはリカルドの肩に手を添えると慰めるようにぽんぽんと優しく叩いた。
しばらくして、アウレイリアはミカエルの肩を借りながら立ち上がった。そして、自分を助けてくれたであろうハンクレイン王子たちを始めとする平野にいる人たちに向かって頭を下げる。
「皆さん、助けていただきありがとうございました。皆さんのおかげでこの国を傷つけずに済みました。大切な人たちを殺さずにすみました。私、今こうして皆さんの前に再び立てていることがとても嬉しいです。本当にありがとうございます…!」
アウレイリアの言葉にしんとしていた平野にどわっと歓喜の声があがる。
「困ったときはお互いさまだ。俺たちはお前に助けられたからな。お前を助けるのはあたりまえだろう?」
「ほんと、水臭いですわ。もっと早くから頼ってくれてよかったんですわよ」
「ま、アウレイリアちゃんが無事で本当によかったわ。これで、また美味しいものを一緒に食べに行けるわね」
「皆さん…」
にっと笑って気にするなというハンクレイン王子。ちょっと照れくさそうに扇を手でぺしぺししながら答えるメイシャン王女。よかったわと安堵を浮かべるアンドリアス王子。表現が違えども伝わってくる彼らの優しさにアウレイリアはじんと胸を打たれた。
「「「「アウレイリア様、万歳!アウレイリア様、万歳!」」」」
兵士たちは両手を天へ伸ばし、声をそろえてアウレイリアの生還を祝った。涙がこぼれそうになったアウレイリアは顔を上げ空を見上げる。灰色に染まっていた空が、いつの間にか青く清々しいものへと変わっていた。




